アナシス人事労務誌上相談「相対評価は香港・中国では一般的ですか?」

2024/05/01

Vol.76

240216 YK問い:弊社では評価は相対評価としています。昇給原資に限りが有るために、評価結果を並べて分布にそって総合評価とするしか方法はないと思っています。これは一般的ですか?

黒崎:相対評価か絶対評価か、というのはずっと議論されてきているもので、正解はありません。絶対評価でも昇給額を相対配分すれば予算を上回ることはありません。しかし比較的多くの企業は絶対評価で一次評価を実施後に、その結果を相対分布させて総合評価を決めているようですので、これを相対評価と呼ぶならば一般的と言っても良いのではと思います。もちろん絶対評価の絶対区分をしていく企業もあります。
アナシスでは一度絶対評価した後の区分の方法で「絶対区分」と「相対区分」と分けて考えています。下表にてそのメリットデメリットを見てください。(下記表参照)スクリーンショット (2540)

「相対評価」といわれているものの多くはこの絶対評価後のランキング、相対区分によるものです。先述の通り、正解はありません。人事制度は組織の規模・発展段階や個々の状況によっても違う様々な組織課題を解決するためにあります。その課題に合わせて評価の方法を決めていくものです。

さて、この相対区分を行う時の分布は「正規分布」を用いるとされていることが多いようですが、それも正しいとは言えません。正規分布とは最も多い値と平均値と中央値が一致する確率分布の一種です。平均を中心として左右対称に分布されるものです。

例えば総合5段階評価ならば、「S評価:5%・A:15%・B:60%・C:15%・D:5%」などの区分がよく有るケースです。ところが実際には厳しく評価するとモチベーションも下がるだろうと、CやDはもっと少ない数値で設定されることも多いのです。それを正規分布とはもう言えませんが。実態としては加点評価的に上位の比率や7段階に増やすなど評価区分を増やすことになるでしょう。

人は上から2:6:2に分類される、と良く言われます。これも本当に正しいのかどうか。評価結果にランキングをつけて相対区分をとるならば、よくよく考えて分布を検討すべきです。それでも「メリハリ」をつける意図で今後も相対区分は使われていくでしょう。

また後で相対化されると分かると一次評価には「寛大化傾向」が表れ、評価は甘くなりがちです。「私は良しとつけたのだけどね」などという逃げのフィードバックになりかねません。評価結果が賃金や賞与に影響するとなると、どうしても評価者は部下の人気や機嫌をとりたくなるものなのでしょう。評価は処遇の決定だけでなく、人材育成という目的もあります。せっかくの絶対評価も、基準と実態がずれていれば育成には役立ちません。

そこである企業は一次の絶対評価時にも、最終の分布イメージで点数をつけさせています。それを絶対評価とはもう言わないとは思うのですが、評価結果フィードバック時にうろたえないために日常からよく観察・指導していくことになるため、特に行動・コンピテンシー評価では運用できていることもあるようです。

相対区分は少人数組織では適応出来ず、そこでも工夫が必要になります。完全なる評価制度はないという現実がありますが、評価で人が成長し、業績が上がる理想を追いかけることを諦めることはできないでしょう。評価分布規制をしている組織は、再度目的に戻って運用を考えてみることをお勧めします。

<黒崎幸良 Anaxis Ltd. グループCEO>
86年より一貫して人事系業務に就き、92年より中国ビジネス、02年香港で独立。香港華南のベテランコンサルタントが集結して2016年にAnaxis Ltd.を創業、香港・深セン・広州・上海に拠点を持つ人事労務コンサル会社を経営。各種研修もオーダーメイドで実施中。


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