【荃湾エリア】生まれ変わった工業地帯

2024/04/17
【ヒストリー】塩田から工業地、そしてニュータウンへ

「チュンワン(荃湾)」の文字が初めて書物に現れるのは漢の時代。宋、明、清の文献にも同地は頻繁に登場するが、この辺りの海が浅かったことから、かつては「浅湾」と呼ばれていたことが分かる(のちに浅湾の名は不吉だということで荃湾に変更された)。1277年には、追放された宋の皇帝が逃れ着き、地元住民が時の皇帝を追手から守るため砦を作って応戦した。また清の時代には客家が移り住み、塩田を広げていった。
1950年代には荃湾は工業エリアとして広く知られることになり、同時に職を求めて中国大陸から大量の移民が香港に渡ってきた。そこで1961年、政府は香港初となるニュータウン(計画的に建設された新しい街)のプロジェクトを発表し、大規模な埋め立て工事も実施した。
全盛期には香港の製造業労働者のうち30%が繊維業に携わっていたが、そのほとんどの工場はここ荃湾区にあった。しかし1980年代に入り香港の人件費や土地代が高騰すると、繊維業の主力は中国本土へと徐々に移り、荃湾も一大工業地帯としての役目を終えることとなった。

 

 

【おすすめスポット】 新旧の交差が面白い!

近年、大幅リニューアル
三棟屋博物館

三棟屋 無形文化遺産に登録されている三棟屋。この土地に移り住んだ陳一族の当時の住まいを修復し博物館として開放している。博物館化による修繕にあたり困難を極めたのは、当時の建築資材の調達だったそう。三棟屋は全て青磚青瓦と呼ばれる青みがかった灰色のレンガと瓦が使われているが、香港にはそれらはすでになく、広東省でようやく見つかった。また地面に敷かれた廣東大階磚とよばれる床用のタイルは東莞から、花崗石板は福建省から運んだという。
2021年、同館はマルチメディア要素を多く取り入れた展示へと大規模な改装がなされた。リニューアル後は、三棟屋での暮らしぶりや建築様式はもちろん、麻雀牌や飲茶、広東オペラなど香港の伝統文化全般を模型などを使って紹介している。ニュータウンとして生まれ変わる前の、素朴な村民生活に触れてみて。
2 Kwu Uk Lane
www.icho.hk/tc/web/icho/sam_tung_uk_museum.html

 

 

クレソン畑と飲茶が有名
川龍村

端記茶楼荃湾駅にある川龍街から80番のミニバスで約20分。終点の川龍村まで乗車すると、緑に囲まれた小さな村の前に到着する。多くの乗客のお目当てはこの村にあるたった2軒のレストラン、「彩龍茶楼」と「端記茶楼」だ。特に端記茶楼にはテラス席があり、晴れた日は心地がいい。川龍村はハイキングコースのスタート地点にもなっているため食事をしてから歩く人が多く、週末に飲茶をするなら種類が豊富な朝10時までの時間帯に行くのがおすすめだ。
お腹を満たしたあとは、すぐ近くにあるクレソン畑に赴いてみよう。綺麗な山水でしか育たないと言われるクレソンがびっしりと栽培されている。
端記茶樓
57-58 Chuen Lung Estate, Route Twisk

 

 

おしゃれモールに再生した工場跡地
The Mills

themills2The Mills(南豊沙廠)は、古い織物工場をリノベーションしてできたショッピングモール。アートをテーマに、お洒落なレストランや流行最先端のショップが並ぶ。ここはかつて、香港最大の綿糸会社が営む生産量1位の巨大な繊維工場だった。その後、経済発展の象徴とも言えるこの工場を何かの形で残そうと、4年に渡る改修工事の末に、2018年、香港初の建築再生プロジェクトにより現在の施設が誕生した。もとの暗い工場のイメージを払拭するかのように、屋根は巨大な天窓へと変わり、吹き抜けにより地上階にまで光が降り注ぐようになっている。ショップ巡りや毎週のように行われている参加型のアートイベントなど、ふらっと立ち寄るだけでも楽しい。
45 Pak Tin Par St.
themills

 

 

小さな村のカラフルアート
光板田村

Photo) 光板田村1若者を中心にフォトスポットとして密かな人気を集めているのが、光板田村だ。ここは何もない小さな村なのだが、石段や住宅壁にカラフルなペインティングや可愛いイラストが描かれており、まるで童話の世界に入り込んだかのよう。山中にあり周囲にほかに観光スポットはないが、フォトジェニックな写真を撮るのが好きな人は一度訪れてみてもいいかも。荃湾駅からバスを使って光板田村二段で下車後すぐの場所にある。
Kwong Pan Tin Village

 

 

木化石がテーマの新スポット
Nina Park

NinaPark昨年12月末に誕生したばかりの公園、ニナパーク。テーマはなんと「木化石」で、園内には260万年前の木など世界各国の木化石が約100点展示されているほか、子どもも楽しめるさまざまな仕掛けが用意されている。また美しい鉱石や、どのように木が石化するのかなどを展示した2階建ての博物館も併設。MUJIやマツキヨなど日系店も多く入るショッピングモール、Nina Mallに直結しているので、お買いもののついでに立ち寄ってみよう。
8 Yeung Uk Rd.

 

 

【絶品グルメ】 ヌードルの激戦区!

