尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.27
労働契約を終了又は解除できない事由
中国では、妊娠、産休又は授乳中の女性従業員を解雇できないのでしょうか。また、他にもどのような場合に従業員を解雇できないでしょうか。
労働契約を解除できない場合
従業員に以下の事情がある場合、使用者は労働契約法第40条(書面による事前通知等が要求される予告解除)と労働契約法第41条(整理解雇)に従い労働契約を解除することができません。
① 職業病の危険に接触する作業に従事する従業員に、離職前の職業健康診断を行なわず、又は職業病が疑われる病人で診断中もしくは医学観察期間にある場合
② 当該使用者において職業病を患い、又は労災により負傷し、かつ労働能力の喪失もしくは一部喪失が確認された場合
③ 病を患い、又は労災以外で負傷し、規定の医療期間内にある場合
④ 女性従業員が妊娠、出産、授乳期間にある場合
⑤ 使用者の下において連続して15年以上勤務し、かつ法定の定年退職年齢まで残り5年未満である場合
⑥ 法律、行政法規に規定するその他の場合
他方、労働契約法第39条(書面による事前通知等が要求されない即時解除)に基づく労働契約の解除については、従業員が上述の①〜⑥のうちいずれかの事由に該当しても使用者は労働契約を解除できます。これらの即時解除理由は、従業員の過失が大きいため、会社の利益が優先されるのです。
労働契約が終了しない場合
上記は、労働契約を契約期間の途中で解除する場合の制限です。では、労働契約で定められた契約期間が満了するときに、上述の①〜⑥のうちいずれかの事由が存在する場合はどうなるのでしょうか。
労働契約の期間が満了したとしても、上述の①〜⑥の事情がなくなるまで労働契約は延長(順延)されます。
例えば、従業員の妊娠期間、出産期間、授乳期間に労働契約期間が終了する場合です。この場合、労働契約が更新されなくても契約期間が延長され、授乳期間(出生後12か月満了時まで)の終了により契約が終了します。この場合、使用者は当該従業員に対し「労働契約の順延通知」を出すことで、「(契約順延は)労働契約の更新ではない」ことを明確にするとよいでしょう。
但し、労働能力の全部又は一部の喪失については、労働能力が回復することが期待できないため、国の労働災害保険に関する規定に従う必要があります。
労働組合の解除手続への関与
使用者が労働契約法第39条、第40条により労働契約を一方的に解除する場合、事前に労働組合にその理由を通知しなくてはなりません。契約解除の理由が法律、行政法規の規定又は労働契約の約定に違反している場合、労働組合は是正を求めることができます。使用者は、労働組合の意見を検討し、その結果を労働組合に書面で通知しなくてはなりません。
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尹秀鍾 Yin Xiuzhong
慶應義塾大学法学(商法)博士。東京と北京の大手渉外法律事務所での執務経験を経て、2014年に深センで広東深秀律師事務所を開設。2020年春に広東卓建律師事務所深セン本部にパートナーとして加入。華南地域の外国系企業を中心に幅広い法務サービスを提供。主な業務領域は、外商投資、M&A、労働法務、事業再編と撤退、模倣品対策、紛争解決など。
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