【香港】教育事情&学校紹介
海外子女専門の学習塾「epis Education Centre」に聞いた通学・受験事情
【通学】
香港には2つの日本人学校(香港校と大埔校)があります。香港校は2018年度より小学部・中学部が統合されました。近年は、香港各地のインターナショナルスクール(以下、国際校)に通学する小・中学生の増加が顕著です。国際校は、アメリカ、イギリス、カナダ等の様々な国の教育制度に基づいて教育が行われています。現地校も含め、香港では小・中学生の教育に関しては、多様な選択肢が用意されていると言えます。しかしながら、上海やシンガポール等とは異なり日本人の高校が存在しない為、日本の高校に進学しない場合は必然的に国際校や現地校に通学することになります。
日本人学校
海外に住む日本人の子どもに対して日本国内と同等の教育を行う機関
全体的に日本に帰国することを前提とした子どもが多く通学しており、海外で生活しながらも日本の学習指導要領にならった授業を漏れなく受けられる利点があります。学期の区切りも日本と変わらず、アジア圏だと、上海、台湾、シンガポール、バンコク、ハノイ、ジャカルタ、クアラルンプールにも日本人学校がある為、親御さんが転勤となった場合も転籍が比較的スムーズかと思われます。
また、香港校では2016年4月より「グローバルクラス」が新設されました。4年生から日本国内の学習指導要領に則ったカリキュラムを日本語と英語のバイリンガルで受けることができます。20名の定員が設けられており、非常に人気があるクラスです。
国際校(インターナショナルスクール)
主に外国人の子どもを対象とする教育機関
国際都市・香港ならではの利点で多くの国際校が存在します。基本的に使用言語は英語で、主に外国人の子どもが対象ですが、香港人やダブルの子どもも多く、語学
力はもちろん、様々な人種や考え方の中で生活する為、柔軟な思考や対応力が身に付くと思います。答えありきではない取り組みも多く、子どもに自発的に何かをさせたり、考えさせる方針が際立ちます。
入学に際して英語力が必須ですが、学校によってその基準も異なるので、詳しくは各学校に問い合わせてみるのが良いでしょう。
地元校(ローカルスクール)
その国・地域の教育制度に基づいて教育を行う機関
広東語はもちろん、英語、普通話も同じように勉強する為、多言語習得が可能です。先生との会話は主に広東語か英語で行われます。ローカルスクールと言えども多国籍の生徒が集まるので、育った環境や考え方もまちまちな為、いじめ等の問題は少ないように思います。また、何と言っても小学校受験から競争が熾烈なので、学習量や競争力といった点では他と比較して群を抜いているかと思います。小さいうちから明確なレールがイメージできるのも利点ではないでしょうか。その半面、常に膨大な宿題と頻繁に行われる大小のテスト準備に追われ、それを支える保護者の精神的な負担は少なくありません。
【受験】
海外に滞在中、もしくは1年以上の滞在後に帰国して2年以内といった帰国生入試の基準を設けているところが多い
近年、帰国生入試を実施する学校が増加しており、多感な時期を海外で生活した子どもの経験を大きなアドバンテージとして捉える傾向が顕著です。帰国生入試の基準としては、受験時に海外に滞在中もしくは1年以上の滞在後に日本に帰国して2年以内が多いです。しかしながら、条件は学校によっても変動する為、香港や上海等の現地で開催される各校の説明会や学校に直接問い合わせてみるのが良いでしょう。
また、帰国生入試は、先述した条件をみたす子どもに与えらる特別機会なので、仮に帰国生入試で上手くいかなかったとしても、一般入試で再挑戦できるというメリットがあります。
中学受験の場合、帰国生入試と言っても、その実態は様々で、一般入試と同じ問題を課される場合、国語と算数の試験だけを実施する場合、英語力重視で試験を行う場合等に大別され、子どもの教育履歴に合わせて学校を選択していくことが可能です。
