尹弁護士が解説!「中国法務速報 第3回」
ライセンス契約締結の際の注意点 ②
相手方に何を許諾するのか
中国企業から、日本企業が持っている特許やノウハウを使わせてほしいという依頼があったとします。日本企業(ライセンサー)の持っている特許やノウハウを中国企業(ライセンシー)が使うことを許諾し、その場合の権利義務の内容を定めるのが「技術ライセンス契約」です。
技術ライセンス契約を締結する際には、まずライセンシーが何をすることを許諾するのか明確にしましょう。許諾の範囲は通常、製造と販売に分かれます。
・技術を使用して製品を製造する行為(製造ライセンス)
・製造した製品を販売する行為(販売ライセンス)
交渉に臨む際には、製造ライセンスと販売ライセンスの両方を与えるのか、片方のみを与えるのかをまず確認する必要があります。
実施権の種類
実施権には、独占実施権、排他実施権及び通常実施権の3種類があります。それぞれの具体的内容を概観すると以下のようになります。
「通常実施権」は2社以上に許諾できます。すなわち、あるライセンシーに許諾しても、同じ許諾地域で別の会社に許諾することができます。
一方、「独占実施権」と「排他実施権」は、1社のみに許諾することができます。あるライセンシーに許諾した場合、同じ許諾地域で別の会社に許諾することはできません。
「排他実施権」では、ライセンサーは、ライセンシーと合意すれば自らその技術を実施できます。一方、「独占実施権」では、ライセンサーは自らその技術を利用することはできません。
契約書では「独占実施権」又は「排他実施権」と抽象的に記載するだけでは不十分です。当事者双方の認識にズレが生じ、後に生じ得る紛争を防ぐためには、契約書に具体的な権利内容を明示する必要があります。例えば、「甲は乙に排他実施権(甲は、許諾地域において乙以外の第三者に実施権を付与することはできないが、自ら実施することができる)を付与する。」といった具合です。
実施できる地域について
ライセンスを付与する場合、地域的な限定が不十分だと、ライセンサー自身のビジネスの障害になる可能性があるため、その地域を明確にしておく必要があります。特に、ライセンス地域を「中国」とだけ記載すると、香港、マカオ、台湾が含まれるか不明ですので、香港、マカオ、台湾の取り扱いには注意が必要です。
尹秀鍾(Yin Xiuzhong)
代表弁護士、慶應義塾大学法学(商法)博士。西村あさひ法律事務所(東京本部)、君合律師事務所(北京本部)での執務経験を経て、2014年から深圳で開業、華南地域の外国系企業を中心に法務サービスを提供。主な業務領域は、外国企業の対中国投資、M&A、労働法務、事業の再編と撤退、民・商事訴訟及び仲裁、その他中国企業の対外国投資など。
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