メディポート健康コラム:ウイルスとの戦い

2023/11/29

スクリーンショット (2488)COVID19(新型コロナウイルス)との戦いは長いものでした。行動規制にワクチン接種、そしてマスク。日常生活を激変させて、全人類、全員参加で挑んだ戦いも現在はほぼ終盤にあります。多くの犠牲者を出したこのウイルスは、インフルエンザなどと同じく季節性、あるいは散発的に感染者数が増加するような日常的な感染症になっていくとの見方が一般的です。人類の歴史においてCOVID19 を上回る最大のウイルス性感染症はおそらくスペイン風邪です。1918年から1920年にかけて全世界で流行し、当時の世界人口(約18億人)の3割くらいが感染し、約4000万人から最大1億人以上が死亡したとされます。当時は第一次世界大戦のさなかにあり、一般の人が国境を超えて移動する機会はほとんどありませんでした。情報も統制されている国が多かったことから、この流行に関した正確な被害規模は推定にしかすぎませんが、極めて甚大であったのは間違いありません。当時は、医療技術も医学情報へのアクセスもなく、現代のように積極的にウイルスと戦う状況にはありませんでした。人々は何が起きているのかもわからずになされるまま、多くの犠牲を払いながら集団免疫を得ていったものと思われます。ちなみにスペイン風邪はその後変異しながら現在のインフルエンザ(H1N1)に繋がります。また1957年に東南アジア一帯で流行したアジア風邪や1968年に中国南部で流行して香港風邪と名付けられたインフルエンザも変異を繰り返しながら現在のA型インフルエンザ(H3N2)となり定着しています。なお、B型インフルエンザは1940年にアメリカではじめて発見されたものです。

ウイルスとは何者か
そもそもウイルスとは何者なのでしょうか。電子顕微鏡が使えるようになりその構造も解明されていますが、ウイルスは一般的には生物と非生物の中間として認識されています。自分で増殖できないので、動物や植物の細胞に入り込んで、その遺伝子をちゃっかりと借用して増殖します。またその大きさも極めて微細なもので、ヒトの身長を地球の直径ほどと仮定した場合、微生物の代表ともいえる細菌の大きさは中型ヨット程度であるのに対して、ウイルスは子供がお風呂で遊ぶおもちゃの船程度です。我々が戦う相手がいかに小さなものであるのか理解できますが、そんな敵に我々は翻弄され続けているのです。哺乳類や鳥類が保有する未知なるウイルスは170万種にも及び、このおよそ半数はヒトに感染する可能性が考えられ、今後さらに新たなウイルスの流行が起きるものと覚悟する必要があります。

変身自在なウイルス
ウイルスの最大の特徴は自身の性質を連続的に変化させ、その毒性や感染力を調整する能力を持つことです。それらは感染を繰り返すうちにウイルスにとって最適なバランスに落ち着きます。SARS(重症急性呼吸器症候群)はアジアを中心に世界中で8096人が感染し、774人の命を奪いました。新たな感染者が現れても、いつ誰から感染したのかが追跡できるとても稀な感染症でした。このウイルスは感染力が弱かった半面その毒性が強すぎました。そのため自己増殖する前に感染した相手が死亡するためそれ以上の感染拡大ができないという、皮肉にもウイルスにとって致命的な弱点を持っていたのです。それに対しCOVID19は、まるでSARSで学習したかのように、毒性と感染力を調整し非常に都合の良い状態でヒトの世界に入ってきました。現在も感染を繰り返していますが、これからも変異しながらヒトの日常的な感染症として定着することでしょう。

地球温暖化と未知のウイルス
地球温暖化を訴える声が増々大きくなっています。すでに地球上の各所でこれまでに経験したことがない異常気象も日常化していますし、まだあまり知られていませんがシベリアでは大きな問題が起きています。夏を迎えても決して溶けることがなかった永久凍土が近年随所で溶けてきています。その影響でそれまで凍結されていたマンモスなどの死体もその姿を現しているのです。それら古代の動物の死体から未知のウイルスが発見されており、将来何らかの病原性を伴ってヒトに感染してくるのではないかと懸念されています。今のところどのような影響が出てくるのか全く分かりませんが、古代のウイルスがヒトに対して病原性をもって出現してきたら、これまでの感染症と同じように長い戦いを強いられるのかもしれません。やはりワクチンや抗ウイルス薬で対抗するわけですが、ウイルスの変異を考えるとそのリスクを簡単に排除するのは難しいのではないでしょうか。

永久に続く戦い
ウイルスに対しても抗生物質のような革命的な治療薬が開発され、変異株も含めてすべてのウイルスに効果的に働くのであれば人類はウイルスに勝利できるのかもしれません。しかし自在に変異するウイルスは無敵に近い存在といっても良いものです。もちろん治療薬の開発は日進月歩で著しい進化を遂げていますが、ヒトの免疫力についても考えておく必要があります。漠然としていますが、免疫力を落とさない生活、生き方というものも大切になります。過度の清潔志向や抗生物質はじめ医薬品の多用なども改めるべき課題といえます。いつの日か増えすぎた人類が淘汰される日が来るのかもしれません。そのきっかけが温暖化でマンモスを解凍させてしまったことであれば、自業自得というべきものなのかもしれませんね。ウイルスに対しては個人も含めて、我々はあらゆる方策を練る必要があります。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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