タフな時代を生きるための新しい働き方

2022/08/17
2020年より世界で流行が広がったCovid-19(以下、コロナ)。
感染増に伴い公共施設・交通機関、会社内などでは密を嫌厭する意識が強くなり、従来の働き方を見直さざるを得なくなった。本特集では、コロナ禍において「ニューノーマル」を実現し、生産性や従業員満足度を向上させた企業の事例を紹介。また、各業界のプロが解説する「働き方改革」に関連した手引き、フリーランスやダブルワークで、自由なワークライフバランスを実現する人にも密着した。

 

メール演習とウェビナーの定期実施で
社員のセキュリティ意識を底上げ

IMG_1221イオントップバリュ香港株式会社
取締役 管理本部 本部長
文川 武洋氏

全世界で14カ国、2万店舗以上、ここ香港ではAEON STYLEと総合スーパー10店舗、Living PLAZA by AEON(生活雑貨)として46店舗など、香港人にとっても身近な存在のイオン株式会社(以下、イオン)。そして、顧客の声を活かしたイオンのブランド「トップバリュ」をはじめ、品質の良い日本商品をお値打ち価格で提供し、香港人の食とライフスタイルを支えてきた企業だ。そんな同社のバックオフィス、管理本部長・文川武洋(あやかわ たけひろ)氏(以下、文川氏)に話を伺った。

 

在宅勤務やフレキシブル出勤が功を奏した
 非接触型体温計とRAT検査キット、10台以上の空気清浄機が完備された社内では43名の社員が働いている。2020年にコロナの感染者が香港でも報告され始めると、同社では徐々に在宅勤務への比重を高め、さらに深刻な拡大で22年から学校がオンライン授業に切り替わると、社内の約9割以上の従業員は在宅を余儀なくされた。そこで大活躍したのが各社員に支給されたラップトップPCだ。実はこの在宅勤務、同社ではこんなメリットがあったそうだ。「いつも時計の針が定時になると急いで帰宅する社員が、在宅勤務後はライフスタイルに合わせて働くことができ、便利になったと喜んでおりました」と文川氏は言う。続けて「在宅以前は3人で行っていたオフィス業務を、在宅勤務後は1人に集約することで、当該者の責任感も増し、業務効率も上がったケースもありました」。

規制緩和後もフレキシブルな勤務体制を継続し、コアタイムを除く出退勤時間を各社員自らの意思で決定させることで、遅刻・早退の概念が消え、コロナ禍の逆境からより良い職場環境の確立につながった。

 

遠隔ツールを用いた商品調達や生産管理
 もう一点、同社ならではの改革として「リモート買付」と「リモート品質・生産管理」が挙げられる。香港入境後に隔離がある現在でも、Google Glassやzoomを駆使し、中国でのリモート買付、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュなどASEAN諸国にある工場と遠隔でトップバリュ商品の品質・生産管理を行っている。「実際の商品を触れるわけではないので情報に限りがありますが、そのような場合は現地認定機関による立ち合い及び検品業務をお願いすることもあります」と同氏。プライベートブランドのトップバリュ商品の品質は、このようにしてリモートにおいても入念に管理されている。

リモートQC(品質管理)の様子

リモートQC(品質管理)の様子


ITセキュリティはハードとソフトの両面から
 日本を代表するリテール企業のイオンが注力するのが、ITセキュリティ対策だ。日本本社が求めるセキュリティ基準は非常に高く、綿密に練られている。文川氏は香港でも日本基準を実践するため、自社にIT担当の専任以外にも複数のIT企業へアウトソーシングを行う。「IT企業にもそれぞれ強みがあるので、業務ごとに使い分ける”ハイブリッド業務”を行っています」と話す。例えば、ITセキュリティソリューションの導入やサーバーOSの定期的なアップグレード、2ヶ月ごとのパスワード変更と多要素認証の設定などハード面では隙がない。

「対策が万全だとしても、全世界でのコンピューターウイルスの開発は日進月歩なので、ハッキング等の攻撃はなくならない。だからこそ、最も大切なのは社員個々のセキュリティ意識の向上、ひいては全体の防衛意識の底上げといったソフト面が最も大切なのです」。

同社ではランダムにフィッシングメールを社員に送付する演習を実施したり、定期的にウェビナーを開催して実際のハッキング例や巧妙化する手口を共有するなどして防衛意識を高めている。

5年前より現役職に就く文川氏の中期ビジョンとして「イオングループのグローバルサプライチェーンのハブとしての香港」が掲げられており、そのかじ取り役という大きな使命を担う。イオンが多数出店する中国やASEAN諸国へのアクセスの利便性、多言語でのコミュニケーション能力を持つ人材、金融センターやフリーポートとしての希少価値などを有する香港。

「サプライチェーンの中核を成す品質管理業務を香港で一括管理することで海外における品質保証のハブとして、アジアシフトの加速、トップバリュ商品の販売拡大とブランド価値向上を図ります。ASEAN各国向け商品供給業務も香港に集約し、窓口の一本化による業務の集約・簡素化が進み、最適な調達スキームで海外事業会社に効率的、かつ低コストの商品供給を実現します。このように、香港の優位性を活かし、イオンのグローバルサプライチェーンという枠組の中、当社の新たな役割を果たしたい」と今後の展望を語る。文川氏の挑戦はこれからも続いていく。

P07 new work 848 v2Rm.7,19/F.,CDWBldg.,388CastlePeakRd.,TsuenWan
(852)3962-5602
www.topvalu.net

 


 

社内公募により
スタッフのモチベーションを奮起
コロナに負けず店舗出店へ

owndaysOWNDAYS株式会社
台湾香港
リージョナルディレクター
濵地 美紗氏

日本をはじめ、シンガポール、台湾、タイ、インドなど13ヶ国に450店舗を展開するメガネ製造・販売「OWNDAYS株式会社(以下、OWNDAYS)」。実は前経営陣が率いていた2008年に債務超過で倒産危機に追い込まれていたところを、現社長の田中修治氏が買収。メガネ業界での経験ゼロでありながら高品質、低価格の商品づくりに成功し、瀕死の状態から大幅な再生を図った話は有名で、著書は文字通り『破天荒フェニックスオンデーズ再生物語』として上梓され、テレビドラマ化されるほど注目を浴びた新進気鋭の経営者だ。