高校受験は、私立高校だけでなく、国立高校や公立高校も帰国生入試を実施しているところもあります。また、香港やシンガポール現地で入試を実施する私立高校の存在が、海外からの受験をより容易なものにしてくれています。
多くの大学も帰国生入試を採用しています。大学によって制度の内容は様々ですが、国際校での成績、共通テストのスコア、そして小論文や学力試験、面接等を総合して合否判定が行われます。一方で、欧米の名門大学への進学の道も開かれており、高校生たちにとっては将来の選択肢を広げていくことも可能です。
最後になりますが、各々の学校に通っていても、多様な文化と価値観の中で育つ子どもたちは「地球には様々な文化や価値観を持った人たちが一緒に暮らしている」ということを日常的に肌で感じながら成長しています。こうした子どもたちが、日本のみならず世界の政治・経済・文化等の各分野でリーダーシップを発揮し、様々な問題を解決していけるのではないかと期待しています。こうしたダイヤモンドの原石のような子どもたちを大切に指導していくことが、私たちエピスの使命だと考えています。
epis Education Centre ホンハム教室長。2010年に来港。2015年5月に中国・蘇州教室の立ち上げに参画し、2017年より現役職。得意科目は英語。趣味は音楽鑑賞(ジャズメイン)、ランニング、ハイキング。香港・深圳をはじめとする海外8拠点の詳細はこちら
www.epis-edu.com
日本人が通いやすい香港のインター幼稚園・小学校
香港には日本人学校もあるけれど、せっかく海外にいるのだから様々な国籍の子どもたちが通うインターナショナルスクールに通わせたいと思うご家庭も多いのでは?香港は土地柄、世界の中でもインター校が多いことで知られ、イギリス式、カナダ式など特徴も様々。今回は日本人が通いやすいインター情報を一部紹介する。各写真はHPやFBより抜粋
幼稚園
日本人が多く通う九龍にある幼稚園のひとつ。YMCAの充実した施設を使用するので、ロッククライミングやプールなど様々なアクティビティを体験できる。また、給食がホテルのカフェから運ばれるので、「お弁当いらず&おいしい」とママたちには嬉しい限り。こちらのサマースクールなども毎年大人気だ。
http://ymcahk.org.hk/cikg
ホンハムなどのエリアからバスが出ていることもあり、日本人にも人気の幼稚園。英語と広東語ネイティブの先生が2人体制でクラスを担当するので、英語はもちろん広東語で日常会話ができるようになる子も。毎日の中国語クラスのほか、週2回、日本人教師による日本語や文化を教える授業がある。
www.catiline.edu.hk
香港だけでなく中国にもいくつか拠点を持つ国際幼稚園。生後6ヶ月~6歳の子どもを受け入れ、イギリス式の教育を行っている。香港ではめずらしく園庭があり、身体を思い切り動かして遊ばせることができるほか、園内では木製のイスやテーブルが置かれ、カラフルなデザインが施されており、子どもたちの五感を刺激する内装。
www.magartedu.com
元劇団出身の創立者が開設したインター幼稚園で、英語劇、言語アートなど表現力に力を入れている。またオフィスには日本人のスタッフも常駐するので、やりとりは日本語で行え、香港初心者パパママにも親切に対応してくれると評判だ。
https://hhik.edu.hk
小学校
Japanese International School(JIS) 【大埔】
http://es.jis.edu.hk
政府系のインターなので学費が安く香港人からも人気。それゆえ競争が激しく入学テストや面談も高度な英語力を求められる。駐在日本人の子どもでもある程度、英語力を身につけるとEFSへ転校する家庭もある。教学はIB(国際バカロレア)に乗っ取り、自立、自信、創造力などをキーワードに展開。
www.esf.edu.hk
1学年に20名ほどのクラスが3クラス。日本人は1クラスに1名前後と比較的少ないが、英語力と国際感覚を身につけるならとてもいい教育環境と言えるだろう。中学部が非常に人気で、そのために小学部から通わせるという家庭もいるんだとか。YMCAの系列校なので幼稚園から上がってくる児童も多い。
