アナシス人事労務誌上相談 Vol.62「中国・香港はどんな『ニューノーマル』に なっていくでしょうか?」
問い:激変した中国のコロナ対応。香港とも行き来が通常に戻りますが、中国の「ニューノーマル」ってなんでしょう。何を考えればいいですか?
黒崎:「ニューノーマル」という言葉は実は古く、2008年の金融危機後に既に使われています。中国でも2014年に「新常態」という言葉が政府で使われましたが、昨今はいたるところで「コロナ後の新常態」という意味で見るようになりました。さて2月6日からは香港・深セン間では羅湖・皇崗を含む全ての入境ルートが再開、人数枠も撤廃されました。香港・華南でのビジネスをする人にとっても、変な言葉ですが「新たな新常態」となるでしょう。前とおなじではないはず。人によって定義も違う「ニューノーマル」を考えてみたいと思います。
日本やアメリカでもテレワークから出社・対面への揺り戻しが随分とあったようです。その一方でテレワークの快適さを望む人もいて、離職防止の一つのキーとも言われています。この流れは中国・香港にも起こりうるものです。香港のある調査では68%が出社とテレワークのハイブリッドワークを希望しているとのこと。テレワークではより高いレベルのマネジメント力が求められ、成果評価が求められました。テレワークを求めるタイプは、より生産性を高めて成果を出せるか出せないかの二種類に分かれると思われます。そして組織貢献していない人材があぶり出されたのがこの数年だったのではないでしょうか。
そのテレワークもBCPを考えれば、手段として持ち、かつ高い生産性である必要があります。もしハイブリッドワークが常態化していくのであればなおさらです。緊急避難的に行われたテレワークの生産性は低いものでした。ここ数年やってきたことへのレビューが重要です。まだまだ上手にオンラインを活用出来ている人は多くはないように見えます。既に作った在宅勤務ルールも見直しが必要なケースもあるでしょう。
いろいろ変化している中で何が「新常態」かと決めつけることの方が今はリスクがありそうです。となると、走りながら考えるという中国・香港での得意分野で進めていくことになるでしょう。
そのポイントはレビューサイクルを短くすることです。少しやってみて良いものを見つけて小さなルールを作っていく。だめなら修正する。ソフトウエアでいうアジャイル開発の手法です。
お客様向け情報アウトプットの頻度をスタッフに要望することもポイントでしょう。私は毎日メールマガジンを書いていますが、その頻度・量が沢山の人との接点となり、アウトプットするからこそ最新情報も入ってくるという好循環を経験しています。最新情報のアウトプットの多い営業は、この時期価値を発揮しそうです。
そして久しぶりの対面に戸惑う人々もいるので支援が必要です。この時期の新入社員達などは、対面のビジネス経験が不足しています。ビジネスマナーからやり直すところもあるでしょう。会えたは良いが、その後のフォローの仕方を知らないなども。チャットリテラシーに世代間でギャップがあるなど、より良い成果を出すためにはチーム全体でのスキルの見直しも必要です。
新常態ではより成熟したビジネスパーソンが求められるはずです。その成熟さを支えるいくつかのスキルがあります。まずはやはりコミュニケーションスキル。対面とオンラインを的確に使い分け、先述したようなアウトプットの頻度をキープできること。お客様の期待を把握するセンスとヒアリングスキルなどです。さらにテレワークにおけるスキルも必須です。TEAMSには慣れているけれどZOOMだと不慣れであるなどでは、ビジネスチャンスを失いかねません。本質的なところではない部分での失点は無意味です。
スケジューリングのスキルでも、移動手段などを含めたアポイント設定のうまい下手などの差が見られます。情報収集力や先を読む力の差でもあります。またシャドーITなどのセキュリティ問題もそろそろ手をつけないといけない企業は多いでしょう。接待の問題を含め、コンプライアンス問題も再浮上してくると思われます。
日常の中で生産性を向上させる工夫を求めること。さらに変化する可能性のある「新常態」には、本質的な問題解決力が問われると思われます。
<黒崎幸良 Anaxis Ltd. グループCEO>
86年より一貫して人事系業務に就き、92年より中国ビジネス、02年香港で独立。香港華南のベテランコンサルタントが集結して16年にAnaxis Ltd.を創業、香港・深セン・広州・上海に拠点を持つ人事労務コンサル会社を経営。
●商工会で配布されている「雇用条例ガイドブック」の 講座を毎月無料で開催しております。
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