 

何でも相談できる社長とともに
そんなカリスマ性のある社長にも関わらず、「社長との距離が近く、風通しのいい会社ですね」と、台湾香港リージョナルディレクターの濵地 美紗氏(以下、濵地氏)は同社をこう語る。彼女自身2011年に入社後、20日というスピード昇格で神奈川県は川崎店の店長となった。聞くと、店長は社内選挙制となっており、立候補者のモチベーションを奮起させる意図がある。社風は自主性を重んじる成果主義そのもの。その後、社長から台湾エリア責任者へと白羽の矢が立ったのが2014年。アジア圏でさらなる実績と経験を積んだ後、満を持して2018年、香港への出店とともに現職に付いた。

店舗展開が一番の広告効果に
家賃の高さは香港市場においてどの企業も頭を抱える問題だが、同社最大のポリシーは「店舗数の拡大によって、一人でも多くの方にOWNDAYSを知ってもらうこと」。客にとってより良い店舗環境を追求していくことが、先述した高いコストをカバーしていく何よりの選択肢だという。店舗は多くの客がいつでも自由に出入りし、フレームを自由に試着でき20分でメガネを受け取れることを最大の売りにしている。しかし2020年以降、コロナ流行の波が押し寄せ、目からの感染を防ぐためのメガネ需要が去った後、店舗は閑散とした。店舗内にディスプレイされたメガネの試着を嫌がる客や、接客自体に消極的な姿勢を示すスタッフもいた。「商品の小まめな消毒は徹底していましたが、弊社はスタッフあってのビジネスなので、マスクや漢方スープを支給したりと従業員の体調管理を第一にしていました」と濵地氏。ORG_DSC08942 (1)ORG_DSC08952

 

自社ITチームが大活躍
このような状況を踏まえ、以前は店舗のiPadで顧客情報を入力してもらっていたのを、スマホのBOT機能を使いWhats Appから簡単にアクセスできるように改革。自社のエンジニアチームによるオンラインショップも急ピッチで開設し、店舗に行かずとも画面上で試着できるデジタル機能や、すでに購入歴のある顧客はオンラインで新たに商品を追加購入できるように刷新を図った。また、日本では経験豊富なスタッフが遠隔センターからリモートで視力測定を行う仕組みをほぼ全店舗に導入し、測定の際の接触を減らすことに成功している。日本本社スタッフも週2回の出社以外は、在宅勤務を自由に選択できるそうだ。

香港人スタッフのモチベーションを大切に
濵地氏自身が日本で新店オープンの際に目にしたもの、それは役員自らがビラ配りを行い集客している姿だったという。社長との距離が近いとは前述の通りだが、役員を役職で呼ばないフラットな雰囲気が自主性を育み各スタッフのモチベーションにも繋がっている。「香港でも新店の店長は選挙制です。立候補者自らがプレゼンテーションを行い、自分ならどんなプロモーションや店づくりをしていきたいかを表現する場になっています。これによって常に多様なアイディアが生まれ、そういったアイディアを会社としてどう受け入れ、生かしていくのかといった新陳代謝も活性化します。私がそうだったように入社したての若いスタッフにもチャンスがたくさん用意されていますよ」。

リモート視力測定ブース

グローバルブランドへの快進撃は続く
続けて、「ガラスケースにメガネが並べられているトラディショナルなお店では、メガネ=高級品というイメージがあり、メガネを買うことがストレスに感じてしまうお客様の声も届きました。弊社ではフレーム価格に追加料金なしで作れる薄型非球面レンズを採用し、薄い仕上がりの軽量メガネを実現しています。メガネもファッションアイテムのひとつとして気軽に楽しんでいただきたい」と話す。7月にはLangham Place、8月にはK11 Art Mallにて続々と新店をオープンする予定だ。また今年6月にはインド最大手アイウェアチェーン「Lenskart(レンズカート)」と経営統合を行うと発表。OWNDAYSが誇る日本の信頼性の高いサービスと、Lenskartの先進的なIT技術が融合し、世界で最も革新的なアイウェア企業として邁進していく。オシャレでコスパよし、品質よしのOWANDAYSのメガネが、香港のみならず世界を席巻する未来もそう遠くないはず。

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Langham Place店
Shop 16, Level 5, Langham Place, 8 Argyle St., Mong Kok
K11 Art Mall店
Shop 102, Level 1, K11 Art Mall, 18 Hanoi Rd., TST
Hysan Place店
Shop401, Hysan Place, 500 Hennessy Rd., CWB
ほか全15店
www.owndays.com

 


 

ペーパーレス化に成功
逆境を機に体制の見直しへ

main星崎香港有限公司
董事総経理
高木 克明氏

時刻は朝8時半、Zoom画面を通して、社員の元気な「Good Morning!」の声が響く。Covid-19(以下コロナ)流行の第5波が猛威を振るう中、業務用厨房設備の国内外トップシェアを誇る星崎香港有限公司(以下ホシザキ香港)内の様子だ。董事総経理である高木 克明氏(以下、高木氏)は、当時を振り返りこう語る。

 

緊急事態でもリズムを大切に
「在宅勤務とオフィス勤務全員参加のオンライン朝礼は欠かさず行いました。そうすることでメリハリをつけて業務に当たれますし、細かな連絡もシェアできるいい機会になりました」。なるほど、在宅勤務の場合、実際に社員の動向は把握しづらい部分がある。14名いる社員も毎日オンラインで顔を合わせることで、適度な緊張感と社員同士のつながりを感じられたという。

 

ペーパーレスによりコスト、時間、手間の削減
香港では外国からの入国時に3週間の隔離が必要だった当時、日本へ一時帰国すると1ヶ月以上はオフィスを留守にしなければならない状況下で、高木氏が直面したのは契約書や申請書などの書類へのサイン。「もともと紙ベースでの承認プロセスに依存している部分がありました。どうすれば秩序を守りながら、アナログな部分を効率化できるかといった課題を、うやむやにする選択肢はなかったので、コロナを機に電子署名化へ移行することにしました。」オフィスにいなくともPDFの拡張機能を使い、タブレットやスマートフォンでサインを行えるようになったことで、当然のようにペーパーレスに成功。インクや紙代、複合機を起動させるコストを削減した。契約書を持って取引先まで出向いたり、郵送する必要もなくなった。

