フリーランス特集 PartⅡ
How to be a Sole Proprietor
香港・中国本土の個人事業主になる為の基礎情報
香港や中国でフリーランスとして働くにあたり、やはり日本とは勝手がちがう。そこで気になるポイントを会計・税務及び行政手続きの専門家・ワイズコンサルティング社 山本氏に詳しく解説いただいた。
(※ 情報は2020年5月25日現在のものです。)
事業を始める場合、一般的に個人で始めるのかそれとも会社を設立して始めるのかによって各種手続きが異なります。ここで、会社を設立せずに個人で事業を営む方を個人事業主と呼びます。最近よく聞くフリーランスの方などです。また、香港・中国本土で会社を設立して事業を始める場合は、各種行政手続きが必要になりますが、香港と中国本土では制度が異なるため各種行政手続きも異なります。香港と中国本土の会社設立に関する各種行政手続きについて解説いたします。
会社を設立するにあたって
Ⅰ.香港
香港で会社設立をする場合、設立方法は2通りあります。既に会社設立済みですが活動していない会社、いわゆるシェルフカンパニーを購入する方法と新規に会社を設立する方法があります。ここでは、新規に会社を設立する方法を解説いたします。
1.新規会社設立方法(香港)
まず、香港での会社設立にあたって事前に決めていただく事項があります。その事項及びそのポイントは、【図表1】の通りです。
2. 会社設立手順(香港)
会社設立にあたっての手順は、次の通りです。
① 事前に決めていただく事項の決定
② 類似商号の確認
③ 定款及び各種必要書類の作成
④ 法人設立登記と商業登記の申請
会社設立登記が正式に完了すると会社設立証書(Certificate of Incorporation=C.I.)が発行されます。また、税務局管轄の商業登記署から商業登記証(Business Registration Certificate=B.R.)が発行されます。会社設立証書と商業登記証は、会社名義での銀行口座開設や賃貸契約締結の際に必要となります。香港で設立した会社は、その資本額に関わらず、年次決算書類を香港公認会計士協会(HKICPA)所属の会計士による監査を受けることが義務付けられています。
Ⅱ.中国本土
中国本土で外国法人あるいは外国人個人が出資をして会社を設立する場合は、三証合一登記制度改革により、昔よりも手続きが簡素になっています。昔は、会社設立登記及び変更登記が審査・認可制でしたが、現在は、一部の業種を除き届出制に変更されています。中国本土での新規会社設立方法は次の通りです。
1.新規会社設立方法(中国本土)
まず、中国本土での会社設立にあたって事前に決めていただく事項があります。その事項及びそのポイントは、【図表2】の通りです。
2. 会社設立手順(中国本土)
会社設立にあたっての手順は、次の通りです。
① 営業ライセンスの申請・取得
② 印鑑作成(社印・法定代表人印・財務印・発票専用印)
③ 銀行口座開設(資本金口座、基本口座、一般口座)
④ 各種税務手続き
⑤ 社会保険手続き
⑥ 住宅積立金手続き
⑦ 輸出入関係の手続き
⑧ 贸易外汇收支企业名录登記手続き
上記手続きは、主に華南エリアでの手順になります。華東・華北・華西などの他のエリアによっては、名称や手順が異なる場合があります。
VISAの取得
Ⅰ.香港
本来、外国人が香港で事業活動を行う場合に取得する一般的なビザは、就業ビザ(Employment Visa)あるいは投資ビザ(Investment Visa)です。しかし、個人事業主形態で事業を始める場合は、これらのビザを取得することが困難です。そこで、ビザ取得の制約がかかってしまう個人事業主の方が事業活動を行う場合は、会社を設立して事業を行うことが必要になります。ただし、既に永住権(パーマネントID)を取得している方は、ビザの制約がないためビザ取得という問題は生じません。
Ⅱ.中国本土
中国では、外国人は個人事業主(中国語:个体工商户)として事業することは認められておりません。
参考条文:个体工商户条例
第二条 有经营能力的公民,依照本条例规定经工商行政管理部門登记,从事工商业经营的,为个体工商户。
第二条 経営能力を有する”公民”は、本条例の規定に従い工商行政管理部門に登記をし、個人事業主として工商業経営に従事することができる。
上記”公民”には外国人が含まれないと解されております。
