ベトナム特集・ハロン湾とホアンキエム湖へGO!
ベトナム特集の最終回は、政治の中心地、首都ハノイへ。商業都市として賑わう南部のホーチミンと比べると時間の流れはゆったり。古都の面影も残り、中国情緒あふれる旧市街地とフランス調の建築物などが混在する。代表的な観光スポット、世界遺産のハロン湾とホアンキエム湖へ出かけてみよう。
名前の由来は竜が降り立った場所
深緑の海面からそそり立つ奇岩の数々が、柔らかな夕日を浴びて輝いていた。その間を縫うようにクルーズ船はゆっくりと進む。目の前の神秘的な風景に圧倒されながら、ふと考えた。地球上にこんな景観をつくり出してしまうなんて、やはり竜の仕業に違いない。約1,500平方キロメートルの海域に大小二千とも三千ともいわれる奇岩が突き出すベトナム北部にあるハロン湾。「竜が降り立った場所」がその名の由来だ。かつて敵軍が侵攻してきた際に、竜の親子が現れて撃退し、その時、口から吐き出した宝石が散りばって湾内の島々になった…。こんな伝説が残る「ハロン湾」を訪ねた。
ハロン湾はハノイから東へ約150kmの場所にあり、車では約3時間半。「海の桂林」と呼ばれ、世界遺産にも登録されており、いつも多くの観光客で賑わっている。
木造船にのって湾内をクルーズ
ハロン湾の玄関口バイチャイに船乗り場がある。中国から伝わる昔ながらの木造船を模した観光船によるクルーズが、ここの名物だ。岸壁を埋める船と観光客の多さに驚きつつ、その1隻に乗り込んだ。沖に向かい徐々にスピードを上げていく船。強い日差しで汗ばむ肌に、海風が心地よい。小1時間も行けば、周りは巨大な奇岩に囲まれた別世界だ。真下から見上げると荒々しい岩肌を覆う木々の緑が迫ってくる。ひとつとして同じ形がない岩を数えるだけで、時が経つのを忘れてしまう。1994年に世界遺産に登録されたハロン湾だが、ここで水上生活を営む人びとにとっては暮らしの場だ。岩のふもとに点々と浮かぶ家々では、洗濯物を乾かしたり、ハンモックにゆられたり、日常の時が流れる。クルーズ客に新鮮な魚介類を売る家に立ち寄ると、天然のいけすの中で、魚と一緒にカブトムシが泳いでいた。横付けした小船には色とりどりの果物やカップラーメン、日本製のチューブ入りワサビまで並び、ちょっとした水上マーケットを思い出す光景だ。
地元民で活気があふれるハロン市場
世界遺産の登録で、観光拠点のバイチャイ側は高層ホテルやレストランなどが林立、現在もボーリング場やショッピングモール建設が進む。それとは対照的に、バイチャイと橋でつながる対岸のホイガイのハロン市場は、変わらぬ地元の人々の熱気で溢れていた。夜が明け切らぬ午前5時すぎ。市場の細い路地は既に黒山の人だかりで、かごからこぼれ落ちそうな魚の山で埋め尽くされていた。裸電球の下で売り買いする女性たちの威勢のよい声が響く。岸壁ではてんびん棒を担いだ男たちが次々と魚を水揚げし、順番待ちの漁船が数多く停泊している。陸と水上の家や漁船をつなぐ手こぎ舟に乗せてもらった。市場で買ったパンをのせて家に戻る若い女性、制服を着て陸の小学校に通う子どもたち…。それぞれの生活を乗せた小舟が行き交う。船頭のドゥ・ティ・ホアさんは、ハロン湾の漁師の娘で生まれも育ちも水上だ。今は家族と陸で暮らすが「湾内のことなら何でも知っている。岩山の形や場所を覚えないと、迷っていたら魚も生活もできないから」と笑う。竜伝説の海でたくましく生きる横顔が、まぶしく映った。
地元民で活気があふれるハロン市場