また、数十種類ある内部書類をすべて電子化することで、ITを用いた承認過程システムが充実、誰がいつ提出をし、承認されたのかが一目でわかり管理しやすくなった。「結局、紙ベースだとトレースしにくいですし、誰がいつサインしたかが露見しにくいんです。電子化することで、改ざん防止につながり、社員からも便利になったとの声も聞こえてきました」と高木氏。

2022年7月現在でも対顧客とのビデオ会議(VC)を続けている同社。店舗内の図面をパソコン画面共有を行いながら打ち合わせをする点では、このVCの方が見やすく、移動の時間・手間が省けるといったメリットもあり、コロナ禍の施策によって生まれた利点でもある。

 

試行錯誤の末のシフトワーク
同社が当時最優先したのは、万が一社内の感染者が増えた際に、オペレーションが止まらないようにリスクマネージメントすることだ。社員を2つのチームに分け、午前・午後、週毎に時差出勤を命じることで接触機会を減少させるなど試行錯誤した。結果、毎日オフィスに出社できた方が作業効率がいいとの声が多数挙がり、時間制で分けるシフトワークを確立。フレキシブルに対応できたのは、社員にラップトップやタブレットを支給しているITインフラ面も大いに影響したかもしれない。社員は出勤せずともクラウド経由でサーバーへアクセスし、通常通り業務をこなすことができた。

高木氏は「飲食店等の店舗が主な取引先になりますが、そういったお客様も接触を避ける傾向にありました。そのため訪問時間や人数の調整をし対策を打ちました。」と当時の難しさや工夫点を教えてくれた。

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時代はどう変わるか
業務用厨房機器トップシェア企業として香港の飲食業に詳しい高木氏は近年の動向を次のように分析する。「2020年から流行を始めたコロナにより、21年にはテイクアウト需要が伸び、また、旅行に行けない分、域内の高級日本料理店でのハイエンドな消費にシフトしていきました。22年には第5波の流れで店舗オープン計画が延期になるケースも目立ち、23年まで持ち越しの案件が多く見られます。今後規制が緩和され、国境が開放されれば人々の消費欲は旅行へ向いていくのは避けれらませんが、一方でインバウンド需要も増えるでしょう。飲食業界はそこからが勝負ですね」

人工が密集し、面積のせまいここ香港という成熟した市場では、今後新たなパイを獲得するよりは、既存のお客様に対しサービスを充実させることで、ビジネスを拡大していくことが同社の今後の課題だ。P09 new work 848 v3

 

基礎レベル+αの人材育成へ
着任3年目になる高木氏は自身の経営スタイルをこう話す。「社員一人ひとりがハートに火をつけて働いてもらいたい」、そうあるためには社員との心の通った対話が欠かせない。「香港人は生産性、思想、言語、その他専門の分野において総じてレベルが高い。さらにそこへ建設的な価値を付与できる人材を育成し、彼らを鼓舞して各々が能動的に働ける職場を目指しています」と熱く語ってくれた。

逆境を跳ね返して業務効率化に成功した同社。今後の動向から目が離せない。

P09 new work 848 v3Unit G, 17/F., World Tech Ctr., 95 How Ming St., Kwun Tong
(852)2866-2108
www.hoshizaki.com.hk/jp

 


 

 

経営者必見!
多様化する働き方、人事労務管理はどうすべきか

一口に「多様化」と言っても業種によりその変化の大小は様々。しかし人材における悩みのあれこれはどの業種でも共通したものがあるだろう。そこで人事労務管理のプロフェッショナル集団、AnaxisLtd.のグループCEO/アナシス香港董事長・黒崎幸良氏(以下、黒崎氏)に気になる注意点を伺ってみた。

 

 コロナ禍で在宅勤務やフレックスタイムがすっかり定着しましたが、働き方の多様化に伴い、気を付けるべき基本的なポイントを教えてください。
黒崎氏:大事なことは、経営者も従業員も環境の変化へ適応出来るマインドセットとスキルを持っておくことです。企業の経営に対しては働き方の多様化への対応が求められてはいますが、それはマネジメントを複雑化させることにもつながります。従業員側も自分のある種「わがまま」を通せるだけの存在価値、エンプロイヤビリティを強化しておく必要性があります。環境がどんなに変わっても柔軟に対応出来る力を持てるようにしてください。たとえば在宅勤務に関して言うと、コロナでの緊急事態対応としてのそれの生産性は低いものでした。テレワークだろうと出勤しようと、より成果を上げられる人を経営者は求めます。この2年では環境変化に対して工夫出来る人とそうでない人の差がでました。在宅勤務で日常の姿が見えない中、うまく報連相できている人は評価を受け、そうでない人は明らかな成果を出していないかぎり低い評価だったと思います。コミュニケーションの絶対量も質も不足する中、対応できる人が成果を出しています。特にマネジャー側は、オンラインにおける言語力・ファシリテーション能力・評価力、人の尊重・ケアなども一層重要になります。また環境変化にはストレスがつきものですが、その対応も学んでおいて損はありません。従業員側は経営側が求める事は何か、その目的をしっかり捉えて、その期待値を超える努力がより必要になっていくでしょう。経営側は対応が遅れて従業員を失わないように、人事労務に関しての深い検討が必要です。

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先述の質問と関連して、全体的に時間労働から成果・案件ベースに移行しつつあるよう感じますが、残業管理や評価査定のポイントを教えてください。
黒崎氏:小売業や工場・倉庫等現場にいることが重要な職種では、「時間」をベースにしつつも、生産性や質の評価となるのが中心でしょう。一方、ホワイトカラーでは時間管理は合わなくなってきています。残業代削減の観点からも働き方改革の観点からも、残業は減らしていくことになるでしょう。そこで成果型の評価という考え方が用いられます。「成果」というと「結果主義」と間違えられやすいのですが、数字による結果だけを意味するものではありません。経営として従業員に求める成果は、結果とそこに至るさまざまな行動・態度・姿勢を総合したものだと考えられます。たとえ結果がまだ出ていないとしても、経営が求める行動をしっかりとやっている従業員ならば、評価の対象になるのではないでしょうか。それゆえその求める行動を言語化し、行動を可視化することが評価のポイントとなります。

