中国法律コラム33「定年退職後の再雇用について」広東盛唐法律事務所
今回のニュースレターでは、中国における定年退職後の再雇用における次の4つのポイントについて解説させていただきます。
※1再雇用契約後、契約満了時に経済補償金は発生するか?
※2再雇用時の報酬待遇を現在より減額することはできるか?
※3年次有給休暇を支給しなければならないか?
※4その他の注意事項
一、法律関係及び経済補償金について
(1)従業員が定年退職年齢に達したとき、会社は労働関係を一方的に終了することがでます。このとき、経済補償金を支払う必要はありません。
(2)定年退職後の従業員を再雇用したい場合、従業員と労務契約を締結することになります。この場合の法律関係は、労働契約関係ではなく、労務契約関係です。したがいまして、労働契約は適用されず、民法、契約法などの一般法令が適用されることになります。なお、労務契約の期間は法律に定めがないため、当事者が自由に約定することができます。
(3)労務関係は、労働関連法令の適用を受けないため、契約解除の時に補償金を支払うという特約のない限り、労務契約が期間満了もしくは解除となったときに、経済補償金を支払う必要はありません。
二、労務契約における報酬待遇は現在の基準を下回っても良いか?
前述のとおり、定年退職後の従業員を再雇用するとき、締結する契約は労務契約です。労務契約においては、契約期間、報酬、ボーナス、勤怠、福利待遇などは当事者間で自由に約定することができます。したがいまして、従業員と協議により合意できれば、報酬待遇基準を定年退職前よりも引き下げることができます。
三、年次有給休暇について
1、労務契約においては、労働関連法令に定められている年次有給休暇の規定は適用されません。ただし、一般の従業員との公平性を考慮して、毎年一定日数の有給休暇を与えることもできます。
2、年次有給休暇のほか、勤怠管理、年度末のボーナス、インセンティブ、福利待遇なども、労務契約において約定できます。
四、その他の注意事項
1、定年退職手続きと労働契約終了手続きについて
従業員が定年退職年齢を迎えたとき、従業員の定年退職手続きを適時に行うべきです。また、労働契約が定年により終了することを事前に本人に通知し、従業員と労働契約終了の手続きをすべきです。
2、労務関係存続期間については、商業保険に付保することが望ましい。
定年退職後、従業員は社会保険に加入することができなくなります。つまり、定年退職後に再雇用された従業員が労働災害に遭ったとき、労災待遇を享受することはできません。したがいまして、再雇用された従業員のために、商業保険に付保し、労働災害のリスクをヘッジすることが望ましいといえます。
五、まとめ
1、定年退職した従業員を再雇用したい場合、当該従業員と労務契約を締結することになります。この場合の法律関係は、労働関係ではなく、労務関係です。
2、労務関係は、労働関連法令の適用を受けません。したがいまして、労務契約が期間満了又は解除となったとき、経済補償金を支払う必要はありません。
3、労務契約において、報酬基準を現在よりも引き下げることに、法的な問題はありません。
4、定年退職後、従業員は社会保険に加入することができなくなります。したがいまして、再雇用者が労働災害に遭うリスクに備えるために、商業保険に付保することが望ましいといえます。
以上
広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com