アナシス人事労務誌上相談 Vol.52
人事労務のアナシスによる誌上相談会
「withコロナで見直すべき人事制度は何がありますか?」
問い:新規赴任してきました。ここ数年で環境変化は激しいと思いますが、人事制度で見直した方がいいものはありますか?
黒崎:この2年、当地もいろいろありました。この先たとえコロナが落ち着いても、以前と全く同じ組織運営になることはないものと考えます。新しい環境への適応や働き方が求められる中で、人事諸制度を見直しておく必要性を確かに感じます。香港・華南で昨今我々にご相談が多かった事をもとに、再検討しておきたいテーマを見ていきたいと思います。まず全体としては下記の表のように、様々な項目があります。
等級制度に関してはここ2年ぐらい「Job型雇用」が叫ばれながら、未だ半数以上が「職能資格制度」を運営している日本に対し、香港・華南では職務給の考え方がベースであり、日系企業でも役割等級・職務等級を導入している企業も多くなっていると思われます。何を等級の基礎とするかという考え方が、何に対して賃金を支給するのか、どんな賃金データと比較するのかというもととなり、賃金体系・賃金格差を説明するための論理となるので、しっかりとした議論と運用の知恵が必要です。
賃金制度は相場との比較なども問題となりますが、コロナ対応で始まった在宅勤務時の手当や通勤交通費なども見直す企業があります。在宅勤務が出来ない職務の人との公平性の担保なども企業が直面している問題です。
賞与に関しては、この3月に史上最高益を上げた香港の日系企業が多数あるとお聞きしております。その利益への貢献が誰によるものなのかが測りづらく、またそうした利益の分配に関して高い期待を持つ従業員に対してどういうロジックで賞与を支給するのかなどが検討されました。
評価制度においてはテレワーク下での成果目標の設定と、対面していない中での行動評価などで苦労された企業も少なくなかったようです。働き方が随分変わってきているのであれば、改めて評価項目を設定し直す必要があるでしょう。4月にスタートしたばかりですが、下半期には間に合うように企画することも考えられます。
昇格に関しては「人」の現地化がよくテーマにあがります。駐在員を減らし、現地人材を登用する。海外現地法人の長年の課題が、コロナのお陰と言っても過言ではない形で進んでいる企業もあります。その為に誰に任せるかを決めるアセスメント設計や人材育成、またはポスト不足回避のための複線型人事制度などもテーマです。
各種規則系に関しては労働時間が問題になりました。時差出勤・フレックスタイムなどは香港では一度は議論されているはずですが、効果的な運用ルール策定が必要です。在宅勤務制度も通り一遍の制度から、生産性が下がらないような制度設計が必要になるでしょう。テレワークを進めると、会社が許可していないモバイルの利用など「シャドーIT」の問題など情報セキュリティルールの見直しも必要となります。
エンゲージメントとは「人と組織が一体となり、共に成長と変革に貢献し合う関係性」と定義しておきますが、働きやすさや「心理的安全性」といった昨今のキーワードへの対応が求められていくでしょう。
研修の大半はオンライン化した企業が多いでしょう。弊社のオンライン講座や研修もここ2年で4,000名を超えるご参加をいただいております。次はどう持続的に学習する環境を創造出来るか、どう日常の中でその成果を発揮させられるかがテーマです。人材育成の基本は成長する仕事のアサインメントであり、この部分はオンライン化もできず、マネジャーの力量が問われます。また高年齢層が増える日系企業も多く、定年・再雇用・サクセッサープランも昨今は多くご相談いただきます。
その他あげればキリがないほどのテーマがあります。新年度を迎えている企業におかれては、経済の先行きは相変わらず不透明ではありますが、成果を上げ続けるための「人と組織」の成長と変革のテーマを、是非一度見直してみてください。
●のべ4,000名を超えるご参加者を得たアナシスの各種ウェビナー講座。
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