よって、外国人は個人事業主として事業することが認められていないためこれに対するビザを取得することはできません。また、外国人は、中国人がオーナの個人事業主のもとで働いてもビザを取得することはできません。そこで、中国本土でビザを取得して事業をする方法としては、会社を設立するかあるいはビザ取得をサポートしてくれるスポンサー会社を見つける方法が考えられます。このような方法で事業を行うことが可能になった場合は、就労ビザ(Zビザ)を取得して事業活動を行います。就労ビザ取得の行政手続きは、次の通りです。
1.新規就労ビザ(Zビザ)申請の手続
①【就労許可通知】申請:15営業日(実務上は10〜15営業日程度) ※ 犯罪経歴証明書の提出が必要です
②【就業ビザ】申請:4営業日程度 ※ 在日本国中国大使館、領事館等
③【就業ビザ】で中国に入国
④【就労許可証】:15営業日(実務上は10〜15営業日程度)
⑤【居留許可】:8営業日 ※ 犯罪経歴証明書:日本の警察署が発行する日本の《犯罪経歴証明書》(取得に2週間必要、日本で本人申請が必要)。ただし、この方法以外にも裏ワザ的な方法があります。
税制について
Ⅰ.香港
ビザの制約がかからない方が個人事業主として事業を行う場合は、税務局(IRD)に商業登記を行う必要があります。秘書役の選任や会計監査は必要ありません。ただし、決算を行い税務申告する必要があります。個人事業主の税務申告は、収入が事業所得だけの場合は、事業所得だけの申告を行い、事業所得以外に給与所得や不動産賃貸所得がある場合は、総合課税での申告を行います。税率は、標準税率15%です。
Ⅱ.中国本土
中国本土の個人所得税は、発生した所得の種類ごとに税率を定め課税します。外国人は、個人事業主として事業することが認められていないためこれに対する税金の論点は生じません。会社に関する主な税金は、日本の消費税に該当する増値税の税率が原則13%(サービス業6%、小規模納税人1〜3%)、企業所得税の税率が原則25%(利益100万元までは5%)です。
その他日本とは異なる事項や注意点
Ⅰ.香港
香港の会社に雇用されその会社の就労ビザというステイタスの状況で個人事業主として副業されている方は、就業禁止や利益相反取引違反等にあたる可能性があります。また、就労ビザの発給要件がその会社の仕事だけに従事するという要件のため、個人事業主として副業されている方は、その要件に関する義務違反にあたる可能性がありますのでご注意ください。
Ⅱ.中国本土
中国本土で会社を設立して事業を行う場合は、会社から給与という形で収入を得ることになります。給与を受取る外国人は、給与所得として納税しますが、その場合は、他国での収入の有無、中国本土での居住年数や滞在日数により税務上の取扱が異なってきますのでご注意ください。
専門家から今後個人事業主を目指す方へアドバイス
Ⅰ.香港
日本人駐在員の主婦の方から香港で自分の趣味を生かしながら個人事業主としてカルチャー教室の事業を行いたいというご相談があります。この場合は、主婦の方は扶養家族ビザのためビザによる事業活動の制約はありません。ただし、上記に述べたように商業登記及び税務申告は必要になります。また、ビザの制約により個人事業主としての事業活動が難しい方は、業種を絞って自分が行う予定である事業業種と同じ業種の会社に就職し、永住権が取れるまでその会社で勤務してスキルを上げるという選択肢もあります。
Ⅱ.中国本土
中国本土では、外国人は個人事業主として事業することは認められておりません。よって、法人を設立して事業を行うことになります。中国本土で会社設立やビザ手続きを行う場合、エリアや場所によって手順や名称が異なる場合があります。また、進出スキームを検討する場合には、税務スキームや参入制限のある業種等の検討も必要になります。会社設立やビザ取得などの行政手続きについては、弊社を含めた行政手続きの専門家にお問い合わせ頂ければ幸いです。
税理士・会計士等による無料相談実施中 お申込みは、info@ysconsulting.com.hk まで。
山本 圭一郎
日本国税理士・行政書士
ワイズコンサルティング 国際会計グループ 香港・深圳
【ワイズコンサルティング香港事務所・深セン事務所のご紹介】
香港事務所:創業35年
住所:15/F., O.T.B. Building, 259-265 Des Voeux Rd. Central, Hong Kong
電話:(852)2851-8700
深セン事務所:創業17年
住所:深圳市羅湖区建設路1072号東方広場520室郵編518001
電話:(0755)8831-6995
会計・税務・監査・ビザ・相続・コンサルティング等の専門的なサービスを提供