MBOを導入していない企業も多いのが実情でしょう。MBOはManagementbyObjectivesandSelf-controlの頭文字を取ったもので「目標管理」と訳されがちですが、「目標と自己統制による管理」のことです。良い目標は従業員が自分で動いていきます。このMBOを結果とし、その結果を出すための行動をプロセス評価項目として設定することで、評価していくことになります。

 

台風接近時やシグナル8が濃厚な時などに急遽在宅勤務への切り替えを命じる事は可能でしょうか。また、その際に注意したい点についても教えてください。
黒崎氏:台風は事前にある程度予測が可能なので「急遽」の指令とはならないでしょう。経営側としては予報が出た段階で、在宅勤務かどうかを先読みして指示を出してください。急に言ってもパソコンを持ち帰っていないなど、在宅勤務できない状態となってしまうこともあり得ます。このように事前のアナウンスメントを明確にしておくことがポイントです。その際、どんなシグナルが発令した時に自宅待機になるのか、あるいは在宅勤務なのか休みなのか。また、警報解除時の出退勤はどうなるのか、交通機関の混雑を考慮するのか。在宅勤務が可能なのであれば、そんな時にわざわざ出社させるのは生産性が低いはずです。

優先されるのはまず労働者の安全の確保。そして、お客様への出来る範囲での継続的なサービス。この後者の点で、過剰なサービスになっていないかを見直す機会となったのがコロナ対応だったと考えます。そもそも香港などでは「台風=休み」という考え方も多くあったように見受けられます。しかしながら最新のアナシスのホワイトカラーの調査では、悪天候時の在宅勤務を制度化した企業が6割近くあることが分かりました。大きな変化だと思います。事前にしっかりとルール化しておく必要があります。

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ここ数年の働き方の多様化で、従業員が会社に求める事項も変化してきているかと思います。現在の働き方のトレンドや定着率を高める為のアドバイスをお願いします。
黒崎氏:勤怠のフレキシブルな運用を、特に香港でのホワイトカラーでは求められてきているのはあるでしょう。世の中の流れはワークライフバランスの良さを求めています。従業員側がそう求めるので有れば、経営側もより高い成果を求めていないと、労務倒産してしまいます。それゆえ働き方改革に対応するには、成果を出すための戦略がまず必要だと思われます。その上で、リテンション策も充分に練らねばなりません。リテンションでは全体対策と従業員それぞれの要望への個別対策があります。全体対策としてまず考えなければならないのはやはり金銭的報酬です。転職理由の筆頭にあがってくるのは賃金です。納得のいく評価とその結果としての給与・賞与。そして休日休暇を含む福利厚生。それらへの対策としては市場と自社を分析し、十分な予算と制度を準備する必要があります。しかし給与だけが転職理由ではありません。コロナ禍での香港でのある転職調査では「将来性」という言葉がかなり見受けられました。先が見えにくい現代、特に香港では企業やその職種の将来性に関心が高まっていると思われます。事業そのものをどうしていくのか。ビジョンや戦略も非常に重要なのではないでしょうか。

 

ロックダウンも含め、やむを得ず一定期間、出勤を停止しなければならない場合、段階的にどういった対応をすべきでしょうか。
黒崎氏:華南ではロックダウンがまだ起こりうると思われますが、香港はあまり想定できないのではないでしょうか。それでも事実上出勤をさせにくい環境は過去もありました。さて、そういう時の準備という観点で書きます。まず事前準備で必要なのは、(1)在宅勤務ができる体制構築(2)緊急連絡網整備(3)それら全体のBCPの策定です。そして、万が一業務が遂行できなくなったときの雇用・給与の補償をどうするかを事前に考えておくこと。在宅勤務ができないときの給与を支給できるのかどうか。職務や地域によっても、企業の方針によっても違うでしょう。そこは事前に思考を通しておく必要があります。

また上海のロックダウン経験で言えば、緊急時の食料入手・配送ルートを備えておくことなどもあるかもしれません。弊社でも配給されて非常に喜んだ経験があります。ある程度の各種備蓄もあるでしょう。実際に指令が出るケースも、数日前の告知となるのではと思います。ですが、上海では私の宿泊ホテルがいきなり2日間ロックダウンしたこともありました。どこでいきなりロックダウンされてもいいように、仕事で使うものはいつでも携帯するなどのルールを決めておくことも、業務を止めない工夫となるでしょう。ロックダウン中は従業員のメンタルにも気を配りながら、業務を遂行することになります。通常よりも雑談などを多くするコミュニケーションが必要でしょう。そして解除後には、マネジャー達が職場の健康・安全への尽力を行動で示すと職場復帰しやすいと言われています。マネジャー達とBCPのミーティングをしておくことは必要ですね。

 

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  • のべ4,600名を超えるご参加者を得たアナシスの各種ウェビナー講座。
    雇用条例ガイドブック講座など、新規赴任者の方向けのものもございます。最新の福利厚生調査結果をもとにした講座も9月に開講。お問い合わせはアナシス香港の牧野までご連絡ください。(hkinfo@anaxis-asia.com)

会員制の人事労務コンサルティングファームです。
地場に根ざす、経験と実績のあるコンサルタントが対応いたします。
香港・深圳・広州・上海でトータルサポートしております。
詳しくはアナシス香港の牧野までご連絡ください。

AnaxisAnaxis Ltd.
Suite 8, 12/F., Tower 2, China Hong Kong City, 33 Canton Rd., TST
(852)2180-2005
hkinfo@anaxis-asia.com
www.anaxis-asia.com

 


 

 

