中国法律事情「退職時の年休残数など」高橋孝治

2015/11/16

中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。

中国の有給休暇 その4
今まで中国の年次有給休暇(以下「年休」)について3回に亘り説明してきました。今回が中国の年休制度の最終回です。

⑥退職時の年休残数
前号の⑤では年度(1月1日から12月31日まで)途中に入社した場合の年休は按分計算をして付与すると説明しました。年度途中で退職する場合も同じです)つまり(例)のような計算を行います。(例)年度初め5日の年休付与をされて6月30日に退職する場合181日(1月1日から6月30日までの日数):363日(1年の日数)×5日(年度初めに付与された年休)=2・47945(小数点以下切捨)←2日つまり企業ではこの場合2日の年休付与をすれば問題ありません。ただし既に3日以上年休を取得していた場合でもその分の賃金控除などは許されません。逆に未消化年休がある場合には前々号の③で説明したように消化できるように配慮してあげてください。

⑦比例付与制度が存在しない
日本の年休ではフルタイム勤務でない労働者のための算出方法があります(日本の労働基準法第39条の3。日本ではアルバイトでも年休を付与しなければなりません)。ところが中国労働法にはそのような制度が一切書かれていません。これも単位制度下の「フルタイム労働者しかいない」という考えがまだ中国労働法の根底にあるものと言えます。現在も中国労働法はフルタイムでない労働者(非全日制用工)は例外的存在として規定しているにすぎません。
そこで企業がリスク回避を考える場合、フルタイム勤務でない労働者もフルタイム労働者と同様に年休を付与した方がいいでしょう。
理論と結びつけながら中国の年休制度の解説をしてきました。年休一つを取ってみても、法律の不備面や単位制度の影響と思われる規定がかなりありました。しかし、これらの規定は法律の最低限度の規定です。これより労働者有利にすること(年休を多く付与)は問題ありません。
中国労働法は中途退職などの概念が存在しない単位制度の影響をまだ大きく受けているので、日本人には理解し難い内容が多かったかもしれません。この年休シリーズが御社での年休活用の際の参考になれば幸いです。

高橋浩治〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法ライター、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。
都内社労士事務所に勤務するも中国法に魅了され、退職し渡中。現在、中国政法大学博士課程で中国法の研究をしつつ、中国法に関する執筆や講演などを行っている。行政書士有資格者。特定社労士有資格者。法律諮詢師(中国の国家資格で和訳は「法律コンサル士」)。詳しくはネットで「高橋孝治 中国」を検索!

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