世界遺産の登録で、観光拠点のバイチャイ側は高層ホテルやレストランなどが林立、現在もボーリング場やショッピングモール建設が進む。それとは対照的に、バイチャイと橋でつながる対岸のホイガイのハロン市場は、変わらぬ地元の人々の熱気で溢れていた。夜が明け切らぬ午前5時すぎ。市場の細い路地は既に黒山の人だかりで、かごからこぼれ落ちそうな魚の山で埋め尽くされていた。裸電球の下で売り買いする女性たちの威勢のよい声が響く。岸壁ではてんびん棒を担いだ男たちが次々と魚を水揚げし、順番待ちの漁船が数多く停泊している。陸と水上の家や漁船をつなぐ手こぎ舟に乗せてもらった。市場で買ったパンをのせて家に戻る若い女性、制服を着て陸の小学校に通う子どもたち…。それぞれの生活を乗せた小舟が行き交う。船頭のドゥ・ティ・ホアさんは、ハロン湾の漁師の娘で生まれも育ちも水上だ。今は家族と陸で暮らすが「湾内のことなら何でも知っている。岩山の形や場所を覚えないと、迷っていたら魚も生活もできないから」と笑う。竜伝説の海でたくましく生きる横顔が、まぶしく映った。
大亀の伝説が伝わる聖なる湖
ハノイのほぼ中心に位置するホアンキエム湖。周辺にはたくさんの観光スポットがあり観光客に人気の場所となっている。地元のハノイ人にも愛されており、憩いの場として子供からお年寄りまで多くの人たちが集まる。
そんなホアンキエム湖には古くから伝わる伝説がある。ハノイのホアンキエム湖で黎朝を築き上げたレロイ王が優雅に船遊びをしていた際、突如「神聖な亀」が現れ、レロイ王がベトナム北部侵略者制圧時に使用した「聖なる剣」の返却を求めた。レロイ王は家臣に剣をすぐさま返却するように命じ、聖剣を湖の中心近くにある小島で剣を返した。その後レロイ王はその湖を「戻りの剣(ホアンキエム)」と呼ぶようになった。この物語は水上人形劇で観ることができる。小島にはその後、亀の塔が建てられている。湖の北岸の近くにあるもう一つの島には、18世紀に建てられた玉山祠が建っている。それは13世紀の元に対する戦いで活躍した陳興道、文昌帝らを祀っている、。島と岸の間には、赤く塗装された木製の橋が架けられている。
湖の中には、何種類かの大型の亀が棲息するが、絶滅の危機にさらされている種もあると伝えられている。1968年には湖で体重250キログラムの大亀が発見され、伝説の亀として玉山祠に剥製が祀られている。剥製の大きさは長さ210センチメートル、幅120センチメートルもあるという。
周囲を散策、路地裏でベトナムコーヒーを!
湖の周りは、早朝からウォーキングや体操、バドミントンなどをする健康志向のベトナム人で賑わう。そして街が騒がしくなる頃から観光客が登場する。周りのカフェはくつろぐのにもってこい。午後は昼寝をする人、愛を語り合うカップルで木陰のベンチは満席状態に。帰宅ラッシュでバイクの音が騒がしくなる夕方は、オジサマたちが将棋の勝負に白熱している。そして「亀の塔」がライトアップされ、幻想的な雰囲気になる夜は、散歩をする家族連れやデートをするカップルの時間がやって来る。
1周は約2キロメートルで湖沿いは遊歩道になっているので、ハノイに訪れる機会があったら是非ホアンキエム湖を一周歩いて回ることをおすすめする。湖周辺で生活する人々は、今でも湖に巨大な聖なる亀がいると信じている。そんな人たちには優しい雰囲気が漂う。勇気を出して少し路地裏を歩けば、旅先での思い出も更に充実するはず…。附近には、数多くのみやげ物屋やバックパッカー向けの宿、お洒落なカフェやレストランが細い路地に所狭しと軒を連ねている。中庭のあるヨーロッパ調の建物を使用した「食通のレストラン&カフェ」ことシクロ・バー&レストランからは、ベトナムコーヒーの独特な香りが路地へと漂い、旅人を店内へと誘う。