総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:フルーツと健康

2018/12/27
メディポート代表:堀 眞

メディポート代表:堀 眞

間もなく新暦の新年を迎えます。私が幼少であった50年ほど前は、毎年、年末になると母親はおせち料理作りに忙しく、いつもその手伝いをさせられていたことを思い出します。官舎住まいの我が家では餅をつくことまではできませんでしたが、新年を迎える準備として何かと簡単な手伝いはさせられていたものです。そんな時季に静岡の親せきから毎年送られてくる箱詰め20㎏ものミカンがありました。今のミカンとはまったく違って、ひとつひとつの房を包む皮がとても厚く、当時はその皮をむいて食べる人も少なくはありませんでした。甘みが少なく酸味が多い、現代のものとはまったく違うミカンでしたが、お正月にこたつに入って、テレビを見ながら食べることは当時の楽しみのひとつでもありました。

そのミカン、日本を代表する果物であり、冬になるとどこの家のテーブルにもミカンの山が積まれていたものです。バナナでさえまだまだ高価な果物で庶民の手には入りにくいものでしたから、この季節の果物と言えば他にリンゴや柿があるくらいでした。ミカンは手で皮をむけるため小さな子供でも食べやすく、あっという間に皮が山積みになることもあったほどです。ミカンの食べ過ぎです。手が黄色くなるばかりか、身体全体が黄疸のようになってしまった友人もいたものです。これは柑皮症と呼ばれる症状です。ミカンの色素(カロテン)によって皮膚が着色されるもので、ニンジンでも健康に良いからと言って大量にジュースを飲んでいると、同じことが起きるようです。

さて、果物は一般的には身体に良いものとの認識がなされている食品です。ビタミンCが多く含まれているということからの連想なのか、美容にも効果的だと思い込んでいる人も少なくはないようですね。その一方で、含まれる果糖の量が多く、食べ過ぎると太ると信じている人も多いようです。そうなると、いったい果物は身体に良いのか悪いのか?判断に困ってしまいますが、どんな食品でも食べ過ぎで太るのは当然のことです。最近の果物は糖度がとても高く、この点からは食べ過ぎ注意であることは間違いないと思いますが、果物の栄養成分はとても素晴らしいものでもあります。

酸味がビタミンC由来だと思っている人も少なくはないようですが、果物のすっぱい味はクエン酸によるものです。ビタミンCを摂取したいからと言っても、果物が良いというわけでは決してありません。ビタミンCであればピーマンやサツマイモの方が多く含まれており、効率よく摂取できます。果物はその色によって栄養成分が多少異なりますが、カロテン(ビタミンA)や葉酸、ビタミンEといったビタミン類、あるいは亜鉛や鉄といったミネラル類や最近話題になることが多い抗酸化物質ポリフェノールも豊富です。これらの成分の多くはフィトケミカル(ファイトケミカル)と呼ばれるもので、今のところ医学的に証明されているわけではありませんが、健康上の効果が大いに期待されているものです。

さて、このように栄養成分が豊富に含まれる果物ですが、最近はその糖度が上がりすぎていることが問題になることもあるようです。オーストラリア、メルボルンの動物園では、最近の果物は甘すぎて、動物たちを太らせ歯を悪くする原因になっているとして、果物絶ちしているそうです。品種改良などで糖度が上がっている果物ですが、その摂取が多い動物に健康上の問題を引き起こしていることは興味深いことです。甘いばかりが一概に良いとは言えないものの、やはり甘みは果物の最大の旨味です。ヒトにとっては心疾患やがんなどのリスクを下げる食品であるともいわれており、食べ過ぎは良くないのかもしれませんが、甘い炭酸飲料などをがぶ飲みすることと比べれば、高々しれています。

秋から初冬はいろいろな果物が豊富に出回る時期です。野生動物は果物や木の実が豊富なこの季節にせっせと食べ続け、栄養とカロリーを体内に貯め込もうとします。厳しい冬に備えてのことですが、食に満たされているヒトは健康にどうとかいう講釈は抜きにして、今の時期くらい美味しい果物を心行くまで食べても良いのではないでしょうか。

 

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