メディポート健康コラム:厄介な痛風 尿酸のお話
尿酸と聞くと、イメージするのは痛風ではないでしょうか。この病気は、足指の関節など発作部位に風があたっただけでも痛いという激しい症状に見舞われるので「痛風」と称せられます。しかし、この痛みだけなら放置していたとしても徐々に引いて、特に投薬治療を受けなくても1-2週間ほどで何事もなかったかのように症状は消え去ります。発作は必ずしも激痛とは限らないので、手元の鎮痛剤を服用するだけの人も少なくありません。足の指関節が腫れて痛むだけであれば、命に関わるような大きな問題にはならず、関節に変形が起きたり尿酸結節ができたりするくらいです。もちろんそれだけで治まったとしても大変な事態であることに違いなく、直ちに尿酸値を下げる処方を受けなければいけません。ところが、たとえ高尿酸血症であっても痛みがなければ、積極的な治療を受けない人があまりにも多いのです。尿酸値が高い状態を放置しておいて本当に怖いのは、腎不全を起こしてしまう危険性があること。現在、透析患者の約1%は高尿酸血症で腎不全を起こしてしまった患者です。ひとたび透析治療を受けてしまうと、一生、週3度ほど透析用ベッドで長時間過ごさなければいけない生活になってしまします。
尿酸って何?
さて、なじみ深い名称ですがそもそも尿酸とは何でしょうか。関連の「プリン体」という単語も有名ですね。初めて耳にすると甘いデザートではないかと想像してしまうかもしれませんが、尿酸の元はこのプリン体です。プリン体は細胞核の構成成分であり、あらゆる生物が持っているものです。したがって自分の尿酸値が高いという理由で、たとえその摂取を避けたとしても数値を下げるのは困難です。細胞が代謝されて古い細胞が壊される時には必然的に血液中に放出され、肝臓で尿酸がつくられ、最終的には腎臓から排泄されます。老廃物である尿酸ですが、実は体内ではそれなりの役割を担っている重要な物質です。そのため尿酸プールといってある程度の量を血液中にキープしているということはあまり知られていません。
尿酸は強力な抗酸化物質です。ヒトは酸素を利用して生きているわけですが、酸素を消費すると必ず一定量の活性酸素が生まれます。大きなエネルギーを持つ活性酸素は細胞を損傷するなどするため、直ちに取り除かなければいけません。そのためいくつもの抗酸化物質が体内に存在していますが、尿酸は中でも大きな役割を担っています。
痛風、痛風腎とは
痛風で足指などが激痛に見舞われるのは、尿酸の結晶が関節を刺激するからだと思っている人もあるようですね。しかし、棘のような尿酸結晶ではあるものの、それが直接突き刺さって痛いのではなく、その結晶が白血球によって処理される際に起きる炎症が激しい痛みの原因です。発作を繰り返すうちにやがて関節の変形などをきたしますが、これだけでは致命傷にはなりません。尿酸は腎臓を通して排泄されますが、高い尿酸濃度が長期間継続していると、腎臓の髄質という部分に蓄積して慢性間質性腎炎を起こします。これが痛風腎と呼ばれるもので、腎臓機能を著しく傷害し腎臓透析の原因になるのです。痛風を経験したことがなくても高い尿酸値が継続していると痛風腎の危険性が高くなるので、高尿酸血症を決して甘く見てはいけません。
尿酸と食べものの関係
尿酸の元となるプリン体を多く含む食品の代表としてレバーやビールが挙げられますが、一般的に健康的な食品と思われている魚介類にも多くのプリン体を含むものが少なくありません。お酒ではビールを避けている人も少なくないようですが、アルコール代謝の過程で尿酸産生を促すので、ビールだけが特別に悪いわけではありません。プリン体は旨味成分ともいえるので美味しい食品には多く含まれると思っていても良いでしょう。プリン体を完全に避けた食生活は不可能ですが、取り入れるプリン体の総量を意識したいものです。と言っても何にどれだけのプリン体が含まれているかはわかりませんから、要は太らない食生活を心掛けるのが基本と思っていてください。太るときはプリン体も多く取り込んでいるわけですから、普段から体重増加に気を付けながら美味しいものを食べるようにしたいものです。
運動性高尿酸血症
最近、日本では20歳代の若者の痛風患者が増えているそうです。かつて痛風は中高年男性の病気だといわれていたものです。さらに食生活が質素だった時代には贅沢病ともいわれていました。若者に多いのは「運動性高尿酸血症」による痛風です。尿酸を多く作りやすい体質(遺伝体質)であったり、排泄が十分できない体質であったりすると、負荷が大きな運動を続けているうちに高尿酸血症をきたしてしまいます。ここ数年、運動性高尿酸血症と思われるケースを多く見かけます。たとえ運動が原因の高尿酸血症であったとしても、もちろん治療を考慮しなければいけません。
尿酸値は体質的に高くなることが多いので、食生活でプリン体摂取を控えていてもその改善は難しいと思います。高尿酸血症は循環器系疾患のリスクになるという情報もありますが、これは肥満が高尿酸の大きな原因のひとつだからでしょう。尿酸値が心配な方は肥満を避けることがもっとも大切な対応です。
藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。
医療・健康の総合コンサルタント Mediport International Limited
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