ITのプロが解く
今こそ企業がとるべきセキュリティ対策とは

main 急遽広がったコロナウイスの大流行で、多くの企業は突如リモートワークの必要性に直面した。今年4月下旬から規制は一部緩和されリモートワークを継続している企業数は減ったが、改めてITセキュリティの脆弱性を見直し、対策を打っていかなければならない局面に差し掛かっている。今回は日系システムインテグレータ(SI)として、1998年の設立以来、香港や華南地区にてITサービスを提供しているエスパーカンパニーリミテッドの総経理・米田 泰氏にお話を伺った。

 

昨年から始まったコロナによる規制を受け、大多数の企業や組織がリモートワークを導入した。社員の感染リスクを減らし、ライフスタイルに合わせ自由に働けることで、生産性や自主性を上げる革新につながったことは多くの人が身をもって経験済みだ。しかし、一方で問題視されるのは自社のITセキュリティ対策が果たして万全かという点。

普及するBYODへの仕組みを整える
自宅でもオフィスと同様に生産性を保持するためにはIT環境が必須だが、今回のコロナ禍で従業員にPCやタブレットを貸与支給できたのは業種にもよるが一部の企業のみで、実際は従業員自身の端末を使うBYOD(Bring Your Own Device)のケースも多く見られた。普段使い慣れているプライベートの端末を業務においても使用することで、業務効率化やコスト削減という大きなメリットがある。米田氏はBYOD利用時の情報漏洩策として次のように語る。「社員と企業でリモートワーク時の細かなルールを設けることも重要ですが、デバイスに導入する仕組みをしっかりと構築することが最優先です。例えば、ソフトウェアによる遠隔操作システムの利用が挙げられます。いずれも多要素認証システムを併用することが必要となります」。

マルウェアへは検知と迅速な対応を
PCにウイルス対策ソフトをインストールすることはもはや常識となった昨今だが、それでも悪意あるプログラムからの不正アクセスは巧妙に手口を変え、ウイルス被害の数は後を絶たない。その中でも一度感染すると業務が全て止まってしまう恐れのある「ランサムウェア(マルウェアの一つ)」は増加の一途を辿る。コンピュータ内の多くのデータを暗号化し、身代金を要求してくるという同脅威に対して米田氏は「このランサムウェアへの感染をゼロにすることは難しく、取りうる対策としては感染してしまうことを前提として、迅速な対応をするためにEDR(Endpoint Detectionand Response)を導入すること」と話す。これは従業員が利用する端末で、悪意あるプログラムの実行を検知すると即座に通知されるもので、企業はすぐに対策を講じることができる。

巧妙化する手口には防衛意識もカギ
P11 new work 848 v2さらに氏は、PCのウイルス感染以外に近年増加しているビジネスメールセキュリティ侵害BEC(Business Email Compromise)を挙げる。「最近のお問合せの中で多いのはビジネスメールなりすましによる被害です。公共のWi-Fi環境下で悪意ある第三者にメールをタッピングされ、取引先とのメールを途中で乗っとられた結果、銀行口座変更のお知らせとして連絡があり、担当者はまったく気づかずに振り込んでしまうというパターンが多いですね」。これはフィッシング詐欺メールよりもタチが悪く、酷似するメールアドレスより攻撃されてしまうので、従業員各々の防衛意識を高める必要がある。このようなBEC対策としては、財務内部で振込先銀行情報のダブルチェックや、フリーメールアカウントを使用しないなどの対策が挙げられる。ほか前提として、公共のWi-Fiを使わないようにする、見覚えのないメールは開かない、個人デバイスのパスコードを多認証構造にしたり、定期的にパスワード変更を行うなど、徹底したセキュリティ意識が求められる。

日系SIならではのきめ細やかさ
最後に米田氏は「以上のような脅威から、企業資産を護るための管理手法として、パスワードの複雑化など細部まで見える化を図る社内のITマニュアルを確立し、規則に乗っ取って統制するIT統制(ITGC:Information Technology General Control)が基本となります。このようなIT統制を整備した上で、それぞれの脅威に対して適切な対策を講じていく必要があります」とまとめる。エスパーカンパニーでは、日々の業務で多忙を極めるトップに代わり、経営者目線に立って包括的なITソリューションを提供している。ネットワーク上のトラブル解決や定期的なセキュリティ点検など、遠隔ではなく社員を顧客先に出向させ、きめ細かいサービスを展開することが同社の強みと言えるだろう。DX化が進むこれからの時代、ITのプロの力を借りて企業のセキュリティ対策を万全に整えてもらいたい。

P11 new work 848 v2Esper Hong Kong Co., Ltd.
Unit 632, Star House, 3 Salisbury Rd., TST
(852)2370-2273
yoneda@esper.com.hk
www.esper.com.hk

 

 


 

 

アフターコロナの“タフな時代”を生き抜く
企業の賢い選択

24262578_lなぜ一部の企業の管理部門は改革が遅れているのか?それは紛れもなく紙文化が主流とされてきた背景にある。また、経理や会計業務は書類ベースが基本のため、変化を求めようとはしない傾向も後押ししている。しかしコロナ禍での出勤の難しさ、感染者増加で業務が止まってしまうリスクなど、改めて課題点が浮き彫りになった。

1999年より香港で現地法人に向けた会計税務・監査サービスをはじめ、進出支援・会社設立等のワンストップサービスを提供するNAC国際会計グループ(以下NAC)の金山尚永氏(以下、金山氏)はアフターコロナ時代の課題として次のように語る。「上記のような紙文化は少しづつ改善されてきました。書類の電子化を推進する企業様も増えてきているのは事実ですね。将来的にはDX化されたシステムが多く導入されていくでしょう」。

業務の偏りを防ぐ対策を
また金山氏はコロナのように予想外の状況下で企業はどんな準備をすべきなのかについて、「業務を担当者一人だけに依存させない仕組みづくりが大切です。そのためには、アウトソーシング導入の検討や社内制度およびルールを積極的に見直す必要があります」という。実際に、昨今の流動的な情勢や今後の市場動向を踏まえ、オフィス賃貸契約更新のタイミングで固定費削減のためのオフィス規模の縮小を考える企業が増えた。それに伴い、月次会計処理、給与計算、各種支払、人事労務管理など労力と人件費のかかる部門を、同社にアウトソーシングする会社も目立ったようだ。「コロナもきっかけの一つですが、移民など人材の流出で業務を停滞させずに継続させるためにアウトソーシングを選択される企業様も多くいらっしゃいます。弊社では「香港法人一括管理サポート」としてバックオフィス業務を支援する包括したサービスを提供しております。これにより企業様は利益を生み出す本業にリソースを集中させ、より効率的で生産性の高い事業運営を行うことができます」と氏は続ける。

