総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:紫外線対策 やりすぎNG!
5月は紫外線量が急に増える時期です。今年は天気が悪かったこともあり、これまで紫外線に関して意識していなかった人も多いと思いますが、これから少なくとも11月までは十分に注意しなければいけません。香港に限って言えば、今年は4月に入っても天気が不安定で日照時間が非常に少なかったので、総紫外線量もそれほど多くはなかったと思います。しかし、たとえ曇っていても紫外線量はたいへん多く、思いのほかひどく日焼けしてしまうこともあるので、特にこれからの季節はたとえ日差しがなくても決して油断することはできません。
以前、香港は中緯度地方としては特に紫外線量が多いという事実をWHO(世界保健機関)が公表して注意を促したことがニュースになりました。理由ははっきりと覚えていませんが実際に観測されている紫外線量がかなり多めであることは間違いのない事実です。香港の衛生署からは、肌の紫外線対策だけではなく、サングラスを使用するなど眼の保護も怠ることがないよう注意喚起がなされています。特に海や山でのアウトドアスポーツに際しては、特段の注意が必要であることは言うまでもありません。
ところで紫外線の影響は単に日焼けすることが問題になるというわけではなく、皮膚がんのリスクを高くすることがきわめて大きな問題であることが今や常識となっています。特に色白の人は気をつけなければいけません。かつて美白化粧品が大流行しましたが、日本人は中緯度に居住することに適した肌色を人類の長い歴史の中で獲得しているのであり、その色を白くしておいて、そこに日焼け止めを使うなど本末転倒の行為といえましょう。
人類の発祥は500~600万年前の中央アフリカであるとの説が有力です。そこからヒトは時間をかけて移動していったわけですが、肌の色がより白いヒトが選択的に北上することができたのです。低緯度では強すぎる紫外線から人体を守るために黒っぽい肌色でないと不都合であることに対して、北に行くほど紫外線量が少なくなり、皮下でのビタミンDの合成という大切な機能が維持できなくなるため、色が白いヒトほど高緯度地方に適するというわけです。
ちなみにオーストラリアはかつて英国の流刑地とされていましたが、19世紀半ばに有望な金鉱脈が発見されるやいなや状況が一変しました。英国から一般人が一攫千金を夢見て移り住んで今の白人社会の基礎を築きました。非常に強烈な紫外線に耐えうるようにとても黒い肌の色を獲得した民族・アボリジニーしか居住していたオーストラリアに、何百万年もかけて高緯度の低紫外線地域に適するよう皮膚のメラニン色素を極めて少なくしてきた民族が移り住んだわけです。本来は住むことができない土地に多くの白人が住むオーストラリアでは、現在、皮膚がん対策に政府を挙げて注力せざるを得ない状況となっています。
ところで、最近、日本の小児科医の間でくる病が明らかに増加していることが話題になっているそうです。今の時代にくる病とはとても意外なことですが、そればかりか女性の骨粗鬆症も増加しているそうです。その理由が極度の日焼け予防であることが明らかになっているのです。日焼けを嫌って、日本では外出時に日焼け止めを多用する上に顔まで隠すなどして極力肌を露出しないように完全防備する人が少なくはないようです。さらに同様に子供にも紫外線避けをしてしまうようです。紫外線をシャットアウトしてしまうとビタミンDの合成が阻害され、子供のくる病や女性の骨粗鬆症が増加する原因となります。オーストラリアの白人が紫外線から極力逃れなければいけないことは当然ですが、中緯度に住む日本人が紫外線の有害作用に対して過剰に反応する必要はありません。紫外線を避けすぎた結果がくる病や骨粗鬆症といった病気であり、一体何のために紫外線を避けているのか意味がわからなくなってしまいます。余談ですが、北欧などに移住した黒人にも紫外線不足による影響が現れているという報告もあるそうです。
ちょっとした外出にも完全防備することはかえって有害です。ただし長時間の屋外活動ではしっかりと日焼け予防をしておきたいものです。昔、ハワイ旅行に行った日本人の若者が、日焼けしすぎて背中じゅうに水ぶくれができ、成田空港から救急車で搬送されたという笑えない話もあります。状況を正しく把握して、どこにいても適切に行動したいものです。