総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:天高く馬肥ゆる秋

2016/03/03

秋になると空が青く爽やかでどこまでも高く、そして実りの季節に馬も丸々と太ってくる・・・。そんな意味に解釈される諺ですが、もともとは「秋になり、収穫の時期を迎える頃には、北方の民族の略奪に備えて警戒をしなさい」という警告の意味が込められていたのです。
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昔、中国北方の騎馬民族(匈奴)は、気候の良い春から夏にかけてしっかりと太らせた馬にまたがり、秋になって収穫の季節を迎えた肥沃な地方に毎年のように略奪に出ていました。北方の冬は厳しく食料不足になるため、収穫期を迎えて食料が豊富になる地方を襲って強奪を繰り返していたわけです。農耕をしている人々は秋を迎えると、「秋高馬肥」といって匈奴を恐れ、警戒していたわけです。やがて匈奴は滅び、収穫期に作物を略奪される心配がなくなると、この諺が、我々が現在イメージするような、本来の意味とはまったく違ったものとして使われるようになってきました。

実りの秋になると、動物達は厳しい冬にむけて一生懸命食べ、太ろうとします。この時期に食べることができなければ、エサが不足する冬を乗り切ることができず、餓死しかねません。熊など冬眠する哺乳類は、冬の間一切食べない代わりに体温をかなり低くして、秋に溜め込んだエネルギーの消費を抑えて春まで生きながらえます。動物の世界では、実りの秋にできる限り食べて太ることが絶対に必要なのです。

さて、ヒトの場合はどうでしょう。「天高く、我が腹肥える秋」なんて言いながら食べている方もあるのではないでしょうか。秋は太るものだと開き直っている人もいますが、「現代人」の場合は完全に言い訳にしか過ぎません。しかし、ヒトも食物が不足する冬に備えて秋には栄養をとっておかなければいけないという、狩猟や採集の生活が長く続いていました。特に冬の気候が厳しい北部ヨーロッパの人々は、冬の寒さから身を守るためには、もともと高カロリーを必要としたわけです。

ところで秋になり日照時間が短くなってくると、精神の安定化に関わっている脳内の神経伝達物質・セロトニンの分泌が減少してきます。セロトニンは食欲の調整にも関与しており、その減少によって食欲が増して、ついつい食べ過ぎてしまうことになります。これは動物が、餌が少なくなる冬に向けての準備を行うための生理学的な反応なのです。このような摂食行動は何も野生動物の世界だけではなく基本的にはヒトも同じです。食生活が豊かになり、しかも日常生活での運動量が絶対的に不足している現代では、油断していると太りやすいのは、このカラクリからして当然です。

秋に食欲が増すのは生物学的に仕方が当然のことですが、その一方で涼しく乾燥した爽やかな季節なので、運動を始めるにはとても良いタイミングとなります。涼しくなってきたのでそろそろ運動不足解消だと張り切ってジョッギングなど始める人もいることでしょう。そんな気持ちに水を差すわけではありませんが、初めて運動を始める方にとってジョッギングはとても大変ですし、すぐに挫折してしまう可能性が高いものです。とにかく朝晩歩くだけで十分です。それもダメなら、日常生活の中で体を動かす頻度を出来る限り多くすることを考えてください。通勤の往復で、とにかく歩くこと。歩くときは背筋を伸ばしてなるべく早足にしましょう。エレベーターやエスカレーターを避け、階段を利用することなど、小さな運動の積み重ねがとても大切です。

この季節に運動する習慣を身につけておくと、年間を通してその習慣を維持できる可能性が大きくなります。目先の健康維持増進はもちろんのこと、遠い将来、自分が高齢者になった時にも運動機能障害(ロコモティブ障害)で介護を受けなければならなくなる可能性を小さくすることさえ可能です。

さあ、今日から膨らむ食欲に負けないで、適度な運動を始めましょう。

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