アウトソーシングするメリットはほかにも
さらに、経理業務を第三者に委託することで、社内不正を防げるという意味合いもある。実際に香港の日系企業は10名以下の中小規模の事務所が大半で、責任者の業務領域がとても広いため、忙しい。また、総経理も3~5年で入れ替わることから、着任して間もない責任者は右も左も分からないところから社内外の状況を把握する必要もある。そのため経理書類にまで目を配れないケースも多い。第三者が介入することで、書類の管理や報告も統制できるメリットがある。在宅勤務が進み、業務のスリム化が進む中で反対に危惧せねばならないのはITのセキュリティ上の問題。外部からのアクセスが可能であるならば、不正アクセスにつながる危険性も否定できない。「企業の体質や状況に合わせリスクマネジメントなどの対策を練ることがポイントです」と教えてくれた。

外部委託することで生産性を高める
ここ数年で多くの日系企業が撤退したり、2名の駐在員を帰国させて1名しか新任を送らない縮小のケースや、香港人責任者に現場を任せ日本本社から遠隔管理などのケースが増えてきている。それだけ利益がひっ迫し、その中で経営の舵取りをしていかなければならない正念場の今、企業は賢い取捨選択を迫られている。多角的な視点での内部統制や業務フロー、セキュリティ上の見直しなど、プロの手を借りてスマートな経営体質へシフトしたいところだ。

中国アジア23拠点を広くカバーする公認会計士・専門家集団NAC グループの会社で、香港で多くの実績を誇ります。

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P11 new work 848 v2香港法人一括管理サポート
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お問い合わせは金山までご連絡ください。

 

P11 new work 848 v2PPWウェブでは同社による、わかりやすい「人事・労務・
会計ビジネスコラム」を掲載中です。
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2408, 24/F., Tower 2, Lippo Centre, 89 Queensway, Admiralty
(852)2537-2146
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www.nac.com.hk

 


 

 

思い立ったが吉日
出会いが導いたフォトグラファーへの道

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市川 勲利さん

見るからに重厚な撮影機材を所狭しと担ぎ回り、活躍するフォトグラファーがいる。色鮮やかな洗練された料理や、人物の自然な表情や優しいまなざしを切り取るカメラのプロフェッショナルだ。

この日、フォトグラファーの市川勲利(のりとし)さん(以下、市川さん)は、料理の撮影のため中環にある日系レストランにいた。撮影メニューをシェフと打ち合わせをし、料理のポイントを入念にヒアリングする。いざ運ばれてくると、測ったかのように見栄えのいい角度を固め、手早くシャッターを押す。時には、被写体が最大限映えるよう器を変えてもらったり、シェフを交えてより魅力的なカットを提案したりといったこともよくあるそうだ。

漠然と歩んできた人生に自問する日々
緑豊かな長野の地で育った市川さん。福岡の大学を卒業後、具体的な将来像が固まらないまま車の販売店へ就職をした。平凡に過ぎる毎日の中で、どこか物足りなさを感じていた時、世界中を旅してきた見識の広い先輩の話に感銘を受け、海外に飛び出すことを決めたという。ワーキンホリデー枠で門戸の広かったオーストラリア行きを決めた後、その数ヶ月後には、広大で緑が生い茂るオーストラリアの地を踏んでいたというから市川さんの行動力には目を見張るものがる。

心機一転、異国の地で生活を始めた矢先に、今後の人生を大きく変える2つの出会いがあった。1つは「フォトグラファーとして活躍する傍ら、自身でスタジオを経営するオーストラリア人にお会いしたんです。カメラを手に撮影に臨む姿がものすごく格好よくて、無給でいいからアシスタントとして雇ってほしいと懇願しました」。

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ターニングポイントとなった師匠との出会い
当時は趣味程度だったというカメラだが、この出会いによって市川さんの人生の歯車が大きく動き出す。カメラの更なる魅力に取りつかれ、メキメキと腕を磨く中、2つめのターニングポイントが訪れる。日系ウエディング会社の専属カメラマンをしていた日本人から声が掛かり、同社に入社。オセアニア地区担当の専属カメラマンとしての新たな一歩が始まった。その人物は、後に市川さんが「写真の師」と仰ぐ方で、現在でも親交が深いそう。プライベートでは香港人の妻とここオーストラリアで出会い二人は結婚。

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素材色を素材以上に撮るこだわり
駆け出しのアシスタントから始まったカメラ人生は7年に渡るオーストラリア生活の後、香港に活動拠点を移し今年で4年目を迎える。日系大手チェーン店などの顧客を中心に、メニューやウェブ、SNS用の料理写真の撮影が大半を占める。市川さんのこだわりは料理の食材の色を生かすこと。例えば、イカの刺身のように透明がかった被写体の場合、背景にティッシュを敷いて白みを増したり、ウイスキーであれば同様に背景にゴールド色の紙を置き深みを演出する。ただ映すだけではない細かい仕事が、着実に顧客を増やす所以なのだろう。

その一方で2021年頃より、コロナ禍で日本に帰国できない在留邦人から七五三や家族写真の撮影依頼が増えているという。「家族で歩むかけがえのないひとときをしっかりと刻んでほしいという思いから、レンタル衣装を準備し、着付けやヘアメイクの方とチームを組んで、スタジオやロケ撮影を行っています。在任中の思い出にと、ビクトリアハーバーを背景に撮影され帰任された方もいました」と話す。撮影時に幼い子どもが泣き出してしまうことはよくあるが、「泣いてしまった顔も後で振り返るとご家族のいい思い出になりますよ」と市川さん。

