中国法律事情「中国での契約の違約責任の免責事由 その1」高橋孝治

2019/08/07

目から鱗の中国法律事情 Vol.34

一度、契約を締結しても、実際には契約を守ることができない場合もあります。その場合、さまざまな責任を負うことになりますが、免除される場合もあります。今回は中国で契約違反した時の責任が免除される場合について見ていきましょう。


日本の場合
日本で契約を守ることができなかった場合、それは「債務不履行」と呼ばれます。自らの責任で債務不履行になったわけではないと証明することや、相手方にミスがないなどの理由があれば、その責任は免除されます。


中国の場合
「違約責任」というものが発生します。この違約責任が免責されるための要件が中国の契約法(原文は「合同法」)にいくつか書かれています。その要件とは、以下の通りです。


(1)不可抗力の場合
 契約法第117条には「不可抗力により契約が履行できなくなった場合には、不可抗力の度合いに応じて責任を部分的もしくは全面的に免除する。ただし、法律に他の定めのある場合を除く。当事者の履行が遅れたために、不可抗力が発生した場合には責任は免除されない」と規定されています。そして、続く第118条では「当事者の一方が不可抗力により契約を履行できなくなった場合、直ちに相手方に通知を出し、相手方の損害を可能な限り軽減させ、合理的な期限内にその証明も行わなければならない」とあります。この2つの条文を根拠にして、中国では不可抗力により、契約を守ることができなくなった場合、①相手方に通知を出し、②合理的な期限内に不可抗力により契約が守れなかった旨の証明をして、免責されるとされています。

ただし、契約を守るべき日が来ても契約を守らなかつたために、不可抗力の状態となってしまった場合には免責されません。期日通りに契約を守っていれば、不可抗力の状態にはならなかったはずであり、さすがにこのような場合には免責されません。

なお、「不可抗力」とは、地震、台風、洪水、落雷、戦争、ストライキ、新しい法律が制定された場合などと考えられています。(続く)


高橋孝治〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国法研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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