教えて!総経理!第9回【JTB(Hong Kong)Ltd. 増本 斉氏】

2023/03/22

面白いことを仕掛け続けていく
急速に伸びる旅行の需要に
日系ならではのホスピタリティを忘れずにIMG_4076-2 JTB(Hong Kong)Ltd.
董事総経理 増本 斉氏

日本最大手旅行会社として誰もがその名を知るJTB。だがそんな同社にもデモやコロナの大打撃は容赦なくのしかかり、不穏な影を投げかけた。そして全世界で往来が再開した今、旅行・観光業は急激に膨れ上がる需要に、必死で対応を迫られている。人員削減や事業縮小をしたコロナ禍から、どのように回復し利益を生み出していくか。今まさに正念場と言える旅行業界だが、この道33年のプロは現状をどう俯瞰しているのだろうか。

Q:ご経歴をお聞かせください。
A:1991年の入社以降、15年近く法人営業を担当してまいりました。2005年より新規事業セクションに異動になり、企業向けの販売プロモーションをお手伝いする事業に従事。
転機は2008年。企業向け営業をするにあたって、グローバル市場へ対応の必要性を実感し、以降の自身の指針として掲げてまいりました。その後、社内で小さなグローバルプロジェクトを立ち上げ、2010年に上海万博の中で弊社独自のイベントを企画・実行しました。この3ヶ月の長期滞在が私にとって初の海外体験となりました。
2011年には、本社プロジェクトメンバーとしてシンガポールのアジアパシフィック本社へ異動。以降シンガポールと日本との往来を繰り返しながら、21年2月にJTB香港社長として着任し、現在に至ります。

Q:旅行業にとってデモやコロナは大打撃だったと思いますが、当時の様子を教えてください。
A:そうですね、我々の事業は大きく、インバウンド事業とアウトバウンド事業という2つの柱に分かれます。弊社の場合は、日本からのお客様をお迎えしてホテルや送迎などをアレンジする事業をインバウンド、一方で香港にある企業や個人のお客様の日本旅行のお手伝いをする事業をアウトバウンドと呼んでいます。
2019年に始まったデモにより、同年下半期におけるインバウンドは壊滅的な影響を受けることとなりました。通常では、往来が再開することによりネガティブなイメージが払拭されますが、そのままコロナに突入してしまい往来が断絶され、3年以上に渡り、売上が伸びない時期を経験しました。
弊社にとって、そして、私にとっても苦渋の決断となったのが22年。諸外国がウィズコロナへシフトする中、香港は依然として旅客の入境を禁止していましたので、いよいよ厳しい内部改革をせざるを得ませんでした。具体的には、バス部門会社の清算や一部事業部門からの撤退、そしてスタッフ数についても大幅な整理を行いました。現在残ってくれている社員、また状況を理解して会社を去ってくれた社員には感謝の気持ちしかありません。

Q:そのような苦境下で始めた新事業があると伺いました。
A:はい、我々が着目したのは、人流は途絶えた一方、需要が伸びつつある物流、ひいては日本に行くことのできない香港人の日本熱に応えるべく、日本産食品のプロモーションや、訪日インバウンド事業の強化でした。おかげさまで、香港にいながらも日本を体験できると、多くの香港の方に喜んでいただき、確かな実績にもつながりました。

Q:今後、旅行業界で注目されることは何ですか?
A:短中期の視点では「エコに配慮した旅行」や、「仮想現実(VR技術)を活用した新たな旅行スタイル」など、様々な注目のキーワードはありますが、喫緊ではやはり「コロナからの旅行業界の復活の仕方」が最注目です。
香港においても昨年末から想像以上に早いスピードで水際対策が緩和され、世界中でほぼ往来が可能となり、コロナ以前に戻ったような状態になりつつあります。このように、旅行需要は急激に回復している一方で、需要に対する供給の回復が急務となっています。コロナの際に削減した人手不足が要因となって、航空便もホテルもバスも手配が厳しくなっていたり、または手配できても非常に高額になっていたりと、取り組むべき様々な課題が目の前にあります。新たに人員を確保したとしても、トレーニング期間が必要になるなど、コロナ前に戻るのはまだまだこれからと言えるでしょう。このような傾向がいつ落ち着きを見せて、本当の意味でのノーマル時期に入れるのか我々もできる限りの努力をしてまいります。

Q:貴社の強みを教えてください。
A:弊社はおかげさまで日本最大手旅行会社の香港支店として、ネットワーク規模・サービスの質ともに、日本と変わらない対応を強みとしております。日本からいらっしゃるお客様には、安心・安全かつ快適な香港の旅をご提供しますし、香港から日本へ団体旅行へ行かれる企業様にも、日系ならではのホスピタリティサービスをモットーとしています。

Q:香港でのビジネスの難しさはどのような点がありますか?
A:香港は、2019年の訪日者数299万人と、人口約750万人の約4割弱の方が日本を旅行した経験も持つ、つまり訪日リピーター率は世界ナンバーワンの地域です。このように、消費者の目が肥えていること、そしてそれにより競合他社が多いという点が特殊ですね。また、香港は経費が高いので、収益性を上げにくい点が挙げられます。

Q:お仕事を行う上で、信念や理念がありましたら教えてください。
A:私は就職するにあたって、「面白い仕事ができること」「世界を股にかける仕事ができること」を基準に会社選びをしました。最終的に現在まで勤続33年の歴史の中で、つらいことや大変なこともたくさんありましたが、「面白い仕事」をし続けてこれたと思っております。
常々若い社員には、「面白いことをやろう、そのためにJTBを選んだんだろ」と言い続けていますし、私自身も引退するまで、仕事への興味や好奇心を忘れず、何か面白いことを仕掛け続けていきたいと思います。

Q:貴社の直近の活動や今後の展望をお聞かせください。
A:先月約250名の日本の社員が来港し、添乗員資格を取得するために必須な海外実踏経験を積む目的の研修旅行を行いました。この取り組みに賛同いただいた香港政府観光局が、第1班参加者約90名を対象に歓迎セレモニーを実施し、日本総領事館の岡田大使もご臨席いただきました。名だたるステークホルダーの皆様には貴重な機会をいただき大変感謝しております。IMG_8624 私たちJTB香港は1967年に設立、アメリカに続いて歴史ある支店です。コロナ後の今がまさに正念場なので、新たな創業の気持ちで頑張っていきたい。そして会社経営を安定させ、まずは苦労してきた社員が勤めていてよかったと実感できる会社にしていきたいと思います。


JTB (Hong Kong) Ltd.
slogan_j31912年、たった8名の社員でスタートした会社は、現在では国内外に19,000人の従業員を持つ旅行会社最大手となった。世界では35の国と地域をカバーする81都市に187もの拠点を設け、アジア一のグローバル旅行会社として君臨し続けている。香港では1967年の事務所開設以来、今に至るまで長い歴史のバトンを引き継いできた。

Rooms 101A & 102, 1/F, Two Harbourfront, 22 Tak Fung St., Hung Hom
(852)2731-7174
www.jtb.com.hk


 

教えて!総経理!第10回目  
東洋警備(香港)有限公司 岩見 龍馬氏
のインタビュー記事は
こちら

 

 

教えて!総経理!第8回目  
SBI Securities (Hong Kong) Limited 草野 潤氏
のインタビュー記事は
こちら

 

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