RGF高山典久氏が、 伊藤忠ファイナンスアジア樋口千春氏にインタビュー
アジアを中心に、海外での現地採用・グローバル人材採用を支援するリクルートの海外法人ブランドRGF(リクルート・グローバル・ファミリー)の香港拠点長 高山典久氏が、
伊藤忠ファイナンスアジア取締役社長 樋口千春氏に、中国・香港の今をインタビュー。
IT化、プラットフォーム化が進み、グローバルビジネスが盛んになってきた昨今。
日本企業に限らず、海外展開を当初から念頭に据えたビジネスを展開する企業も多い。
ただ、現地にいるからこそ分かることもある。
【伊藤忠の香港におけるビジネスは?】
■高山:伊藤忠ファイナンスアジアさんはどのようなビジネスを行っていらっしゃいますか?
■樋口:香港・中国において金融業向けへの投資ビジネスです。具体的には4つの事業への投資を行っています。消費者金融事業、対中国の投融資事業、リース事業、中古車関連事業の計4つになります。日本国内をベースに、海外では現状3拠点、香港、タイ、イギリスで事業展開しています。ノンバンクを対象に一定の出資に伴う経営関与を行い、ビジネス拡大を目指してハンズオンで関わっていき、持分法適応によりその事業拡大利益を取込ながら配当も得る、というシステムです。商社として培ったビジネスのノウハウを生かし、海外での事業案件を発掘し、経営関与して投資先の利益を拡大していくことを目標としています。
■高山:香港拠点のカバーエリアはどこですか?
■樋口:現在は中国・香港を基盤に、北京・深センに人を送っています。一方で、アセアンはこれから着手するところです。このビックマーケットは魅力的ですね。まずは、香港中国を固めて、アセアンに進出する。そういった展開を想定しています。
■高山:4つの事業の柱のうち、リース事業とはどういったビジネスですか?
■樋口:東京センチュリーリースという、みずほ系大手とのジョイントベンチャーで、日系企業を中心とした設備系のリース事業を中国大陸で行っています。伊藤忠中国からも営業支援を行っています。日系企業以外であれば、建設機械のリースを現地建設業者様に行っています。
■高山:金融投融資事業とはどのようなものでしょうか?
■樋口:3~4年スパンの投資や1年程度の融資などを行っています。2011年8月には、香港に本社がある中国中信集団傘下の投融会社へ伊藤忠グループとして25%の出資を行いました。
■高山:消費者金融事業とは?
■樋口:1~2年以内に、中国市場と香港のビジネスボリュームが逆転するとみられている収益規模の大きなビジネスです。香港最大手の一社として個人向け無担保ローン事業を行っているUnitedAsiaFinanceLimitedに対し1996年より出資しています。2007年からは深センを皮切りに、現在までで中国大陸の15都市へ進出済です。
■高山:中古車関連事業とは?
■樋口:1年半前より深センで中古車オークションのサービスを提供しはじめました。中国での自動車の流通量は年間、中古車で500万台、新車で2,200万台ですが、今後2~3年で新車と同じくらいの流通量になると見込まれており、ここ数年、多くの事業者が中古車オークション事業へ参入しています。中国市場はまだまだこれからで、先発の同業他社がようやく黒字化してきているという状態です。中古車マーケットは大変面白く、世界のあらゆる人が狙っていて、IT企業も多く参入しようとしています。欧米系のVCなどからの中古車関連ビジネスへの出資もどんどん入ってきています。
■高山:事業の利益の大半は華南地区ですが、香港に拠点があるのは何故ですか?
■樋口:金融業にとって、お金の調達が世界から出来るという意味で、香港は魅力的ですね。デモの影響が取り沙汰
されていますが、当社関連の金融ビジネスについて全く不安はありませんでした。香港にある消費者金融のUAFは大型の資金調達活動を現在行っていますが全く問題ありません。当社の顧客もデモ隊に近いビルの中の店舗では来客が減っているかも知れませんが、お金が必要な人は別の店に行って借りているイメージです。他事業で言えばリースは深セン、投融資は中国大陸がメインなので香港のデモとは関係ないですね。
【海外で拠点運営を行うとは?】
■高山:香港拠点の運営で困ったことなどはありますか?
■樋口:私は、香港が海外初体験ではなく、以前中近東で勤務していたので、そことの違いで申し上げますと、日系企業のすべてで、オフィスでは日本語が使われていることに驚きでした。これは、中国大陸も同じでした。中国人は、みんなパーフェクトな日本語を使い、日本人より上手い報告書が出てきたりして驚きました。全く海外に来ている気にならなかったですね。日本で若い方と付き合っている感じと変わらない。自分が赴任してきたタイミングでは組織が出来上がっていたので皆様が感じるほど大変という感覚はありませんでした。
■高山:人材について、これまでの採用方針を教えて頂けますか?
■樋口:求める人材は、「自分で何かアイディアを考え、周囲を巻き込み、事業計画を立ち上げ、自ら事業にコミットしていく人」です。日本でも、香港でも、変わりません。出資先案件を拾ってくるような、投資家のようなビジネスもありますが、根っこにあるのは、事業を育成していくこと、ハンズオンしていくことです。「現地採用の方に中に入ってもらい、我々日本人は半歩下がって外から中を見る」ということも大事だと考えています。事業家魂を持っていてくれなければ、いかにマーケットの専門知識があったとしても弊社のニーズには合いません。「社長になりたいか?」という想いがあることが、弊社の企業理念の根幹にあると思います。自ら10億円くらい事業で稼ぐというマインドがないと発想や人間そのものが小さくなってしまいます。また、現地で新卒・第二新卒などを採用して育てるなどの可能性は大いにあります。海外にチャレンジするならば、まっさらな方がいいと思います。「ガッツ」「言葉」「言葉以外のコミュニケーション能力」は必須です。まだ誰もやったことのない商売をやってみようというような若い方が魅力ですかね。若手企業家などいいですね。海外で新しい事業に飛び込んでもらい、頑張ってもらう。それを受け入れること、そういったチャンスを若い方に広げることは、会社の役目と言うよりも、私達のような世代としての役目だと思います。
〈高山さん後記〉
樋口さんとは香港の日本人商工会で出会いました。山登り、ランニングといった共通の趣味もあり、共に海外で日本企業の飛躍を目指し、ここ香港で日々奮闘しています。
【樋口さんプロフィール】
1962年生まれ。伊藤忠商事入社後すぐにアラビア語の研修で2年間をカイロで経験。その後イスタンブールに6年間駐在し、自動車関連事業に従事。2001年より金融関連事業に参画し、2011年より香港駐在。伊藤忠商事はこのほど、6020億円を香港に上場する中国中信(CITIC)に投資することを決定した。
【高山さんプロフィール】
1982年生まれ。日本で大手製造業・商社を対象とした中途人材採用コンサルティングに従事した後、2011年よりリクルート・ホールディングスの海外人材斡旋事業であるRGFに参画。現在、RGF香港法人の拠点長を務める。日系企業への人事戦略・組織構築の提案だけでなく、金融・IT分野を中心に外資系企業へのビジネス拡大に挑む。
RGF HR Agent Hong Kong Limited
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