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そんな彼に今後の目標を伺うと「今現在お仕事をさせていただいているお客様に着実に満足してもらいながら、一歩ずつ進んでいきたいですね。商品撮影や家族写真など、素材や人物をファインダー越しに見つめ、その輝きを永遠に残すこの仕事は死ぬまで続けていきたい」と写真へのアツい思いを語ってくれた。180419-15 160919_Rino-83

A16, Unit 1, 7/F., Blk A, Po Yip Bldg., 62-70 Texaco Rd., Tsuen Wan
9175-5303(WhatApp)
nori@ichikawaphotography.com
ichikawaphotography.com

 


 

今もっともアツい日本人
代表監督とYouTuberのダブルワーク

main香港女子代表ソフトボール監督/YouTuber
大島 田さん

今、香港内の数多の飲食店から撮影オファーが殺到しているYouTuberユニット「大島與龍威」。
飲食店からだけでなくテレビなどのメディアからも引っ張りだこだ。

今回日系メディア初登場として、親しみやすい笑顔でインタビューに応じてくれたのは、同ユニットの大島田さん。インタビュー中も通りがかりの香港人ファンに声をかけられ、気さくにやりとりを交わす。実は大島さんは、世界野球ソフトボール連盟(WSBC)の香港ソフトボールアマチュア女子チームの監督として、13年もの間指導を続けてきた。日が暮れる頃から始まる週4日の練習では、選手と一緒に体力作りのトレーニングを行い、ノックを打ち選手の守備力を上げる。香港メディアでは「地獄教練」として紹介され一躍有名になった人だ。

野球少年だった幼少期
香港人の母、日本人の父のもと幼少期を大阪で過ごし、小学3年の時に香港へ渡航。その後、中学1年の時に野球に出会いリトルリーグに所属、日本で大学を卒業するまで野球一筋で過ごした。卒業後は「日中の架け橋となるような仕事をしたい」という思いから広州へ留学し、一筋で向き合ってきた野球の縁もあり、香港の会計士事務所へ就職する運びとなった。聞くと、香港人の母親は日本語が達者であったため家庭内では日本語で話していたそうで、今では流暢に話す広東語は香港に来てから必死に勉強したのだそうだ。

どんなに結果がでなくても前進あるのみ
ここで大島さんにとって転機が訪れる。自身もソフトボールをしていた際に、香港ソフトボール女子代表チームと偶然話す機会があった。弱小チームだったメンバーの声に耳を傾けると、「上手くなりたい」という声が多かったことに驚く。それが監督を志すきっかけとなり、会社員と監督業を掛け持つ二足のわらじの始まりとなった。
「最初は皆下手くそでしたね(笑)。まずはメンタリティを鍛えるところから始めました」と当時を振り返る。笑顔が爽やかで優しい印象の大島さんだが、グラウンドに立つとまさに「鬼監督」へと豹変する。「やる気がないなら帰れ!」そんな厳しい声が飛び交うのも日常茶飯事。大島さんの指導と選手たちの努力、練習の成果がようやく実り、弱小チームからアマチュアチームのトップへと躍り出る。険しい道のりであったこの13年を「今では上手な選手が若手へと教えるシステムが生まれました。各々の技術が高くなったこともありますが、個の人間同士が繋がり合い、一つのチームとして強い絆が生まれたことがチームを強くしたと思います」と語ってくれた。

軽い気持ちで始めたYouTubeが「バズった」
しかし、代表チームが強くなればなるほど、大会や合宿遠征で会社を年間、数十日休まなければならず、二重生活の難しさに頭を悩ませていた大島さん。そんな折、10年来の友人であり、香港で雑貨屋を経営する龍威さんと、初めは内輪の記録用にとの軽い気持ちでYouTubeチャンネルを開設、食レポ動画配信を始めた。撮影先はラーメン、寿司、焼き鳥、鉄板焼きなど、日本料理の代表的なお店だ。S__153649165

登録者は1ヶ月で3万人増える
「日本人がおいしいと言っているのだから本場に違いない」「広東語がものすごい流暢な日本人が食レポをしている」「2人が食べている様子を見ていると本当においしそう」そんなコメントが日に日に増え、瞬く間に噂は広がり、チャンネル開設1年だけで登録者数約10万人を突破する有名チャンネルへと成長した。
「撮影時には2人しかお客さんが入っていないラーメン店をYouTubeでアップしたその翌日、150人が長蛇の列を成していると連絡が入った時には驚きました」とは大島さん。また昨年には香港の超有名アイドルグループMIRRORのメンバーとのコラボ企画にも恵まれ、香港メディアに注目されるきっかけとなり、今でもチャンネル登録者数は右肩上がりだ。
このコロナ禍で旅行に行けない中、外食への需要が伸びYouTube視聴回数が増えたこともその要因だろう。それ以外にチャンネル「大島與龍威」の魅力は、編集の上手な見せ方、商業的な大げさなコメントがないところ、そして大島さんの食べっぷりの良さだ。もちろん人気YouTuberとしての苦労もある。「いいコメントをしてくださる方もいれば、アンチもいます。僕らは動画を見てくださる人のニーズにできるだけ応えていきたい」と語る。チャンネル登録者数を20万、30万人へと増やすことを当面の目標に掲げながら、今日も飲食店の撮影やメディアからの取材に大忙しだ。YouTuberという時間の融通が利くところが、監督業を兼任させる大きなポイントとなっている。S__153583626_0

香港女子ソフトボールはこれからが勝負
また、コロナ禍により来年に延期されたアジア競技会で、プロ所属の韓国チームを、アジアアマチュアトップとして打倒し下剋上を図ることも大きな目標。最後に大島さんに究極の質問「監督とYouTuber、続けるならどちらか?」と問うと、迷いなくこう答えてくれた。「監督ですね。選手があるから僕があり、選手たちが努力をして強くなるから、僕も頑張れる。今後も香港女子代表チームをもっと多くの方に知っていただきたいですし、応援していただきたいです」。
今日もグラウンドで指導をする大島監督のよく通る声と、選手たちの掛け声が元気よく響く。

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Photo by Panda Man / Takumi Photography. All rights reserved.

