カバーストーリー 2022年4月第3週号「ピークトラム再開」

2022/04/20

陽気のいい香港の週末。感染者数も落ち着いてきた(まだ手放しでは喜べないにせよ)昨今、ピークトレイルに出かけた編集B。そこでうれしい光景が目に飛び込んできたのだ。
スクリーンショット (933)昨年より運航を停止しているピーク・トラムだが、山頂広場で作業員による点検作業中のところに出くわした。まだ運航再開のお知らせはないが、点検作業の様子を見ていると、リニューアルされたトラムは美しく輝き、天井は天窓のように空を仰げる設計になっているではないか。また、以前は120名の定員だった座席を210名へグレードアップさせたその長いボディーにいくばくかの興奮を覚えた。
香港といえばピーク。ピークといえばピーク・トラム。運航を停止している今の香港は、ガラガラのナイトマーケットくらいさびしいものがある。
1888年より運航を開始した同トラム。それ以前、イギリス人高官たちにのみ住居を開放されていたピークでは、人力車に乗って往来を繰り返していた。ピークからの景観の素晴らしさはいうまでもないが、亜熱帯の香港の気候にあまり慣れないイギリス人は、山頂の比較的涼しく過ごしやすい環境を好んだようだ。1880年代当時は40世帯しかなかった住居も、1947年に高所得者のみの条件つきで一般開放され今にいたる。スクリーンショット (931)
居住者以外にも国内外の観光客向けに、ピーク・トラムは代表的な観光シンボルとなった。乗客数は年間で600万人以上を誇るビッグインフラだ。今回のリニューアルで車体が長くなったことによる軌道やけん引システムの改修、ガーデンロード駅や山頂駅での空調や待合室の完備、車いす使用に対するバリアフリー設計など、より一層ピーク観光がしやすくなる。
思うが香港にいる日本人だけでなく、すべての人になんらかのピークへの思い入れがあると思う。香港観光に初めて来たまだ若かったころ、百万ドルの夜景に絶叫して、インスタントカメラのシャッターを幾度となく押した方もいるだろう。
あまりにも有名な観光地なので、一番景色が綺麗な頂上のスポット争いになかなか勝てなかった方もいるだろう。
あのガタガタした急こう配のトラムの中で、自分の体重(重力)が背中に思いっきりのしかかり、木製の座席がやけに固く感じられた方もいるではないか。
トラムを待つ行列があまりにも長いので、あきらめてバスにルート変更をし、くねくね道の道中に顔色を変えてしまった苦い経験を持つ方もいるだろう。
スクリーンショット (932)それらの思い出を、新ピーク・トラムは一体どのように塗り替えていってくれるのだろうか。そして私たちの香港の思い出は、新ピーク・トラムとともにどんな新たなページが加わるのだろうか。
そんなことを考えながらピークトレイルをしていたら、山頂付近の高級住宅街で迷子になってしまった。ベンツやポルシェ、BMWしか通らない私道で、晴れ渡る青い空と美しすぎる香港の街並みに深いため息をつくばかりであった。ピークトレイル時はルートの把握をしっかり行うことをおすすめする。(PPW編集部 B)

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