僕の香妻交際日記 第21回「薬局の親父の口癖」
「大丈夫、俺も使ってるやつだからよ」
「これはお得だよ、今しかないんだから」
「何が違うって、こっちの方が良いんだよ」
これらのセリフ、一見すると危ないことでもやっているんじゃないかと思わせます。
でも、安心してください。
これら全てのセリフは薬局のおじちゃんによるトイレットペーパーについてのアドバイスです。
怪我や病気の症状を言うだけで、 おじちゃんはパッと商品を出してくれます。
私はトイレットペーパーやボックスティッシュなどの消耗品は自宅から徒歩10秒のところにあるローカル薬局でいつも買っているのですが、ここの薬局のおじちゃんがちょっと個性的なんです。例えるなら見た目はズートピアの主人公のキツネみたいで、性格は高田純次といった感じです。
そんなおじちゃんの江戸っ子顔負けのセールステクニックをここでご紹介します。
1.自らインフルエンサーとなる
顧客が商品を買うか買わないか、もしくは2つの商品でどちらにするかなど迷った仕草をすると「これはオススメだよ。俺も家で使ってるし。」とおじちゃん自らのお墨付きを与えてくれます。
2.「今だけ」をいつも使う
ティッシュ一箱無料、ハンドソープ一本無料などのプロモーションがあると必ず「大特価だよ、今しかないよ」と今だけ感を強調します。こちらの薬局に通い始めてから2年ほど経ちますが、これらのプロモーションは通い始めた頃から今も継続中です。
3.最後のクロージングは気迫だ
ボックスティッシュ1つとっても、ブランドが違ったり、同じブランドでもパッケージが違ったりと顧客としてはそれらの違いを比較、理解した上で会計に臨みたいものです。しかし、そんな細かいことをおじちゃんに聞こうものなら「何が違うって、こっちの方が良いんだよ!28ドルだよ!」と一蹴しつつ、会計しちゃいます。この気迫によって顧客はあんなに硬かった自分たちの財布の紐をなぜかほどいてしまうのです。私の妻も例外ではありません。
日本でもまだまだこのような「てやんでえ、べらぼうめ精神」のおじちゃんを見かけることがあります。こういった技はおじちゃんたちが自分の仕事に自信と誇りを持っているからこそできるんであって、そこらの若造が言葉だけ真似しても決して顧客の心を打つことはできないでしょう。今の若い人たちにはこの気迫が最も欠けている気がします。かく言う私も、おじちゃんの一つ一つの言葉に一瞬疑問を持つこともありますが、結局は「そうか、今しかないんだ」とその気迫に圧倒される自分がいつもそこにはいます。
“66の親父の口癖は「やるなら今しかねえ」”
長渕剛、よろしくお願いします。
ではでは。
ルーシー龍(りゅう)
香港人妻との結婚歴3年目の日本人。沢木耕太郎の「深夜特急」を読んでチョンキンマンションに憧れて香港にやって来る。趣味は早く家に帰って妻と一緒にTVBのドラマを見ること。