総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:がんでは、死ななくなる!
爽やかな春が過ぎ去り、5月に入ると蒸し暑さが急に増してきました。春節から4月ころまでのおよそ3か月間、肌に湿気がまとわりつくほどの高い湿度が続くはずの香港なのに、今年はとても快適な珍しい気候でした。これからの季節は大雨と台風に注意が必要になりますが、例年とは違う今年の春の反動が来ないものかと少々心配になってしまいます。今年ほど過ごしやすく気持ちが良い春は、香港に30年以上住んでいるにもかかわらず初めてのことで少々不気味でもあります。もちろん快適な気候は嬉しいものですが、たとえうっとうしい天気が続いても、これはその季節特有のもの。それがまったくないと妙に落ち着かないものです。
さて、今回はがんのお話。今も私たちの健康を脅かす最大の病気のひとつです。がんの診断を受けると、誰もが死を意識してしまうと言います。ある患者から、人生を強制終了させられるようだと聞いたこともあります。もちろん早期発見できれば完治する可能性がとても大きい事実も一般に知られているので、たとえがんが発見されても早期であればひとまず安心できます。内視鏡検査やPET検診、あるいは婦人科検診など、がんの発見に様々な方法が採用されており、がんの発見とその治療成績の向上につながっています。さらに自己検診が普及している乳がんは、かつて厄介ながんのひとつだったことが嘘であるかのように治癒率が向上しています。このようにがんの診断技術、治療技術、そして自己検診に見られる一般の人々の意識レベルの向上が一体となって、がん治療の成績を大きく押し上げています。
がん治療の基本
これまでのがん治療は、手術、放射線治療、そして抗がん剤投与というものが基本でした。したがってがんの大きさや転移の程度は、治療方針を決めるにあたっての極めて重要な基準であり、これをステージとして表しています。がんが原発病巣に留まっているステージが低いものであれば手術で完全に取り除くことができます。もちろんこの場合でも周辺のリンパ節に転移している可能性もあるので、近接のリンパ節をすべて切除するのが一般的です。ここまでにとどまっているのであれば放射線治療なども含めて完治できる可能性が期待できますが、さらには遠隔にまで転移してしまうと、これまでは抗がん剤に頼るしか治療法はありませんでした。抗がん剤はその副作用が強く、治療に耐えられない患者も少なくありません。これではがんと闘うのではなく、抗がん剤との戦いです。
最先端がん治療
正常な組織とがん組織(細胞)を正確に見分けることができれば、治療薬での副作用は劇的に減らせるはず。そこで開発されたのが「分子標的治療薬」です。がん細胞のタンパク質や遺伝子を選択的・効率的に攻撃するため、遠隔転移している場合でも正常な細胞をほとんど傷つけずに、がん細胞のみをたたけるのです。またこれとは異なる免疫療法というものにもスポットライトが当たっています。この新しいがん治療薬は「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれるもので、日本ではオプジーボが有名です。2018年ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑先生を中心とする京都大学医学部の研究チームが開発したものです。がんの治療は、ここ10年ほどの間に著しく進歩しており、生存率を劇的に向上させています。本庶先生は、「近い将来、がんは死なずにすむ病気になる」と言います。つまり普通の生活習慣病のように、薬を飲んでいれば何も心配がない病気になるのです。とても信じられませんが、今の今でも、10年前は想像もできなかったほど治療成績が向上しているので、今後を大いに期待したいものです。
平均寿命への影響と対策
がんによる死亡リスクがなくなると、平均寿命がおよそ8年延びるという予想があります。これを加えるだけでも日本人女性の平均寿命は95歳に達します。男性も90歳代に突入です。おそらく100歳人口は今の何倍にも膨れるので、自分もその仲間入りする可能性が大きいと考えておかなければいけません。寝たきりの高齢者も激増し介護問題は深刻化するでしょうが、だからといって高齢者を強制的に排除するなどできません。
人口減少の中、将来的に福祉をあてにするのは楽観的すぎます。しかし、自身の健康状態を良好に維持できれば、幸福度は高まります。寝たきりになって、毎日天井を見るだけの生活だけは避けましょう。100歳での目標は、自分でトイレに行けることだけ。たったそれだけのこと。備えはできる限り若い時からの方が良いですよ。100歳になっても人の手を借りずにトイレに行けるのは、フルマラソンを3時間以内で完走するほどの厳しい目標設定になるのかもしれません。決して簡単な目標とは言えませんが、無頓着に過ごしていると、後悔する可能性がとても大きくなります。
目指すはピンピンコロリです。100歳まで生きるかどうかは別にして、とにかく死ぬまで元気でいること。昨年95歳で逝った父は、私が理想とする最期の姿を体現してくれるかのごとく、いつものように朝食を食べた後にコロリと逝ったそうです。特別なことをしていたわけではありませんが、昔から良く歩いていたようです。そう、とにかく歩く。これが最も大切な健康法であるようです。
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