尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.42

2021/04/14

独占禁止法における独占合意

 同業者が集まる懇親会で、「今度、みんなで一斉に値上げしましょう。」ということになりました。このような行為は中国で許されるのでしょうか。

 

競争関係にある事業者間での合意(水平的合意)

 「独占禁止法」第13条第1項に基づき、競争関係にある会社同士が、以下のような独占合意をすることは禁止されています。

1)商品の価格を固定、変更する合意(価格カルテル)
2)商品の生産・販売数量を制限する合意(生産・販売数量が減れば必然的に価格が上昇するため)
3)販売市場・原材料調達市場を分ける合意(会社同士で、商品の販売や原材料の調達について地域、顧客、製品等の棲み分け等を行い、競争を制限する合意)
4)新技術・新設備の購入を制限し、又は新技術・新製品の開発を制限する合意(新しい技術、設備、製品はコストを下げ、生産効率を上げ、例えば価格が下がる等消費者に利益をもたらすため)
5)共同して取引を拒絶する合意(共同してライバル会社、供給業者、販売業者との取引を行なわない等の合意)
6)国務院独占禁止法執行機構が認定するその他の独占合意

 「独占合意行為禁止の暫定規定」第5条、第6条によれば、「その他の協力(协同)行為」とは、会社同士で明確に合意又は決定をしていないが、実際に協調一致の行為が存在することをいいます。

 例えば、業界内の懇談会で値上げの話になり、明確な態度を示さなかったものの、懇談会で聞いた内容に沿って値上げしたとします。この場合、独占合意とみなされ違法になる可能性があります。

 

取引相手との合意(垂直的合意)

1)取引相手との合意は、生産者と卸売業者の間、卸売業者と小売業者の間等の合意です。取引相手との間では、以下のような独占合意が禁止されています(「独占禁止法」第14条)。

)再販売価格の維持(第三者に対する再販売価格の固定、最低価格の限定)
例えば、卸売業者と小売業者が「消費者に商品を何元で売る」と合意するような場合です。また「何元以下で売ってはならない」という合意も同様です。
2)国務院独占禁止法執行機構が認定するその他の独占合意

 

罰則

 独占合意には、以下のような非常に重い罰則が定められています(「独占禁止法」第46条)。

・独占合意を行い実施した場合:違法行為の停止命令、違法所得の没収、前年度売上額の1~10%の制裁金
・独占合意はしたが、これを実施していない場合:50万元以下の制裁金

 

罰則を回避する方法

 自発的に独占合意があった状況を報告し、かつ重要な証拠を提出した会社には、処罰を軽減したり、免除したりする制度があります。但し、当局が情状を酌量して減免できるという制度であり、報告及び重要証拠の提出者は必ず減免されるというわけではありません。

 また、違反行為の調査対象となった会社は、調査中止申請を提出し、当局が認可した期限内に具体的な措置を講じ、かかる違反行為の影響を消去することを承諾することができます。

 例えば、不当に高い値段で販売して価格を釣り上げたり、逆に不当に安い値段で販売して、小規模業者にダメージを与えるような行為です。

 


zhuojian

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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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