教えて!総経理!第8回【SBI Securities (Hong Kong) Limited 草野 潤氏】

2023/03/08

“マグマはまだ固まっていない-”
世界の金融界へ挑む日本最大手ネット証券会社soukeiri

SBI Securities (Hong Kong) Limited
CEO  草野 潤氏

日本最大手のインターネット総合証券会社で、国内・外国株式、債券、投資信託、FXなど幅広い金融商品を扱う株式会社SBI証券。その子会社であるSBI Securities(Hong Kong)Limited(以下SBI香港)は、機関投資家と呼ばれるプロの運用会社に対して、日本株式の投資情報を提供するためのコーポレートアクセス業務などを担っている。今回は同社のCEO・草野潤氏にお話を伺った。

Q:事業内容についてお聞かせください。
A:SBI香港は、株式会社SBI証券の現地法人として2015年に誕生しました。日本のSBI証券は、個人投資家を相手としたインターネットによるビジネスを中核としており、現在、国内株式個人取引シェアNo.1となっています。
一方、SBI香港では機関投資家のみを相手に取引を行っており、香港にオフィスのあるヘッジファンドや投資運用会社を相手に、SBI香港を通して日本株を買っていただくため、日本にいる企業リサーチアナリストと機関投資家を繋ぐ仕事をしています。現在、海外では香港以外にシンガポールとロンドンに拠点がありますが、日本のSBIとは違い個人投資家の方へのサービスは行っていないので、海外在住の方にはあまり馴染みがないかも知れませんね。IMG_8343のコピー

Q:貴社の強みは何ですか?
A:どこを通して日本株を買っても基本的に手数料は変わりません。また我々は香港進出7年目と、業界内ではかなり後発です。機関投資家が、リサーチ力や小回りの効く営業力など各社それぞれ強みを持つ大手証券会社と既に取引を行っているなか、SBI香港がそこに食い込めている理由のひとつは、我々が絶対的な日本の個人投資家のフローを持っていることにあります。またSBIグループでは、将来的に成長が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業など、未上場の新興企業へ投資するベンチャーキャピタル事業を積極的に展開してきました。そこから育ち最近上場したような非常に小さな銘柄をご紹介できる点も、SBI香港の強みであると言えます。

Q:草野さんの経歴をお聞かせください。
A:SBI証券に入社したのは、今からまだ3年前の2020年なんです。1986年に新卒入社したのは日本の大手証券会社でしたが、当時はちょうどバブルが始まった頃で、3~4年は営業マンとして寝る暇もないほど働きましたね。その後1年間のアメリカ留学を終えて、組織を変えながらも約15年間、スイス、ドイツ、ロンドンなどヨーロッパ各地を渡り歩きました。リーマンショック後に4年ほど東京にいましたが、2016年、当時在籍していた会社からの辞令により香港に着任しました。その後、縁があり現在のSBI香港にCEOとして就任し、今に至ります。

Q:長年のヨーロッパ生活から一転して、香港はいかがでしたか?
A:正直、アジア自体に全く興味がなかったんです。香港は昔父親が赴任していた土地でもあり、当時遊びにこないかと誘われたこともあったのですが、その時も断ったくらい無秩序なイメージに何となく苦手意識が働いて…。でもいざ来港してみると、第一印象はものすごく良かったことを覚えています。私は1962年生まれの東京育ちなのですが、子どものころは都内といえどもまだ草っぱらが残っているような時代です。香港にはその頃に戻ったような懐かしさを感じましたし、人との距離感が近いことも好印象でした。今まで駐在してきた経験からすると、スイス人は誰とでも仲良くなり、ドイツ人は割合個人主義、香港人は明るく楽しい人が多いというイメージです。

Q:取締役という立場で大切にされていることは何ですか?
A:トップとして私がとにかく大切にしているのは、人材です。実は以前、別の会社で働いていた際に、業績悪化で部下を切らなくてはいけなくなったことがありました。組織としては仕方がないと苦渋の決断で何人も辞めてもらったのですが、その後本社から「日本に良いポジションを用意したから」と言われたんです。その時、一緒に働いてきた仲間を捨て自分だけ偉くなって帰国するなんてできないと思い、その会社を去りました。その点、SBIは本社の社長とも何でも相談できるような間柄で、距離の近さを感じる社風ですし、私自身もスタッフの働きやすさや健康をいつも第一に考えています。転職してキャリアアップすることが当たり前の香港では珍しいことのようですが、私が着任してからほぼ全てのスタッフが辞めていません。先日香港人スタッフに「あなたがCEOで良かった」と言われ、改めて一緒に働く仲間を大切にすることが使命だと感じました。IMG_8285

Q:今まで様々な国の方たちとお仕事をされてきた草野さんですが、これからを生きるビジネスマンに必要なことはどのようなことだと思いますか?
A:客観的な分析力だと思います。様々な情報が周りに溢れている今の時代、何が正しいのか判断が難しいこともありますよね。マスコミの偏向報道や他人の意見に流されることなく、自分が納得する方向を向くこと、バイアスをかけず本質を見抜くことがより求められてくると思います。

Q:今後の展望をお聞かせください。
A:現在は17名程度の少数精鋭で運営していますが、今後は小さな日本銘柄も紹介できるという我々の強みを活かしながら、さらに規模を拡大していきたいと考えています。昨年60歳になったので一般的には定年ともいえる歳ですが、現在のSBI香港は、マグマがまだ固まっていないような状態なので、これからも私にはやれることがありそうです。


logoSBI Securities (Hong Kong) Limited
www.sbisec.com.hk


 

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