総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:酒は飲むべし、飲まるるべからず

2018/01/22

クリスマス、新正月、そして今年は少し遅くなりますが春節と続く今の季節、外食続きですでに胃の具合を悪くしている人もいるのではないでしょうか。もちろん体重が増加することが心配な人も多いのでしょうが、お酒好きの方にとってはこの季節の飲酒量を今一度振り返ってみることも必要なのではないでしょうか。

メディポート代表:堀 真メディポート代表:堀 真

ところで、私は仕事にからんでお客様に飲酒量を確認する機会が多いのですが、最近日本人の飲酒量が減っているのではないかと思うことが度々あります。特に若い人に聞くと、全く飲まないと言い切る人も少なくはありません。最近は飲む人が少なくなってきたのかと漠然と思っていましたが、手元にある日本酒造組合中央会の報道関係向けの発表資料「日本人の飲酒動向調査」に目を通すと、どうもそれは私の誤解のような数字が並んでいるのです。これは1988年以来およそ30年ぶりの調査報告であり非常に興味深いものです。この資料によると確かに男性の飲酒率は低下しているものの日本人の特段の飲酒離れは認められず、女性の飲酒率が20%も増えていることが特徴的となっています。また、ライフスタイルが大きく変わってきたことから、飲酒機会が増えたり好まれるお酒の種類が変わってきていることもそのデータにはっきりと示されています。

ところでお酒はいつ頃生まれたものでしょうか。人類が飲酒を始めたのは、なんと紀元前7000年にまでさかのぼるそうです。その頃中国では米などの穀物を原料として酒を生産しており、その歴史は稲作など農耕文化の発祥と重なるものでもあります。古代エジプトではピラミッド建設の労働者に対してビールが支給されていたというから驚きです。酒はその精神的作用から人類が初めて手にした向精神薬ともいえるものであり、そのためか神事や祭事に広く使われることとなりました。日本ではお神酒がその代表ともいわれるものですが、次第に人々の間で広く飲まれるものとなり、特別な目的に限られることなくその文化が一般人の生活の一部に定着しました。

さて、我々にとって今では飲酒はある意味生活と一体となって一般的なものとなりましたが、動物の世界ではアルコールとは無縁のままです。ヒトがアルコールなるものに最初に出会ったのが自然現象の産物からであることを考えると、動物でもそのようなアルコールを舐めていたとしても不思議ではありません。しかしヒトが高度に進化するとともにアルコール発酵を利用できるようになったのに対して、動物にとってはそれを利用することはおろか、本能的にただの毒物として避ける対象のままであるのかもしれません。たとえ何らかの偶然で酒の味を覚えたとしても、自然環境中での発酵現象でできたアルコールを舐める程度のことしかできなかったはずです。

ヒトは高度に進化してきた過程で、本能的に毒物を避ける能力をどこかに置き去りにしてきたのかもしれませんが、その代わりアルコールなどの毒物であってもうまく付き合う術を身につけたといえるでしょう。そんなお酒の飲み方も人それぞれ。「酒は飲むべし、飲まるるべからず」と昔から言われてきましたが、飲むからにはアルコールのプラスの効果を最大限に出せる楽しいお酒にしたいものです。アルコールには理性をつかさどる大脳新皮質の働きを抑え、代わって旧皮質の働きを活発にする作用があることから、緊張が解かれリラックスした気分になります。周囲との会話も弾み楽しい時間を作ることができるのは飲酒の最大のメリットといえましょう。適度な飲酒であれば「効果」が大きく表れるものですが、その量を上回ってしまうと様々な弊害が表れてしまうものです。酒の上での失敗談は、お酒好きであればだれもが一つや二つあるのではないでしょうか。昨日、どうやって帰宅したんだろうと思って飲みすぎを反省するくらいならまだかわいいものですが、様々なトラブルを起こしてしまうこともあります。実際に飲酒が絡んだ事件は決して少なくはありません。

アルコールが発がん物質であることは今や明白であるなど、健康面においてもお酒は残念ながらマイナス面を持ち合わせています。幸いなことに人体は優れた解毒機能も持ち合わせているので、多少毒物が入ってきたところで無毒化することができます。もちろん蓄積される毒物もあるので一概には言えませんが、少なくともアルコールに関しては「程度問題」ではないかと思います。当然のことながら飲みすぎには注意しなければいけません。適切な飲酒量について様々な議論がありますが、自分がここまでは飲めると思っている量の半分程度を限界であると心がけておくとちょうど良いのではないかと個人的には感じています。

春節を前にして飲酒量が多くなりがちな季節です。ぜひ楽しく美味しいお酒を飲んで欲しいものです。

Mediport

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