総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:命を救う有効手段

2018/06/22

命を救う有効手段 AEDと心肺蘇生法

 

メディポート代表:堀 真

まったく予期することもなく、突然やってくることも決して珍しくはない人の死。がんのように長期療養に耐えた後、力尽きるように最期を迎えることもありますが、それまで健康そのものに見えていた人が突然亡くなってしまうことは、近親者に深い悲しみを与えるだけではなく、その事実を受け入れるまでの時間もとても長くかかるものです。

医学的な定義では、何らかの症状が現れてから24時間以内に死亡することを突然死としています。その死因は心筋梗塞などの虚血性心疾患や不整脈などによる心不全がおよそ6割を占めています。そのほか脳血管障害によるものなど、突然死は循環器の問題を原因とすることがほとんどです。中でも急性心筋梗塞の症状は急激です。それまで何の前触れもなく普通の生活を送っていた人が突然意識を失い、呼吸が停止したうえ血液循環もない心肺停止の状態に陥ります。このとき心臓は小刻みに震えており(心室細動)、血液を全身に送るという機能がまったく行われていません。心室細動は極めて危険な致命的不整脈であり、患者は短時間で死に至ります。その一方で1分1秒でも早い救命措置を施すことによって多くの命を救える可能性もあります。このような状態における初期の救命処置に医師がかかわれる可能性は極めて低く、現場にいる人がとっさの判断でいち早く救命処置ができるかどうかに患者の生死が関わっているといっても過言ではないのです。

意識を失った人を前にして救急車の出動を要請することは多くの人が行うことです。しかしその到着までの時間が極めて重要な時間になります。心室細動を起こしている心臓を正常化させることができるのは電気ショックによる除細動処置だけです。心肺停止後、除細動までの時間が1分遅れるごとに7~10%も救命率が下がるといわれており、何もしなければ救命率が激減してしまいます。一般には除細動にAED(自動体外除細動器)を使用することになります。AEDは駅や空港、ショッピングセンターなど多くの人が利用する場所への設置が進められています。万一の時AEDを取りに行って、そして倒れている人のもとに戻るまでの時間が短いほど救命に有利であることは当然です。自分がよく行く場所のAEDがどこにあるのかを確認しておくことは無駄にはなりません。

ちなみに心肺停止に至る場所で最も多いのは一般家庭です。したがって全世帯にテレビのようにAEDが普及すると、心不全による死亡者数をかなり減らせるのではないかと期待できます。1台20万円ほどもするAEDが一般家庭に急速に普及するとはもちろん考えられませんが、価格が下がり、さらに一般にその有用性に関して意識が高くなれば購入する人も増えることでしょう。

さて、公共の場所でAEDの設置が増えているとはいえ、まだ十分な数があるとは思えません。緊急時にAEDを取りに行く時間も1秒たりとも無駄にはできません。救急車を呼んでから即座に心肺蘇生法(CPR)を施すことが求められます。胸骨圧迫(俗にいう心臓マッサージ)と人工呼吸です。胸骨圧迫は毎分100回のスピードで絶え間なく確実に行います。さらに胸骨圧迫30回ごとに2回の人工呼吸を加えます。一連の救命処置は救急隊員に患者を引き渡すまで休むことなく続けなければいません。周囲に人がいるのであれば、自分が心肺蘇生術を施す間に、救助の要請を出す人、AEDを探しに行く人というように役割分担すると、命を救える限られた時間を有効に活用でき、蘇生できるチャンスが少し増えることが期待できます。可能であれば心肺蘇生は二人で交代してできると良いですね。自分の体重をも利用して胸部圧迫することはかなりの重労働ですから、絶え間なく行うためには交代要員がいることが理想です。

いくら平穏な毎日であっても長い人生です。目の前で人が心肺停止状態に陥る場面に出くわしてしまう可能性がないとは言えません。私自身も人がおぼれた現場に居合わせたことがあります。その時にはライフセーバーが手早く処置していたので安心して見ていられたものの、もし誰もいなかったらと思うとドキリとしてしまいます。家族など身近な人が倒れてしまうこともあるかもしれません。そんな時に適切に処置ができれば消えかけた命を救えるかもしれないのです。日頃からCPRの知識やAEDの使用法を得ておくことはもちろん、できれば講習会に出て、一通りの訓練をしておく意義は極めて大きいはずです。

CPR法やAEDの使い方などを伝授する救命講習会はいろいろなところで実施されているので、できればそのような機会を利用して技術習得しておけば、いざという時の自信につながります。ネットでも動画を交えて解説されているサイトがたくさんあります。たとえ講習会に行く機会がなくても、せめてこのようなサイトをのぞいてみるくらいのことはやっておいて無駄にはなりません。あなたがいたから救われた命があったとしたら、とても素晴らしいことですよね。難しいことではありません。ちょっとしたコツさえつかめば誰もができる人命救助です。一人でも多くの人に関心を持ってほしいものです。

メディポート代表:堀 真

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