僕の香妻交際日記 第68回 なぜ、我が家は90分食べ放題を攻略できなかったのか?

2021/12/08

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 娘が幼稚園に通うようになり、毎月の教育費もなかなかの金額なため、父としてはいよいよ節約生活を余儀なくされている今日この頃。最初は窮屈に感じられたそんな生活も、やっているうちにだんだんと自身の節約感覚が研ぎ澄まされてきて、鶏肉はどのスーパーでいつ買ったら一番お得なのか、洗剤やティッシュはどこの薬局で買えば一番安いのかなどのデータが自然と頭の中に蓄積されている。

財布に優しいお得情報が蓄積されていく一方で、財布に良くないNG行動もだんだんと分かってきた。その一つは妻と娘をドン・キホーテや759阿信屋、12ドルショップなどのディスカウント店に連れていくこと。彼女たちはそれらのお店で実生活にまったく必要のないもの(例えばヘアーマッサージャーとかリカちゃんとかゼリーとか)を、あたかも必需品であるかのように購入するので、そういう彼女たちの姿を見ていると歯がゆいことこの上ない。リカちゃんに支払ったその169ドルがあれば火曜日のHKTVMallでポーランド産鶏肉1羽を4羽購入してもおつりが来るのに…と当然私は考えるのだが、当然彼女たちにそのような考えはない。

日常の食材の相場を知った節約家の私にとっては、「外食」もまた主要なNG行動の一つとなっており、特にしゃぶしゃぶ食べ放題とかビュッフェにだけは絶対に行ってはいけないと思っている。食べ放題で使う一人400ドルのお金があるなら、その400ドル片手に大戸屋に行って家族3人で好きなものを頼んだほうがまだましではないか。
それに食べ放題とは肉をどれだけ胃に詰め込んだかが勝負のポイントなので、そのほかの具材を煮る時間、それらの具材に与える胃袋のスペースは最小限に保たなければならない。つまり食べ放題プランで野菜とか健康とか考えている暇なんてないのだ。そういった肉重視の戦略を取ってしても最終的に店側に利益が出てしまう。そういうシビアな世界なので、本来は女性や子供を連れて挑む場所ではないのだ。

そんなシビアな食べ放題の勝負に、先日妻が久々に挑戦してみたいなんて言うから、あまりに唐突だったので私もついうっかり二つ返事で承諾してしまった。
ここで「うっかり」と使ったのは、私には家族で特にしゃぶしゃぶ食べ放題に行きたくない理由があったことを失念していたからだ。鍋料理となると、妻が鍋奉行をするのだ。
その日も席に着くや否や妻が菜箸を握り、野菜から順番に鍋に入れ始めた。そして海鮮物。野菜がなくなったので追加。そして野菜が二巡したところでようやく肉を投入する。肉を食べようとするころにはもう腹八分。90分あった時間も気が付けば残り10分。妻が肉を最初に入れない理由はスープがあくだらけになるからだと。確かに間違ってはいない、しかし90分一本勝負の食べ放題でそんなキレイごとを言っている場合か…久々の食べ放題だったため、妻がそういう律儀な旅館の女将のような菜箸遣いであったことを私もついうっかり忘れていた。

案の定、妻による素晴らしい食材のローテーションのその横で、娘はアイスを食べたいと届かない願いを叫び続けた。私は途中何度かそろそろ肉でも…とアプローチをを試みたがその願いも届かなかった。我が家の鍋奉行は今宵も健在だった。それでも最後には娘にアイスを取ってきてくれたし、私に残り5分でようやく肉2皿を頼ませてくれた。会計は998ドルだった。
そのあと、ほぼ野菜とエビで膨れた腹を癒すため、ドンキに。エルサ好きな娘がティンカーベルの人形を買っていた。妻は4000円くらいする謎のフェイスクリームを買っていた。私は当然何も買わなかった。あとは何を買っていたのか覚えていないが会計はかろうじて1000ドルを免れたのだけは覚えている。それでも、妻も娘も終始「ドンドンドン、ドンキー…」と口ずさみながら楽しそうだった。私がランチを手作り弁当にすることで節約してきた数千ドルはその週末で帳消しとなった。

貯蓄とは「信頼」と同様に積み重ねるのに時間は掛かるが崩れる時は一瞬である。でも、私には一つ分かったことがある。私はなぜ節約をしているのか。もちろん教育費や生活費のためというのは間違いないが、何よりも家族の笑顔を見るためなんだと。ドンキのペンギンマスコットと一緒に写真を撮る彼女たちを見ながら私はそう確信した。


ルーシー龍ルーシー龍(りゅう)

東京都出身。香港歴8年。世の中のオヤジの威厳を取り戻すため愛娘に甘い妻と日々衝突を繰り返しながら子育てに奮闘中。

 

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