メディポート健康コラム:多くの糖尿病の改善は”努力次第”
糖尿病は血液中の血糖値(グルコース)のコントロールが効かなくなり、高血糖状態が継続してしまう病気です。症状に乏しく放置しがちですが、何も対処しなければ静かに、そして確実に悪化します。血糖は身体機能維持に不可欠なエネルギー源ですが、必要以上に高い血中濃度が続くと血管や神経に対して悪影響を及ぼします。血糖値が高くなっても自覚症状がほとんどないので、おかしいと気付いたときには取り返しがつかない合併症を起こしている可能性がある、厄介で怖い病気が糖尿病です。
ところで、最近「糖尿病患者の1%が寛解に至る」との研究結果が報告されていましたが、これは糖尿病患者の希望を失わせてしまいかねないと、私は大きな違和感を覚えたものです。もちろん糖尿病発症には多くの原因があり、なかには治療が難しいタイプがあるのも確かですが、多くの患者は努力次第で著しい改善が期待できるのです。
1型糖尿病
血糖値を下げるホルモン・インスリンが分泌されなくなるタイプの糖尿病で、全糖尿病患者の5%程度を占めています。比較的若年者に多いものの年齢にかかわらず全世代にわたってリスクがあり、生活習慣などとは関係なく急に発症するのが特徴です。患者の努力で改善できるものではないので、イ ンスリン注射が治療の中心となります。詳しい発症メカニズムが完全に解明されているわけではありませんが、本来であれば自分自身を守る働きを担う免疫に異常が生じ、自分の身体の一部を攻撃してしまう自己抗体によって膵臓のβ細胞(インスリン分泌細胞)が破壊されるのが主な原因と考えられています。
2型糖尿病
「インスリンの働きが悪くなる」タイプ(インスリン抵抗型)と、「インスリンの分泌が悪くなる」タイプ(インスリン分泌低下型)がありますが、いずれにしても遺伝要因(体質)も関係するので、血縁者、特に両親に糖尿病患者がいる場合は特段の注意が必要です。発症は緩慢で、健康診断などで血糖値やヘモグロビンA1cが高めだと初めて指摘されてから数年~十数年を経て発症します。2型糖尿病は体重増加が発症に大きな影響を与えるので、体重の増加を抑えればその可能性を低くできます。高めの血糖値を指摘されたら、とにかく体重の変化に敏感になることが大切です。
合併症
急性合併症として、著しい血糖値の上昇で生じる「糖尿病ケトアシドーシス」と「高浸透圧高血糖症候群」が挙げられます。これらは1型糖尿病で起きやすいものですが、2型でも一度に大量の糖分を摂取したときに起きることがあり、これを放置すると意識障害を起こしとても危険です。
ところで糖尿病の3大合併症として神経障害(壊死による足の切断)、網膜症(失明)、そして腎症(腎臓透析)が広く知られていますが、最近はこれに脳梗塞が加えられています。糖尿病は自覚症状に乏しいので、患者の治療に対する強い意欲が起きにくいものです。病気を甘く見て長期間放置せず、糖尿病の可能性を指摘されたら、その危険性を理解して早めに対応するべきです。
糖尿病の寛解
糖尿病は治らない病気だと思われているようですが、これは「その体質は変えられない」と言い換えるべきです。特に2型糖尿病は、高い確率でまったく問題ないレベルにまで改善が期待できます。とにかく血糖値さえ下がれば良いのです。血糖値が糖尿病領域を継続的に下回った状態を寛解と呼びます。完治とは表現しませんが、この状態を維持させることが大切です。寛解の状態が維持されていれば、これは完治と同じだと思っても差し支えありませんが、体重が再び増えると必ず血糖値の大幅な上昇が起きます。減量後の体重維持は極めて重要な課題です。
とにかく痩せよう
糖尿病の原因は確かに肥満だけではありません。しかし、経済の急速な発展に伴って肥満人口が増加した中国で糖尿病患者の激増が大問題になっていることからも、肥満を原因として糖尿病発症に至るケースがとても多いのは事実です。この場合は、とにかく減量を最優先課題としてしっかりと治療に取り組まなければいけません。減量は血糖値を下げるだけでなく、中性脂肪やコレステロールの数値も改善させるとともに、軽い高血圧症程度であればこれを正常化させることも期待できます。肥満は糖尿病のほかにも多くの循環器系疾患の危険因子となっているので、減量だけで健康状態の大きな改善が期待できます。さらに肥満に伴う脂肪肝や肝機能異常なども改善でき、その効果は想像以上です。
寛解を維持することが大切
せっかく減量してもリバウンドしてしまっては意味がないばかりか状況を悪化させてしまいかねません。糖尿病やその予備軍にあたる人が一念発起して減量する場合は、減量後の体重を終生維持するという強い決意を持つ必要があります。「1%の糖尿病患者が寛解する」というのは、研究上の条件を満たしたケースです。糖尿病を克服した事例は私の周りに多くあります。ぜひ頑張ってください。
-注意-
糖尿病が進行している場合、やみくもな減量は低血糖発作の危険があります。
必ず医師の助言に従ってください。
藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。
医療・健康の総合コンサルタント Mediport International Limited
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