目から鱗の中国法律事情 Vol.56

2021/06/09

中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 前回は、2021年1月1日に施行された中国民法典における保証契約の全般を見てきました。今回は、保証契約の実行方法について見ていきましょう。

  一般的な保証契約の実行

 中国民法典第687条第2項によれば、一般的な保証での保証人は主たる契約に争いがあって、裁判や仲裁を経ずに、債務者の財産が法による強制執行されたとしても、債務の履行ができなくなるまでは、債権者に対して保証責任を負うことを拒否することができるとされています。ただし、以下の場合にはこの限りではないとされています。①債務者が行方不明で、さらに執行できる財産がないとき、②人民法院(裁判所)が債務者の破産事件を受理したとき、③債務者が財産不足で債務の全部の履行ができないもしくは履行能力がないことにつき債権者にその証拠があるとき、④保証人が書面でこの規定に定められた権利を放棄したとき。

 このように、保証人となっていたとしても、一般的な保証契約の場合、まずは本来の債務者が当該債務を負担することになります。

 

連帯責任による保証契約の実行

 一般的な保証契約に対して、連帯責任による保証契約の場合、本来の契約の債務履行の期日が到来した場合に、債権者は、ただちに債務者か保証人のいずれかに請求をすることができます(中国民法典第688条)。いわゆる、連帯責任による保証契約の場合、「一般的な保証契約の実行」で述べたような、保証人が保証しなくてはならない場合に限らずに保証をする必要があるのです。

 

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保証人の権利

 しかし、保証人もただ保証人になるだけではなく、本来の債務者にあらかじめ保証人に対して担保を提供することを求めることもできます(中国民法典第689条)。ま
た、保証人の知らないところで本来の債権債務の期間が延長されていたとしても、保証契約も自動的に延長されることはありません(中国民法典第692条)。

 さらに、一般的な保証契約の際に、債権者が保証期間内に本来の債務者に対して訴訟や仲裁の申立てを行わなかった場合には、保証人は保証の責任を負わなくなり(中国民法典第693条第1項)、連帯責任による保証契約の場合、債権者が保障期間内に保証人に保証責
任を負うよう請求しない場合にも保証人は保証責任を負わなくなります(中国民法典第693条第2項)。この意味については次回見ていきましょう。(続く)

 


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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