中国法律コラム19「保税輸入材料を用いた製品を中国国内で販売する場合の商流について」広東盛唐法律事務所

2017/06/20

今回のコラムでも、今月クライアントから問い合わせのあった興味深い問題について、ご紹介させていただきます。弊所のクライアントは、製品の組立加工を行い、その完成品を中国大陸で内販していますが、サプライヤーの事情でどうしても一部の部品を保税輸入で購買しなければならず、そのために直接に中国国内で販売することができないという問題が生じています。今回は、この問題の解決方法について、みなさんと共有したいと思います。

一、背景
•A社は、進料加工のスキームにて材料を輸入し、完成品に組み立てる。この製品に使用される材料の70%は保税で輸入されたものである。その他の30%の材料は中国国内で購買したものである。
•この完成品の販売先は中国大陸内の顧客であるため、どのような商流で当該完成品を中国大陸内の顧客に引き渡すことができるか、適法な方法を検討中である。

二、分析意見
A社のビジネスモデルにおいて、完成品を中国国内で販売するためには、次の4つの方法を検討することができます。
•一般貿易により材料を輸入する方法
•保税輸入材料の関税及び増値税を追納する方法
•完成品を一度輸出して、再輸入した後に販売する方法
•保税区を利用し輸出、再輸入した後に販売する方法

2.1一般貿易により材料を輸入するスキーム
このスキームにおいては、進料加工で保税輸入していた材料を一般貿易での輸入に変更することになります。つまり、材料を輸入するとき、一般貿易として申告し関税と増値税を納付するということです。この場合、組立完了後、直接に国内で販売をすることができ、当然ながら完成品を輸出して再輸入する必要はありません。

このスキームの前提は、材料を一般貿易で輸入することです。当職らの経験によりますと、多くの加工貿易スキームにおいて、サプライヤーが来料加工又は進料加工により、材料を保税輸入しているため、サプライヤーの都合により一般貿易に変更することが難しいケースがあります。

 2.2保税材料の輸入関税を追納し、中国国内で完成品を販売するスキーム
このスキームは、材料を進料加工により保税で輸入しますが、保税輸入材料について関税及び増値税を追納することによって、一般貿易輸入と実質的に同等なものへと変更するということです。この場合、税関の管理監督が解除され、完成品を直接に中国国内で販売することができます。

このスキームは理論上は実行可能ですが、材料を保税輸入した後に輸入関税及び増値税を追納することは、税関の人員が現場調査をしたり、税関の審査認可が必要となり、税関のマンパワーが必要になるため、実行可能性が疑問視されています。また、担当の税関担当者の不作為などにより、税関の審査に長い時間がかかる、どのくらいの期間を要するかが不明確であるというデメリットがあります。したがいまして、販売周期が短い場合、顧客の求める納期が短期間である場合などは、このスキームの実行は難しいと考えます。

2.3輸出後再輸入するスキーム
このスキームにおいては、材料は進料加工で輸入するため保税となり、税関の管理監督を受けることになります。現行の税関の規定によりますと、保税材料を使用した製品は生産完了後、必ず輸出し、かつ、税関手冊の核銷をしなければなります。輸出時には完成品に使用された保税材料の数量が合わなければなりません。つまり、このスキームを使用する場合には、完成品は必ず輸出して、再度一般貿易で完成品を輸入して、その後で中国国内で販売をすることとなります。

三、結論
A社にとって、前述のスキームはどれも検討することができますが、関税及び増値税の追納の実務対応が難しいことに鑑みて、中国国内の保税区を利用して、輸出及び再輸入をすることが、物流コストや納期の面からも適当であると考えます。もっとも、材料の購買を保税取引から一般貿易に変更できるのであれば、完成品を保税区を使用して輸出、再輸入する手続きを省けるため、より簡便であると考えます。

盛唐法律事務所

広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

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