セレブも通う人気店!
正宗山西刀削麺皇

山西刀削麺2麺の故郷とも呼ばれる山西省。この地の麺料理は400種類以上あるとも言われるが、なかでも刀削麺は代表的な麺のひとつだ。作り方も面白く、調理人が大きな麺の塊を抱えたかと思うと専用包丁で直接ゆで鍋の中へ削り落としていく。山西刀削麺1おすすめはワンタンと坦々味の挽肉を追加した刀削麺。在住邦人の間でも人気のある同店には多くの芸能人も訪れており、時には長蛇の列になることもあるので覚悟しよう。
G/F., Kwan Tak Bldg.,245 Sha Tsui Rd.

 

 

米線は新界で食すべし!
唯一雲貴川風味

唯一雲貴川風味荃湾でもっとも歴史ある雲南米線の人気店。常に行列ができるほどの盛況ぶりだ。おすすめはピリ辛みそ味のミンチ肉が米線と絶妙に絡み合った「炸醬腩肉酸辣米線」。スープは辛味と酸味がとても強く濃厚でクセになる。本場、雲南省は昆明出身のオーナーが1993年にオープンさせた同店。米線好きの方はぜひともこの一杯を求めて荃湾を訪れてほしい。
G/F., 14 Sze Pei Square唯一雲貴川風味2

 

 

B級グルメの真骨頂!
德發粥品店

德發粥品店2荃湾に系列3店舗を持つ同店。早朝からオープンしており価格も安いことから、地元民の朝を支える貴重なローカル食堂だ。お粥もボリュームがあって美味しいが、炒麵(焼きそば)も1人で食べ切れるか心配になるほどの量。たっぷりな割に物価高を完全に無視した破格の値段で提供されており、テイクアウトにすると紙で包んでビニール袋の中に入れてくれる。
G/F., 9B & 11 Sze Pei Square德發粥品店1

 

 

気さくな店主が振舞う汁なし太麺
西站餃子

西站餃子2西站餃子1荃湾駅から長い歩道橋で繋がる子ども向け大型ショッピングモール、D・Park。そのすぐ近くにある同店は、餃子と汁なし麺、肉どんぶりというシンプルな品揃えながら、食事時には客足が途絶えることがない。メニュー選びに迷ったら、気さくで優しいオーナーに尋ねてみよう。おすすめは「香蒜醋雞肉撈麺」。特製の甘辛ソースで味付けされた挽肉が、汁なし太麺と絡まってクセになる一品だ。同じソースを絡めた牛肉をご飯に乗せ、さらに目玉焼きをトッピングした丼もボリューム満点の人気メ
ニュー。
G/F, 5 Tai Pa St.

 

 

【荃湾住民インタビュー】

Mr下村香港包装器材中心有限公司 下村 圭さん
2011年に入社し、今年2月、董事総経理に就任。包装フィルムなどを扱う商社の香港トップとして30名の現地スタッフを取りまとめる。香港生活トータル22年のベテラン。

荃湾にはいつから住んでいますか?
初めて住んだのは2002年です。香港に住み始めたのは1996年からで、来港当初は沙田に住んでいましたが、最寄りの店まで20分という不便な場所でした。荃湾に移った理由は、当時勤めていた会社が近かったからです。その後、ほかの場所への引越しも経験しましたが荃湾の居心地のよさを忘れられずまた戻ってきました。

住み心地はいかがですか?
住み心地はいいですよ。今住んでいるところは大家さんがいい人なこともあって2011年からずっと同じ部屋なんです。昔は周囲に本当に何もなく、誰がこんなマンションを借りるんだろうなんて思っていましたが、まさか自分が10年以上も住むなんて(笑)。2018年ぐらいから再開発が進んだことで、街もかなり便利になりました。最近では在住者らしき日本人の方を見かける機会も増えましたね。

買い物や食事は?
昔はローカルスーパーしかなかったですが、今ではイオンや一田、ドンキもあり、日本食材の調達には困りません。それに日系チェーン店の飲食店も多いんです。私はほぼ外食ですが、都心部に比べてレストランの価格が安いので生活費は抑えられると思いますよ。大型のショッピングモールもたくさんありますし、日本語通訳の電話サービスもあるアドベンティスト病院も荃湾にはありますからね。普段の生活はこの地で十分事足ります。

交通の便はいかがですか?
都心部に住む人に荃湾でご飯をしようと言っても、遠いからと嫌がられることもあるんですが、尖沙咀や中環までMTRで乗り換えなし、30分ほどです。空港までも近距離で、我が家の前にあるバス停からはたった4停留所先です。乗り継ぎが上手くいけば飛行機を降りてから1時間程度で自宅に到着するのでとても便利ですよ。また中国側へのアクセスも簡単で、深圳湾、落馬洲にもバスで行くことができます。

一押しスポットを教えてください!
バスで20分のところに香港の最高峰、大帽山の登山口があります。最近、山登りにはまっているのですが、最高峰と言えどもスニーカーで登ることができますし、山頂からの眺めは最高です。周りに遮るものがないので、初日の出もキレイに見えますよ。大帽山19

おすすめグルメを教えてください!
ししゃも、羊串肉など串焼きが美味しい「麻辣串串香」がおすすめです。日本の焼き鳥屋のような雰囲気でリーズナブルなのも嬉しいですね。
Shop A1, G/F., 84 Ho Pui St.麻辣串串香

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