総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:医療機関・医師の選び方
海外に長期滞在するにあたって、医療のことは誰にとっても大きな心配事のひとつです。言葉が通じない異国で体調を崩してしまったらどうしよう、現在治療中の病気を海外でも引き続きみてほしいが、どこの病院に行けば良いのかわからないなど、海外赴任に伴って多くの人が漠然とした不安を抱くのではないでしょうか。小さな子供を連れての海外赴任ではなおさらのことです。自分の期待に適う医療機関や医師をどのように探せばよいのかという質問をしばしば受けるので、簡単にまとめておきたいと思います。
メディポート代表:堀 眞
まずはすでに在住している日本人の評判を聞いてみましょう。何人かに聞いてみて、比較的高い評価を得ている病院やクリニックをリストアップすることがその第一歩です。その上で利便性などを考えて医療機関を選び、受診してください。もちろんこれで良いというわけではありません。受益者としての患者は、初めて会った医師に対してこれからも頼れるのかどうかを判断しなければいけません。その基準は自分にあった良い医師を探す上でとても重要なものですから、そのことを念頭に診察を受けることが大切です。これは海外生活をする人だけに限るものではなく、若干異なる部分はありますが基本的には日本で良医を探す場合にも役立つことです。
それではその基準を紹介しましょう。
(第1印象)
初対面の医師。実際に会ったときの第一印象はとても大切です。良医を前にすると、たとえ不安でいっぱいの患者であったとしても、ホッとすることが少なくはありません。反対に嫌な医師に当たってしまったなと思ったら、たとえ親しい人に紹介された医師であったとしても自分の医師リストからそっと外しましょう。最初の印象はその医師との信頼関係を築けるかどうかを判断できるくらい大きな部分を占めます。
(診察態度)
もちろん診察全般を通しての印象も大切です。患者の顔、目を見ないで診察・問診する医師は信頼できません。医師と患者は対等です。上から目線で決めつけたような診察をする医師は避けたいもの。一般的に医師はある程度診断名を想定しながら患者に問診するものですが、YesかNoでしか答えられない質問しかしない医師も好ましくはありません。もちろん診察中の患者の質問にも具体的にかつわかりやすく答えてくれる医師が望まれます。
(患者への説明)
通り一遍の診察で断定的な診断を下してその説明をしない、あるいは説明を求めても面倒臭そうな態度を示す医師は次回から避けたいものです。たとえ難しいことでも患者にわかりやすく解説してくれる医師の能力は高いといえます。どのような専門家でも難しいことをそのまま説明することは簡単なこと。しかし、門外漢の素人にもわかりやすく説明するには、それなりの高い能力が必要になるものです。
(セカンドオピニオン)
大きな病気の診断を受けた時は、セカンドオピニオンが欲しいものです。セカンドオピニオンの話を切り出した途端に態度が変わる医師は、自分の診断に自信がない証拠です。セカンドオピニオンを求めることは患者の権利です。信頼できる医師は、すぐに診療の記録を出してくれて気持ちよくセカンドオピニオンに送り出してくれるものです。
(医師の紹介)
具合が悪い時、先ず受診する医師は一般医-ジェネラルドクターです。専門医の診断が必要であるのかどうかを的確に判断し、必要であればすぐに紹介状を出してくれる医師は良医です。自分で確たる治療法が見つからないにもかかわらず、根拠なくいろいろと検査をしてみたり、薬を試してみたりして患者を離そうとしない医師は良くありません。
(薬の説明)
最近、解熱剤と抗生物質の処方が多すぎるのではないかとの議論があります。風邪と診断して何の説明もなく抗生物質を処方したり、熱があるからといって闇雲に解熱剤を処方する医師は、あまり感心しません。日本人は患者からこのような薬を求めることが多いようですが、これらの薬に限らず、医師またはスタッフがきちんと説明してくれる医療機関は信用できるところです。
最後に歯科医師の選び方です。歯の治療は患者の免疫力が及ばず、100%歯科医師に治療を委ねることになります。もちろん削ったり抜いたりした歯は決して元には戻りません。また口腔内の状態は百人百様、誰ひとりとして同じものはないので、たとえ誰かが絶賛している歯科医師であったとしても、自分に合うという保証は全くありません。最初は評判が頼りでも、実際に歯科医師に会ってみて、その時のフィーリングで判断しても良いと思います。もちろん治療方針、治療費、リスクなど治療に先立って丁寧に説明してくれる歯科医師を選びたいものです。治療に入る前の段階で納得できなければ、治療を断る勇気を持つべきです。保険治療の対象とはならないこともあって、歯科治療で最も多い不満は治療費に関すること。次に治療内容に対するもの。最初の説明にすべて納得したうえで治療を受けてください。
医師や歯科医師あるいは医療機関を選ぶ場合に、自分の希望を完全に満たしてくれるということはほとんど期待できません。ある程度の妥協が必要ですが、自分から医師・歯科医師に近づいていくことも必要であり、その方が患者メリットは大きいと思われます。繰り返しますが医療者と患者は対等です。若干の違和感があったとしても、診療や治療に対する自分自身の希望はもちろんのこと、自身の情報も医師等にできる限りオープンにすることも大切な診察作法といえますし、医師らとの信頼関係を構築することに役立ちます。海外で病気治療することがないのが理想ではありますが、何が起こるかわかりません。病気には縁がないと自信を持っている方でも、普段から万一のことを考えておきたいものです。