目から鱗の中国法律事情 Vol.70

2022/08/10

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国で新制定された「先物およびデリバティブ法」 その3

前回までで、「先物およびデリバティブ法」(中国語原文は「期貨和衍生品法」)の定義規定をある程度噛み砕いた説明をしました。今回もその続きです。

先物およびデリバティブとは?(続き)
今回は、「スワップ契約」と「先渡契約」の噛み砕いた説明を見てみましょう。

「スワップ契約」とは、「先物契約」や「オプション契約」と似ていますが、売買ではなく、将来のあらかじめ決められた日に、あらかじめ決めておいたモノ同士を交換する契約のことです。しかし、前回の説明を見ていただければ分かりますが、「先物およびデリバティブ法」では「スワップ契約」を特に「金融契約」としています。そのため、「先物およびデリバティブ法」におけるスワップ契約の対象は金融関係に限るということになります。例えば、将来の一定の時期に、その時の為替レートを予測して、日本円と人民元を交換するなどです。また、外国の通貨との交換に限らず、このお金から生じる利息を交換しようという場合もあります(それぞれ異なる変動利息の交換を約束しておけば、同じ通貨でも利息が異なり、交換する意味が生じます)。

そして、「先渡契約」とは、あらかじめ決められた日に、決められた価格で特定の商品を売買する契約のことをいいます。この定義だけ見ると、先渡契約は先物契約と同じということになります。しかし、「先物およびデリバティブ法」上の「先渡契約」は、「『先物契約以外の』、将来特定の時期および地点で特定の目的物を一定数提供することを約束する金融契約」と定義づけています。そのため、契約の定義は同じでも、先物契約は「先物取引所で、統一的に定められた基準によって~」行われる契約、一方、先渡契約は、「先物取引所以外で」行われる契約を指すことになります。P20 Lawyer_847 v2

「先物およびデリバティブ法」上の規制
 さて、「先物およびデリバティブ法」における定義の説明が長くなってしまいました。そろそろ本題である「先物およびデリバティブ法」上の規制内容について見ていきましょう。

例えば、「先物およびデリバティブ法」第17条第3項には、以下のような規定があります。「先物契約および標準オプション契約は、経済的価値を有し、契約は容易に操作されないもので、公益に適合していなければならない」と規定されています。先物契約やオプション契約は、商品の時価変動に応じて大きく利益をあげたり、大きく損することもあるので、操作ができないようにしなければならないという規制が入っているわけです。(続く)

 


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi

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