中国法律コラム46「コロナウイルスが賃金支払いに与えた影響」

2020/02/26

houritu

〜 コロナウイルスが賃金支払いに与えた影響 〜

 みなさんこんにちは、日本人法律家の大嶽です。今回はコロナウイルスが賃金支払いに対して与えた影響について簡潔にわかりやすく解説します。

 

一、2/3~2/9の賃金について
 新型コロナウイルスによる疫病予防のため、広東省政府は行政文書を公布し、広東省内の企業の業務再開日を2020年2月9日24時以降とするよう要求しました。この期間においては、疫病予防のために緊急な必要のある場合を除いて、一般企業は集団的な業務再開(従業員を在宅勤務させることは許容範囲内)を手配してはならないとされています。これに反する場合、行政罰、刑事罰などの法的責任が生じるリスクがございます。

 現時点での法律政策に照らしますと、2月3日から7日の期間中に従業員に業務を手配した場合、通常出勤時と同様の賃金を支給すれば足ります。

 企業が8日、9日に従業員に業務を手配した場合、8日と9日は休日でしたので(土日)、振替休日を手配するか、又は200%の基準で残業代を支給しなければなりません。

 前述の賃金基準は、法律政策で定められている最低基準でございます。2月3日から9日までに勤務した従業員には、賃金の上乗せも検討されうるべきかと思います。(この期間においては、出勤をしなくても、同様の賃金がもらえるため、不平等感が産まれると考えます)実際に、この期間中に勤務した従業員に対し、200%の基準で賃金を支給している企業もございます。

 

二、2/10以降の湖北籍又は湖北に在留していた従業員の賃金について
①現在、湖北省の交通規制により、湖北籍又は湖北省に在留していた従業員が職場に戻れなくなっています。現時点での法律政策に照らしますと、これらの従業員が2月10日以降も出勤できない場合、従業員の原因によらない事由による出勤不能とみなされます。

 この場合、企業は2月10日から3月9日までの期間において(1か月間)、通常出勤時と同様の賃金基準で賃金を支給しなければなりません。
 3月10日以降(1か月経過後)も依然として職場に復帰できない場合、企業は3月10日以降、賃金ではなく、現地の最低賃金基準の80%の基準で生活費を支払うことができます。
この期間において、湖北省の交通規制解除の情報をこまめに確認し、交通規制の解除後、関係する従業員に直ちに職場復帰するよう求めてください。職場復帰を拒否した従業員について、規則制度に則り処分することができます。

②会社所在地に留まっている湖北籍の従業員に対しては、強制隔離観察期間(通常14日)について、現時点での法律政策に照らすと、通常出勤時と同様の賃金基準で賃金を支給しなければなりません。

 従業員が新型コロナウイルス感染と確定されたか、又は感染の疑いがある場合、隔離期間において、通常出勤時と同様の賃金基準で賃金を支給しなければなりません。隔離期間が満了してからも仕事を休んで治療を受ける必要がある従業員は、病気休暇として処理し、病気休暇賃金を支給することになります。

③前述の理由で始業日までに職場復帰できない従業員に対して、年次有給休暇、企業福利休暇を優先的に手配するか、又は振替休日を前倒しで手配することも検討できます。この場合、従業員と協議により合意することが必要になります。また、従業員と協議により合意することができれば、業務停止期間中の新たな賃金基準(最低賃金基準の80%を下回ってはならない)を定めることもできます。

 

三、2/10の業務再開後に湖北省以外から戻って来れない従業員の賃金について
 湖北省以外の地区の交通規制が原因で職場に復帰できない従業員について、現地政府の公布した公告文書を提出するよう求め、確認することができます。政府の規制が原因で始業日までに戻って来られないことが確認できた場合、2月10日から3月9日までの期間においては、前述のとおり、通常出勤時と同様の賃金基準で賃金を支給することになります。また、3月10日以降(1か月経過後)は前述の生活費を支給しなければなりません(最低賃金基準の80%を下回ってはならない)。なお、これらの従業員に対し、職場復帰するまで年次有給休暇、企業福利休暇を消化するか、振替休日の前倒しで対応するか、又は私用休暇で処理するよう求めることもできます。政府の発行した相応の証明文書を提出できない従業員に対しては、直ちに職場に戻るよう通達要求することができます。提出できない従業員に対しては、規則制度に則り厳格に処罰することができます。規則制度に則り処罰することができる。

 

以  上

 

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ddd広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問

大嶽徳洋  Roy Odake

行政書士
東京商工会議所認定
ビジネス法務エグゼクティブ
Tel:(86)755-8328-3652
E-mail:odake@yamatolaw.com

中国の法律事務所で10年以上の実務経験を有しています。
得意分野は、労働法・会社法・契約法です。
法律関係でお悩みのことがありましたら、お気軽にご連絡ください。

九州出身、趣味は卓球です。
深圳市で日本人卓球クラブの代表を勤めております。
卓球が好きな方は、ぜひお気軽にお声掛けください。
部活経験者を特に歓迎しています。

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