総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続いています。中国や韓国のように初期に感染爆発したものの、徐々に落ち着きを取り戻しつつある国もありますが、多くの国では感染阻止の目途が立たないままでいます(4月上旬時点)。世界を大混乱に陥れたこの新しいウイルスは、我々の前に現れてからまだ半年も経っていないのに、多くの生命を奪い、経済活動や市民生活に多大な影響を与えています。こんな状態がいつまで続くのか誰にも正確な予想はできませんが、いつか必ず終息を迎えるはずです。ただ、今回は2003年のSARSとは違い、強い感染力を持つことから完全に姿を消すことはないと思います。2009年のH1N1新型インフルエンザと同じように、何らかの形で我々の世界に残るのでしょう。ワクチンや新薬は、現在世界中でその開発にしのぎを削っているものの、実際にその恩恵を受けるのは来春になるというのが、多くの専門家の見解です。それまでは既存の医薬品で効果的なものを選んでつなぐしかないのかもしれません。
COVID-19
さて、流行中の新型コロナウイルスの名称ですが、一部に「武漢肺炎」などと地名をつけて呼び続けている人たちがいます。正式な名称は「COVID-19」、通称は「新型コロナウイルス肺炎」などで地名はついていません。世界保健機関(WHO)では、新しい疾患名に地名などをつけることを認めず、分かり易く呼びやすいものとしてCOVID-19としましたが、これに対して、WHOが中国政府を擁護したというような論評を展開して、あくまでも武漢肺炎であると主張を変えない人たちがいます。ネット上でも軋轢が生じており、私が知るところでもフェイスブック上の関係を断ってしまうなど、人間関係にまで影響を及ぼしているようです。ちなみにWHOが疾患名に関して新しい指針を決定したのは2015年のこと。したがって今回の新型コロナウイルスの名称に武漢や中国を使わなかったことは当然のことであり、何もWHOが中国政府に媚びたわけではありません。
地名を名称としない理由
疾患名に地名が含まれているものには、インフルエンザの関係だけでも、スペイン風邪、香港風邪、アジア風邪、ソ連風邪といったものがあげられます。コロナウイルスに限れば、中東呼吸器症候群(MARS)が該当しますが、この名称をつけてしまった反省から、WHOは疾患名には地名はもちろん動物の名前も使用しないと決めたのです。これは、疾患の名称が差別や誤解を生み、時として人々の分断をも生じさせてしまう可能性を危惧したからです。2009年のH1N1新型インフルエンザはメキシコで初感染が認められたことから、メキシコインフルエンザとも一部で呼ばれていたのです。しかし、メキシコからの不法移民や米国内での不法就労と結び付けられたりしたものです。また後に豚インフルエンザと呼ばれたものの、これによって養豚業界に大きな影響を与えてしまいました。
人々を苦しめる疾患名
日本脳炎という感染症も、日本人にとって面白くない名称ですよね。そのほか寄生虫疾患では日本住血吸虫というものもあります。世界的には広東住血線虫、東洋毛様線虫、アメリカ鉤虫(こうちゅう)、マレー糸状虫など少なくはありませんが、多くは風土病のような側面もあり世界的な感染拡大はないものの、その土地の人々はある種偏見の目にさらされたことは確かです。
また水俣病、四日市ぜんそくといった公害病にも地名がつけられていて、教科書にも掲載されていることから、子供のころから何の疑問を持つこともなく呼んでいたものです。しかし、その土地に住み、特に病気に苦しんできた人々は、いわれなき差別や偏見に長く苦しんできたことも事実です。
ウイルスには好ましい命名を
新型コロナウイルス肺炎を武漢肺炎と呼ぶ人たちの気持ちも、この半年ほどの香港政府や中国政府の対応から、まったく理由理解できないわけではありませんが、武漢の人々には何の罪もありません。アメリカ、トランプ大統領は悪意を込めてChinese Virusと呼びましたが、これには現に多くの人々が苦しむ感染症を政治問題にからめるなど、その品格を疑いたくもなります。世界中で1億人が死亡したと言われるスペイン風邪はアメリカのシカゴで生まれたインフルエンザです。当時は第一次世界大戦の真っただ中、当然のことながら関係国はインフルエンザの自国での流行情報を発信することなど一切しませんでした。もしアメリカが最初に世界に向けて情報発信していたら、歴史は違った形になっていたのかもしれません。当時、中立国であったスペインが情報発信したことからスペイン風邪と呼ばれることとなったわけです。スペイン政府が不名誉なことであるとしてアメリカ政府にその名称変更を求めたら、さてトランプ大統領は何と応えるのでしょうか。これをAmerican Virusに名称変更すると言うならば話は分かりますが、今般の新型コロナウイルスの情報をいち早く公表しなかったからといっても、この名称をChinese Virusとは呼べないはずです。
ウイルスの名前がどうとか、初期情報発信がどうとか、あるいは人造ウイルスだとか、様々なことを政治問題に絡めて為政者が取り上げていますが、そんなことをしている時間的余裕はありません。政治体制が違おうと、全世界的な危機を早く乗り切るためには、あらゆる国が協力して対策にあたらなければいけないはず。厳しい戦いはまだまだ続きそうですが、世界の協力の元、来年の今頃はきっと明るい希望に満ちた春を迎えていることを期待したいものです。
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