フリーランス特集【番外編】

2020/06/10

香港公立病院の手術成功率を押し上げた
日本人医師 藤川 拓也

心臓外科医として2017年2月より香港で活躍する藤川 拓也医師に
香港の医療や、プライベートなどのお話しを伺った特別インタビュー

 

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PPW:まずは藤川さんの経歴を教えてください。
藤川医師:はい。私は仙台の東北大学医学部を卒業して、社会医療法人財団石心会 川崎幸病院で
6年間医療に従事してきました。川崎幸病院では年間で300件以上の心臓の手術を行っていました。私は大動脈置換術を得意とします。

 心臓外科医と言っても色々なキャリアの道があったのですが、たまたま国際的な医師の交流組織で知り合いになった香港人医師から2016年に、香港の公立病院で大動脈手術の指導をしてほしいといったオファーを頂く事になります。もともと前の上司から、「どこか適当に留学してこい」という指示を受けていました。ベルギーにいる尊敬する大動脈手術の先生のところへ行くことを決めていましたが、友人からの立っての頼みということがあり、ベルギー行きを取りやめ、香港にきました。

 

PPW:そして、2017年に香港沙田にある公立病院Prince of Wales Hospitalへ来られたんですね?来たばかりの時はどういった事が大変でしたか?
藤川医師:まずは私にとっても、周りにとっても前例がないという事ですね。ビザひとつとっても、【日本の医師免許で香港で手術を許される】人間が今までにいなかったので、イミグレ側も困っていました。(笑) 何もかもが手探りでひとつずつ解決する日々でした。病院内の医療に関しても、今までにない手術方法や理論を私が持ち込んでくるものだから、現場からは半信半疑というか、本当にその通りにやっていいのか?みたいな雰囲気がありましね。言葉の問題もありました。ただ、それを患者さんに対する姿勢だったり、手術前後の対応だったり、手術の成功率という実績と実力によって、
1年目、2年目と徐々に香港人医師・看護師たちの信頼・信用を勝ち取ってきたと思います。

 

IMG_4323PPW:藤川さんは自他共に認める【仕事狂】だとか?
藤川医師:何ミリの世界では、技術だけではなく、心の持ちようというか姿勢がとても大切だと思っています。これだけ考えて、これだけ準備をしっかりして、こういう可能性があって、その時はこういう対応をしよう。全ての事・全ての可能性を極限まで突き詰めて手術に挑みます。逆に言うと極限まで自分を追い込むことによって、自分を安心させているのです。ですので日本にいた時は、
3日間帰宅せず病院に張り込むといった事は日常茶飯事です。そういった姿勢を3年間貫いてきたら、私のチームの香港人たちも変わってきたのです。幸いにもチームの仲間は元々気質が日本人に通じるものがあったからこそ、できたことかと思います。

 準備という点でいうと、私は手術時に使用する手袋の厚さや、クリップの挟む圧力の強弱まで気を配ります。日本で使っていたものと全く違う素材の糸や人工血管を使わなくてはいけないことも、苦労の一つでした。

 

PPW:実際に藤川さんが香港に来られてからは手術の成功率が格段に上がったと伺いました。
藤川医師:はい。おかげさまで、入職時は
50%の成功率だった下行・胸腹部大動脈置換術が、今では97%になりました。当初からのオファーでは、私の技術を香港人医師に教えて、私ではなくても手術の成功率をあげる事が目的だったので、今後も後輩育成に力を入れていきたいと思っています。

 

DSC00186_02PPW:容体が悪化して急に病院に呼び出されたりすることも多々あると聞きましたが、お休みの日などプライベートの時はどんな感じですか?
藤川医師:そうですねぇ。食・芸術・自然が好きなので、前もって休みが取れると分かっている時は、キャンピング用品とお酒を抱えて、誰もいない香港の山奥に行ってアウトドア料理を愉しんだり、芸術鑑賞をしたりしています。あとは、急にパッと仕事が終わる時なんかは、沙田からバス
1本で行けるお店に顔を出します。PPWさんに良く掲載されている中環のケンコー拉麺さんや、尖沙咀の酔易ショさんなんかにも良く出没させてもらっています。同年代の77年から79年生まれの人たちが集まる同好会【78会】なんかも、医療界以外の人たちのお話しが聞ける新鮮な場所ですね。

 

PPW:以前、そういった酒場でお見かけした時にお話しをされていたコロナウイルス蔓延の話題も非常に興味深い物がありました。イタリアは人口1000人に対して病院のベッドが3.2床しかないが、日本は1000人に対して13.1床もあるなんて、私たち素人は知りもしませんでした。
藤川医師:はい。それらに関しては
2018年度のOECDデータに基づくものであり、私は感染症が専門ではないのでここでは割愛させていただきますが、こんな時だからこそ私の知識や経験が少しでも香港華南の日系社会を含めたすべての方々にお役に立てたらと思っています。私の身分はあくまで香港政府に雇われている公務員なので、香港の患者さんに心臓の手術をする事を主務とします。ただ、個人的に出来る範囲で、そういった酒場でたまたまお隣になられた方がもし海外にいて、健康面・医療面で困っている事があれば、お話しを聞くくらいはできるのかなと。ですので、街で私を見かけたら是非気兼ねなくお声がけして欲しいですね。

 

PPW:ありがとうございました。今後も医療の為にがんばってください。

 


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