PPWビジネス通信 × アナシス Vol.38
人事労務のアナシスによる誌上相談会
「Withコロナでも一部で採用が復活しているというのは本当でしょうか」
問い:弊社の業績は悪く、また報道でも経済環境の厳しさが聞こえる一方で、採用が活発化しているという声を聞きます。実態はどうなのでしょうか。
黒崎:ご質問のように厳しい経営状況の企業がある一方で、業容を拡大している企業があるのは事実です。そこに必要なのは人材の引き留め(リテンション)と採用の成功。業績に格差がでている現在、雇用に対する考え方にも差が出ていますが、成長の機会を逃さないためにも検討しておくべきテーマです。
実は弊社でも昨年末からこの3月までの間で上海に2名増員しています。香港も全般的な景気の低迷感はあるものの、一部の企業は営業職など積極的な採用活動をおこなっています。悪いニュースは取り上げられやすいものですが、景気のいい話は遅れてやってきます。「こんな環境下でも人が辞めていくのか!」という驚きの声とともに辞職願が飛び交うという話が入っています。
一方でなかなか応募者が集まらないという声も少なくありません。リスク回避でなかなか動かない人達もいるでしょう。離職理由の中で増えていると思われるのが将来への不安です。先行き不透明感からの企業の「安定性」「安全性」を求めての退職などが、これまでのような待遇や人間関係問題以外にも出てきています。特に一昨年からいろいろあった香港ではここはキーとなると考えます。
私が採用に関していつも強調するのは、「欲しい人材はいつだって売手市場にいる」という認識を持つということ。解雇も増え、失業率が上がり、賃金上昇は昨年よりも低くなるなど、多くの従業員にとっては厳しい昨年から今年でしたが、だからといって「転職しないだろう」という思い込みは厳禁です。全社のリテンション戦略と方針を検討しておくことと、採用力を上げるという不断の努力は必要なのです。
リテンションに関して言えば、そのターゲットを定め、優先順位をつけておく必要があります。そしてどれくらい長く勤めて欲しいのかという問いを、現実を見ながら考えてみてください。転職は当たり前なのが香港・華南です。採用・育成コストを考えれば、すぐ辞められては困りますが、キャリアパスもないのに長く勤められてもその職務に対してオーバーペイとなってしまうという組織は多いでしょう。安住してしまった従業員が、組織にネガティブなリーダーシップを発揮してしまうことも多々見られます。
リテンションはどんな人をどれくらいの長さで引き留めておきたいかによって、全体対策も個別対策も変わってきます。人によって求める報酬は違います。その報酬とは金銭的報酬もあれば、戦略、仕事そのものや仲間達、成長機会や日々の存在価値の承認といった非金銭的報酬も含まれます。それがトータルリワードと呼ばれるコンセプトです。
さて、次は採用を考えてみます。厳しい経済状況というニュースの一方で、物不足や対応しきれないオーダー、華南では春節明けのワーカーの確保問題など、課題は山積み。採用はそのひとつ。そこには採用力の向上という経営の永遠のテーマがあります。採用力とは「企業力x採用活動x熱意」で表せます。募集する魅力ある仕事とその待遇、職場環境や福利厚生、知名度や規模といった企業力。賃金を上げれば良いというモノではありません。しかも限界があります。しかし採用活動にはまだまだ工夫の余地があるでしょう。採用担当者の魅力や熱意が採用を成功させることは、当地でも見受けられます。それら要素のかけ算が採用力を上げることになります。
withコロナでの採用での注意点としては、香港が少し特殊です。香港ではなかなか転職出来ていない人達が、希望給与を前職より下げてくるケースも見られます。下がった額はリーズナブルに見えますが、昔の給与に戻れる他のオファーがあればすぐに動いてしまうこともあり得ますので本音を探る必要があるでしょう。また、香港では在宅勤務がある程度一般化してきていると思われますが、その適応力の確認なども必要です。あるいは移民問題や政治問題などもセンシティブな話題です。そうした未来への展望を転職に掛け合わせて応募者は考えています。経営側として、どんなビジョンを見せられるのか。今の採用はそう簡単ではないのです。用意周到でリテンションと採用をお考えください。
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