中国人事労務「素行不良による契約解除」インテリジェンス

2014/02/24

第46回「労働関係処理のポイント(4)」

前回は「労働関係処理のポイント(3)」と称し、解雇の具体事例として「能力不足」による契約解除について解説しました。今回は「素行不良」による契約解除についてご説明します。

■事例(素行不良)

2008年9月1日に生産現場作業員として入社した社員B。既に無固定期限労働契約を締結。

度重なる遅刻など日頃から勤務態度に問題あり。ある日、同じ職場の作業員Cに突然暴力をふるい、怪我を負わせてしまう。会社は懲戒解雇を検討。

■会社方針の確定

1.解雇事由の確認

通常は就業規則に対する重大な違反行為に該当します。重要性と緊急性は共に高く、二次被害を防ぐためにも緊急対応が求められる場面と言えます。

2.適用法規の確認

原則は就業規則違反による即時解除(労働契約法第39条(二)項)とすべきですが、場合によっては自己都合退職(労働契約法第37条)、あるいは協議一致による契約解除(労働契約法第36条)を選択するケースもあります。

3.解雇可否とリスク検討(図1.を参照)

まずは就業規則上に社内暴力に対する処理について規定があるかどうかの確認を行います。また、その違反行為の程度が解雇に値するか否かについても判断が必要と言えます。次に、違反行為に対する明確な証拠および証人の存在についても確認が必要です。これらの条件を全て満たしていたとしても、従業員が労働仲裁を申請することを防ぐことはできないため、懲戒解雇を行う際には会社として労働訴訟も辞さない方針であることを確認する必要があります。また、証拠が不十分な場合においても、周囲に与える影響を考慮し、強制排除を行うか否かの判断が必要と言えます。

中には労働訴訟を避けるため、自己都合退職の勧奨や、あるいは経済補償金を支払っての協議解除を提案するようなケースもありますが、軽微な喧嘩であればまだしも、怪我を負わせるほどの暴力行為に対しこれらの寛大な措置を採った場合、今後のマネジメントに大きな悪影響を招いてしまう恐れがあります。暴力行為などは再発の恐れもあり、周囲への悪影響も大きいことから、やはり厳しい対応を迫る必要があると言えます。

このケースは暴力行為などの素行不良を原因とした懲戒解雇事例ですが、例えば勤務態度不良などの場合にも同様のフレームを用いて検討することができます。遅刻や会社の指示命令への不服従など、就業規則に対する重大な違反行為とは必ずしも言い切れないような場合、警告書の累積を必要とします。

4.補償プランの確定

即時解除時は経済補償金の支払いが不要です。やむを得ず協議解除を検討するケースもありますが、その場合、他の社員への誤ったメッセージの発信となってしまうことに注意が必要です。

■解雇シナリオの確定

1.ストーリーの作成

証拠および証人を即座に準備することが重要です。事前に労働契約解除通知書を用意し、従業員の署名を得られればベストですが、どうしても署名を得られない場合、解除通知を読み上げての録音やEMS郵送による署名入手なども検討します。

2.役割分担

誰が何の役割を果たし、どのように進めるのかを事前に明確化しておきます。会社のサイズにもよりますが、通常は人事部門が中心的な役割を担います。ただし、人事担当者の安全には十分な配慮が必要です。

3.通知場所と日時

暴力行為が発生する可能性もあり、関係者の安全を最優先しながら通知場所を選定します。緊急を要することもあり、問題発生から速やかな対応が必要となります。想定される質問に対する回答をあらかじめ用意しておき、暴力行為や情報遺棄・漏えい行為などが起こった際の緊急対応についても事前に想定しておく必要があります。 当該ケースにおける思考フレーム例     インテリジェンス アンカー   北尾直樹 インテリジェンスアンカーコンサルティング深セン 総経理

インテリジェンス アンカー コンサルティング

 

 

 

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