持分譲渡に係る所得税のリスク防止。広東君厚法律事務所
【広東君厚法律事務所】
◆広東君厚法律事務所弁護士 鄧 勇
中国事業を展開する日系企業は、企業の売却、買収の際、中国の税法に基づいた課税に注意する必要があります。
ここ2年間、企業は持分譲渡して工商変更登録完了後の6か月から1年間の間に、税務機関から持分譲渡に係る所得税に対し、税金の補足または説明をするよう通知される事例が少なくありません。企業は持分譲渡をする際に、法律法規の規定や法的リスクを考慮に入れず、持分譲渡完了後、税務機関より譲渡益に税金を調整されれば、被譲渡者に税金納付の法的責任を増やすことになります。
下記はある企業のトラブルを説明したものです。
一.事例
某電力施工業者である甲社の登録資本は100万人民元で、出資者A社は持分を100万人民元の価格でB社に譲渡しており、かつ法律に基づき工商部門にて持分変更登録の手続を完了しました。譲渡契約に譲渡益に係る所得税はB社が負担すると取り決められましたが、持分変更登記および譲渡金支払い完了後、税務機関から甲社、A社およびB社に持分譲渡の状況を説明するようにとの書簡が出されました。というのも、甲社名義での国有土地1件の時価は2,000万人民元以上であると評価できても、譲渡価格は100万人民元しかないと税務機関から説明されたからです。
甲社は、税務機関の要請をもって自己査定し、税法の関連規定に基づくと、B社が最低500万人民元の税金補足リスクに面する可能性があると判断しました。A社とB社はそれほど高い税額を予想していなかったため、相互協議後、譲渡取引を取消するよう人民法院に起訴しました。発効判決をもって工商部門にB社からA社への新たな持分譲渡を手続きし、持分主の身分が元に戻されました。
二.税務機関による持分譲渡に対する監督
以前、実務、持分譲渡において、関連会社の間に取引契約における取引価格は真面目でなく、1人民元の価格まで持分譲渡した場合もあり、税務機関と工商部門から質疑されない事例もありました。実際に「税務工商協力による持株譲渡情報共有についての通達」(国税発[2011]126号)により、工商行政管理部門が税務部門に提供する情報は以下を含めています:
「有限責任会社による工商行政部門に持分譲渡変更登録の持分譲渡済の関連情報、営業許可証登録番号、会社名称、所在地、持株主の氏名または名称、持分主証書類型、持分主証書番号、持分主出資額、出資割合、登記日期など。」
持分譲渡の工商登録変更の手続完了後、工商部門は持分譲渡の内容と形式における合法性のみを審査し、取引価格の妥当性を審査・判断しませんが、税務機関は工商部門から提供された持分譲渡の登録情報に基づき事後審査・監督します。この段階では譲渡行為が完了しており、一旦税務機関から取引価格は低すぎ、または納税調整必要だと判断されれば、譲渡者と被譲渡者は難しい状況
に置かれ、譲渡取引コストは当初の予想より高くなる可能性があり、極端な結果は前述の事例の如きです。人民法院に当該取引の取消しするよう起訴して元の持分主に戻すことは、一種の方法です。ただし、元の持分主に戻すという新たな取引は、税務機関の認可を取得できるか否かについて、起訴提起決定前に十分な評価を行い、関連の行政機関と連絡をとるよう提案します。
2014年から、税務機関の管理システムの更新に伴い、税務機関と他の行政機関との情報共有がさらに整備されています。企業は持分譲渡をする際に、取引価格の合理性や税金調整のリスクを十分に考慮する必要があるでしょう。
鄧 勇弁護士:中山大学法学院税法修士卒業。10年近く広州大手法律事務所にて日系企業を含む多数の国と地域のお客様に法律サービスを提供。クロスボーダー投資、プロジェクト融資、銀行ローン、担保抵当、M&Aにおける税務、有限会社から株式会社へのシステム変更、企業清算・更生、店頭取引(新三板)上場、技術の輸出入およびクロスボーダーサービス貿易などの分野に豊富な経験を所持。
刊行物・論文
みずほ実業銀行香港支店、国際法律事務所連盟Terralex、日本貿易振興機構広州代表所およびその他の刊行物にて『〈反価格独占規定〉などの規定の紹介』、『持分譲渡における税務処理に関する問題』など10数件ある。
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