中国法律コラム48 「新型コロナウイルス感染症の影響による減給及び人員削減について」
今月号のコラムでは、新型コロナウイルス感染症の拡大、経営への影響による従業員の減給及び人員削減に関する問題について纏めました。
一 減給について
減給措置を実施する場合、原則として、従業員と個別に面談を行い、それぞれの従業員に減給後の賃金水準、及び減給措置の継続期間等を確認してもらうことになります。協議により合意を達成できれば、従業員と書面の覚書を締結し、減給の委細を書面形式で確定させることが望ましいです。
実務においては、会社が従業員と協議を持っても合意を達成することができない場合は、減給を一方的に断行するというケースも多々あります。
この場合、減給対象の従業員に減給通知を送付します。同時に、定められた期間内に明確な返事をするよう求めることがベターです。減給を拒否すると明示した従業員とは再度話し合いの場を設けます。この際、従業員が減給を受け入れるよう促すために、減給に応じない場合は一時帰休を適用するとしてプレッシャーをかけることも検討できます。
一部の従業員が頑として会社の減給を受け入れないことも懸念されます。この場合、まずは、従業員は減額分の支払いを要求してくることが考えられます。従業員が労働部門に告発した場合、労働局から指導されたり、行政罰(罰金)が科される恐れがあります。次に、賃金が満額支給されないことを理由として労働契約の解除を提起し、かつ、その勤続年数に応じて経済補償金を支払うよう求めてくることが考えられます。労働契約法に基づき、従業員のこの訴えは法律上成立します。
なお、従業員が明確に同意の意を表示しないとしても、1か月以上の時間が経過すれば、従業員がこれを黙認したものとみなされ、減給が有効となります。
二 出勤時間の短縮を行い、減給する場合
会社が従業員の出勤時間を短縮して減給する場合は、従業員と協議により新たな勤務体系・賃金基準を確定する必要があります。会社が一方的に出勤時間を短縮し、減給する場合、従業員は会社が賃金満額を支払っていないと主張し、会社に減額分の支給を求めることができるほか、労働契約の解除を提起し、かつ、1N基準の経済補償金の支払を求めることもできます。
三 希望退職者を募る場合
希望退職者を募るという方法は、法律上は「合意解除」に該当します。この場合、法定の経済補償金の基準は最低でも1Nです。小生の経験によりますと、希望退職者を募る場合、通常、従業員が経済補償金の上乗せを求めるケースが多く見受けられます。まずはN+1の補償基準から交渉をスタートさせて、会社が受け入れられる範囲で落としどころを見つけるよう助言します。
四 整理解雇の場合
労働契約法で定められている整理解雇とは、「削減数が20人以上又は20人に満たないが従業員総数の10%を超える場合、30日前までに工会に状況を説明し、工会の意見を聴取したうえで、削減案を労働部門に届け出て承認を得なければならない」というものです。しかし、この労働局の承認を得ることが実務上は困難です。
整理解雇の際、優先的に雇用を継続する必要のある人員として、「比較的長期間の固定期間労働契約を締結している者」、「無固定期間労働契約を締結している者」、「世帯に他の就業者がおらず、扶養すべき老人又は未成年者がいる者」が挙げられています。つまり、労働部門の障害により、会社が本当に削減したい賃金の高く勤続年数が長い従業員を切れないという問題点が生じやすいといえます。
人員削減案が労働部門の承認を得た場合、法的には、削減対象の従業員に経済補償金1Nを支払えば足ります。
なお、整理解雇の条件は、「生産経営に重大な困難が生じた」場合とされています。実務においては、生産経営に重大な困難が生じたことを立証するには、約3年間連続して赤字であることが条件とされているケースが多いように思います。したがいまして、コロナウイルスによる影響が生じてからまだあまり期間が経過していないことからしても、労働部門が整理解雇に同意しないことが懸念されます。
以 上
広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽徳洋 Roy Odake
行政書士
東京商工会議所認定
ビジネス法務エグゼクティブ
Tel:(86)755-8328-3652
E-mail:odake@yamatolaw.com
中国の法律事務所で10年以上の実務経験を有しています。
得意分野は、労働法・会社法・契約法です。
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九州出身、趣味は卓球です。
深圳市で日本人卓球クラブの代表を勤めております。
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