www.cs.edu.hk
幼稚園(4歳から)も併設するカナダ系のインターナショナルスクール。教師はほとんどがカナダから派遣され、生徒自らの思考、表現を大事に、個性を伸ばす教育法が取られている。またESL(英語を母語としない生徒向け英語クラス)が充実している点でも人気。さらに、第二外国語(日本語、普通語、スペイン語、フランス語)の選択肢が豊富。
www.dsc.edu.hk
日本人ママに聞いた ローカル名門スクール体験談
ローカル校といっても、実際は多種多様。誰でも受け入れてくれるほぼ無料の学校から、インター校と変わらない国際的な学校、容赦なく留年させられる難関校まで幅広い。今回はY’s Consulting Limitedの古賀さんに、長男が名門ローカル小学校に在学していた頃のお話を伺った。
家族構成
古賀さん:広東語非ネイティブ・フルタイム
夫:広東語ネイティブ・フルタイム
長男:15歳(ローカル中学校在籍)
※家では日本語で会話
幼稚園から始まる受験戦争…。小学校受験を考えるならK2時に多くのオープンスクールに行くべし! Q:受験は小学校からですか?
A:我が子は1歳8ヶ月のときに初めての幼稚園受験をしました。私は単純に受験ってどんなものか経験してみたいと思ったからですが、香港人の親は、良い大学に入るなら良い小中学校、良い小中学校に入るなら良い幼稚園という考えなので、幼稚園受験は当たり前なんですよね。
Q:どのように学校を選んだのですか?
A:小学校選びには、K2(年中)時に毎週末、とにかくたくさんオープンスクールを見に行きました。必ず親子3人で行っていましたが、時期が重なるので1日に何校もまわったりしていましたね。通いやすいことや評判がいいことなども考慮しましたが、最終的には子どもが通いたいと言ったので受験させました。
1日10種類!? 宿題のハードルはどう乗り越える? Q:ローカル校って試験が大変なイメージです。
A:番付がしっかり出るので、試験の1~2週間前からどこの親子もピリピリした雰囲気にはなりますね。特に中学受験を意識する頃になると、ストレスを感じる子も多いようで、学校では2人の心理カウンセラーが対応していました。
Q:勉強以外でも評価されるんですよね?
A:ローカル小学校は、特に音楽分野で評価されることが多いです。
バイオリンやピアノなどを学校の評価会で演奏すると、高い内申点がもらえるのですが、5分の発表のためにトラックにハープを積んで3~4人で運んできた子もいました。
Q:宿題が過酷と聞いたことがあるのですが…。
A:息子の小学校では、低学年の頃から毎日8~10種類は宿題が出ていました。期限は翌日です。次の日にできていないと赤点がつくので皆必死で、1年生で留年している子もいましたし、耐えられず数ヶ月で転校する子も…。ですので、ほとんどの子どもが学校が終わると塾で宿題をみてもらっていました。我が子は、香港小童群益會という日本の学童のような施設で、ボランティアの学生や元先生に教えてもらっていました。塾とは違って、そこではお菓子作りや映画鑑賞、長期休みには郊外学習などもしてくれるので、本人も楽しんで通っていましたよ。
厳しいぶん、やるべきことを終わらせてから遊ぶ子に育つ! Q:宿題、嫌がりませんか?
A:私、「宿題をしなさい!」と言ったことは一度もないんです。小さい頃から学校で厳しく管理されたおかげで、まずはやるべきことをやってから遊ぶ習慣が今でも身に付いていますね。
Q:それはすごい!ほかに通わせて良かったことはありますか?
A:スポーツ面や芸術面が優れていた学校で、水泳大会や文化祭などイベントも充実していました。5年生の時には、選抜のイギリス研修旅行があったのですが、普段行けないような場所にも連れていってもらえたようで、とても良かったです。
やはり名門校は親子で取り組むことが必須ですね…。でもお互い得るものも多そうです! ありがとうございました。