総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:何としても避けたい「糖尿病」

2019/07/24

堀様1

日本人にとって国民病の代表ともいえる糖尿病。現代では、この病気は先進国にとどまることなく、貧困にあえぐ国々でさえ大きな問題になっています。私は、機会あるごとにその怖さを伝えてきたものの、残念ながら深刻な病気であると真正面から受け止めてもらえることは少なく、最近はもどかしささえ感じるほどです。主に肥満が引き金となって発症する2型糖尿病は、たとえ発症しても自分自身の努力で改善が十分に見込める病気です。親が糖尿病であって体質的にその因子を持っていたとしても、もちろん予防することが十分に可能なのです。それにもかかわらず改善の努力を怠り、具体的な治療をきちんと受けることなく、やがて合併症を起こしてしまう。こうなってしまうともう後戻りはできません。そうならないためにも、何としても避けたい病気が糖尿病なのです。

 

ダイエットの効果

糖尿病の多くは肥満を原因としていることが多いようです。当然ながら遺伝因子を持っていると思われる人は体重の増加を避けなければいけません。また健康診断では体重変化と合わせて糖尿病関連の検査データ(血糖値、ヘモグロビンA1c)の変化をチェックしてください。もちろんこれらの数値が基準内にあるからといって安心してはいけません。時系列的な変化をみて、徐々に悪い方向に動いていないかを確認し、場合によっては早い段階で糖尿病発症の芽を摘み取らなければいけません。とにかく体重を増やさないこと。そして中性脂肪が高いことなど、早い段階で現れる肥満の影響に敏感になって、早めにダイエットを実行するべきです。

 

合併症の恐怖

一般に糖尿病は何の苦痛も伴わず、静かに進行していく病気です。したがって積極的に治療しなければいけないという動機づけが欠如してしまいがちになります。しまった!と思った時には、もう手遅れ。腎臓透析をしなければいけなかったり、四肢の切断を決断しなければいけなくなったり、あるいは視力を失っていたりするのです。生活の質が著しく損なわれてしまいますが、こうなってからの後戻りはどんなに頑張っても不可能です。最近は脳梗塞が第4の合併症として知られるようになってきました。さらに糖尿病ではない人と比べて、脳血管性認知症が約2.5倍、アルツハイマー型認知症で1.5倍も発症リスクが高いとの数字も出されているのです。これらの「合併症」はその発症に至る過程でもほとんど症状は現れません。最終的には寿命を数年から10年も短縮させてしまうともいわれており、糖尿病はサイレントキラー(静かなる殺人者)の代表的な疾患であるといえます。

 

残念な実例

血糖値が250㎎/dlほどもあった香港駐在員。肥満が原因の糖尿病患者の彼は、脂質異常症、肝機能異常、高尿酸血症、さらに高血圧症に悩んでいましたが、ある年の健康診断の結果を見て一念発起。85㎏の体重を10年前の75㎏に落とすために食事制限をはじめました。半年後に5㎏落ちたところで血液検査を受けたところ、血糖値は104になり、肝機能異常も脂質異常症もすべて完全に改善されていたことに大喜び。その後まもなく帰国。目標とした体重には達しませんでしたが、ダイエットが成功したことに安心した彼は、本社勤務になってから食事も飲酒も元に戻してしまったそうです。体重はあっという間にリバウンドして、せっかくのダイエットの成果が吹き飛んでしまったばかりか、糖尿病の合併症が現れて週に3回もの血液透析を余儀なくされてしまったそうです。海外事業部ではトップを走っていた彼も、その後は毎朝10時から午後4時までの仕事に制限されてしまっていると風の便りで聞いています。非常に残念な事例です。

思っている以上に多くの病気の発症リスクを明らかに上昇させるうえに、合併症を起こしてしまうと生活の質を著しく蝕んでしまう糖尿病。それほどの病気であるにもかかわらずその診断を受けたところで、がんを告知されたときのような衝撃はありません。しかし、放置した場合に起こり得る身体的不利益は想像をはるかに超えたものとなります。繰り返しますが、糖尿病は自分の努力で発症を予防することはもちろん、たとえ発症していたとしても改善が十分に期待できる病気です。自身が糖尿病であるという発症者は医師など専門家の助言のもと治療に専念するべきであることはもちろん、直系の家族に糖尿病患者がいる人、すでに何らかの兆候を指摘されている人は、発症を予防するべく努力が欠かせません。糖尿病の原因は単一ではありませんが、2型糖尿病の多くは肥満が引き金になったものです。がんとは違って、自分の力で改善させたり、発症を予防したりできるのです。努力は必ず報われます。まずは現状を把握して、何をするべきであるかの助言を専門家から受けることをお勧めします。さあ、今日からです。

 

 

 

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