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YouTube、Instagramは「大島與龍威」で検索

 

 

 

 

 


 

 

あったら便利! 在宅アイテム

1室内用快適レンズ

1日中ずっとPCの前に座りっぱなし……目の酷使が気になるならば、室内用快適レンズがおすすめ。長時間の室内作業が快適になり首や肩こり、目の疲れを和らげる。パソコン画面、書類が見やすいワイドな視界、かけ替えなしで室内すべてがよく見え、視線移動も自然なので目に優しい。(情報提供・松影眼鏡)

 

 

(2)モニターライト

PCによる疲れ目に悩まされる人には、モニターに引っ掛けるタイプのライトも。作業時に部屋・デスク周り・モニターの明るさの差により目への負担も大きくなる。対策としてモニターライトを使って明るさを均一化するのが効果的だ。また、よくあるスタンドライトと比べデスク上のスペースが確保できる点もGood。

 

 

3スマホスタンド

Web会議でスマホを利用するという人も多いのでは。しかし単体だとPCのように固定するのは難しい。そこで便利なのがスマホスタンド。タブレットにも対応しているものも。コンパクトに折りたため簡単に持ち運びできるタイプもあり、在宅ワークだけでなくお出掛け時にセルフィー撮影でも重宝する。

 

 

4ヘッドセット

Web会議を行う際に、標準装備のマイクやスピーカーで十分と思う人もいるかもしれないが、こちらの声が相手に聞き取りづらかったり、周りの騒音がうるさいと邪魔になるなど、デメリットも多い。ノイズキャンセリング機能があれば周囲の音をシャットアウト、他にもボタン1つで手軽にミュートにできるなど、ストレスを大幅にカットできる。

 

 

P14 new work 848チェアークッション

長時間座りっぱなしは腰への負担が大きい。そこで簡単に骨盤回りの負担を軽減してくれるのがチェアークッション。座る部分に置くタイプと背中まで包み込むタイプ、スポンジ製からゲル製まで多くの製品が販売しているのはそれだけ効果が期待できるということだ。

 

 

8ノートPCスタンド

ノートPCは仕様上どちらかというと視線が下がりがちになる。PC作業時に首や肩の負担を減らすなら、ディスプレイの上部分が目の高さくらいにあった方が見やすいそうだ。無理なく仕事を進めるにはもってこいの同商品、ノートPCをデスクやテーブルに置いて作業しているのであれば、是非一度お試しを。

 

 

(7)パームレスト

ひたすらキーボード操作をする際の腱鞘炎対策アイテム。長時間タイピングしても手の負担を軽減してくれる。使用するキーボードにより高さが異なるので購入時は注意が必要。マウス用もあるが、どちらかというと長時間手に負担がかかるキーボード用を試してみれば、そのバツグンの効果が実感できるだろう。

 

 

6ホットアイマスク

パソコン作業などで長時間にわたり目元の筋肉を緊張させていると、眼球の血管詰まりで目の疲れを実感する。お手軽に解消するには、ホットアイマスク。目元をじんわりと温め血行をよくし、疲労の回復に。仕事合間の10分間だけでもアイマスクを着けて休憩すれば気分もスッキリするはず。最近は繰り返し使えるデジタル式もある。

 

 

9アロマディフューザー

特に夏場、エアコンと除湿器のダブルパンチで喉や肌の乾燥が気になるところ。また、ずっと同じ場所にいると気分転換がしたくなるもの。そこで便利なものは卓上加湿器も兼用するアロマディフューザーならば気分も変えてくれて、乾燥も防ぐ。インテリアとしても楽しめ、エッセンシャルオイルを入れると癒し効果も。

 

 

リモートワークにおすすめ
ビジネスアプリ

slackSlackコミュニケーションツール

社内外のコミュニケーションツールとして多くの企業で使われているアプリ。仕事のやり取りをチャットベースでタイムリーにやり取りできるほか、zipファイルやドキュメント、画像の送信もドラッグ&ドロップで簡単に共有ができる。有料版もあるが、フリープランでも十分便利。

 

chromeChromeリモートデスクトップリモートアクセス

会社のPCと自分のPCをインターネットを経由して遠隔で操作することができる。デスクトップのほか、スマホからでもアクセスが可能だ。スマホとPCにアプリをインストールし、Googleアカウントで同期するだけですぐに利用ができ、PIN(パスコード)で接続を認識するため、セキュリティ面も安心のアプリ。

 

team viewerTeamViewerリモートアクセス

会社のPCと自分のPCをインターネットを経由して遠隔で操作でき、かつ共同作業も可能。高い解像度で不自由なくリモートで作業ができ、通信速度も早く、ストレスなく作業を進めることが可能。

 

trelloTrelloタスク管理

チームで取り組んでいるプロジェクトの進捗状況、次に何をするべきか、完了まで何が残っているのかなど、タスクを可視化できる。誰が何をしたのかをチームで共有できるので仕事の漏れや行き違いなどを防ぐことも可能。

 

Evernoteメモ管理

利用している全端末で自動的にノートを同期するので、重要な情報にいつでも簡単にアクセス可能。また、ノートにはテキストだけでなく、画像、音声、スキャン、PDF、文書ファイルを追加できる。

 

1钉钉コミュニケーションツール(中国)

アリババグループが企業のために開発したコミュニケーションとマルチエンドプラットフォームアプリで、スマフォとPC間のファイル相互転送や企業内でのコミュニケーション効率をアップする。そのほか、会社のファイルをアップロードする機能もあり、リモートワークにも対応可能。

 

2Towerタスク管理(中国)

プロジェクトの種類によってテンプレートを選択可能なので、タスクページの作成がスムーズに行える。また締め切りや優先順位がわかりやすく表示されるので、チームのリーダーはスタッフそれぞれの進捗も管理しやすい。

 

3向日葵远程控制リモートアクセス(中国)

自宅PCと会社PCを遠隔操作できるリモートアクセスアプリ。Windows、Mac、Android、iOSのマルチプラットフォームに対応している。中国では15年以上の歴史と5千万人ものユーザを誇る実績がある。

 

4桌面时钟デスクトップクロック(中国)

在宅勤務では家族や家事などの影響で業務の時間配分などが難しく、業務効率が下がるケースも多い。同アプリでカレンダーやタスクスケジュールを管理のほか、パスワード保護機能などもある。

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