メディポート健康コラム:「心の病」について

2023/05/03

スクリーンショット (2401)長い冬が去り、花と緑に囲まれ希望にあふれると思われる春に、なぜか精神的に辛さを覚える人が増えるようです。日本では、新緑が色濃くなり少し暑さを感じる日が多くなるころに、引きこもりがちの人が目立ってくるのは毎年の恒例のようです。ご存じの方もあると思いますが、これは「5月病」と呼ばれるメンタルの不調です。もちろん大きな環境変化を原因とする精神的な不安定感は、今の時期に限らずたびたび起きるものです。また3年間にも及ぶ新型コロナ流行対策としてとられてきた行動規制や新しい働き方の導入が、少なからず人々の心に暗い影を落としてしまっているのも、精神不調に陥る人が多くなる原因になっていると思われます。
日本ではリーマンショック以来減少してきた自殺者数が上昇に転じています。しかも10歳台から20歳台でその数が目立って増えており、更に女性の自殺者数の増加も含めて社会問題化しています。

5月病
進学や入社あるいは異動などは、自分が置かれる場所はもちろん取り巻く周囲の人たちも含めて、環境が激変するものです。この時期、多くの人々が職場や学校、あるいは新しい人間関係に希望や期待を抱き、その環境に馴染んでいこうと一生懸命になります。気が張っていた4月が終わるとゴールデンウィークに入りますが、この連休が終わると学校や職場に戻れなくなってしまうのが5月病だと言われていました。緊張の連続だったところに長い休みが入って、気分的にゆっくりとできたあと、急に現実に戻されその環境に耐えられなくなるのです。眠れない、朝起きられない、食欲がなくなるといった症状の出現が多く、酷いとそのまま引きこもりになってしまうこともあります。しかし、実際には5月病と言われる精神疾患(精神的不調)は6月に入ったころから症状が目立ちはじめるので、時期的に大型連休が精神活動に影響するというより、新しい環境への不適合が、ある一定期間後に起きるものと考えられています。

コロナ鬱
新型コロナウイルスの流行でうつ病が世界的に増えています。国際的な機関による調査でも、コロナ前と比べると2~3倍もの患者数になりますが、その原因は一様に生活環境の変化と出口が見えない感染症に対する漠然とした不安が続いたからだと考えられます。個人的には在宅勤務の影響は想像するよりもはるかに大きなものだと思います。自宅などで仕事できることを歓迎する声が大きいのは確かですが、それを望まない人々の声なき叫びがあるようにも感じます。まず単身者の孤独です。一日中誰とも話さない日が続いて、その孤独感につぶされてしまうこともあるようです。また、家族が同居している場合でも、円満であれば家族で過ごす時間が長く取れるので在宅勤務は一般的に歓迎されますが、一方で家庭内に問題を抱えている人にとっては逃げ場がなくなり、お互いにぶつかることが多くなってしまいます。新型コロナの流行が我々の精神的領域にまで影響が及び、様々な問題を引き起こしているのは間違いなさそうです。

話を聴いてあげよう
自分の近くに精神的に困難を抱える人がいるかもしれません。現代社会ではこのような人が必ずと言っても良いほど身近にいるものです。そんな人から相談されたら、できる限り話を聴いてあげてください。「そのひと」は悩みを打ち明ける相手を慎重に選んだうえで相談してくるのです。相談されたあなたは「選ばれた特別に信頼できる人」である可能性がとても大きいのです。このような時にその人を突き放したり軽く扱ったりすると、行く場を失って、最悪、自殺まで考えてしまうことさえあります。病院に行けば良いのかもしれませんが、いくら心療内科が増えてその扉を開けやすくなったとはいえ、やはり医師に会うにはエネルギーがいるのです。助けを求めている人はすでにエネルギーを失っています。身近に信頼できる知人がいれば専門の医師など不要なケースがとても多いのです。

医師にも勝るあなたの力
医師にできて、医師以外にできないことは「診断と投薬」です。メンタルの問題に関しては、本来じっくりと話を聴かなければ診断できないはずですが、一般的に精神科領域の医師は忙しくて時間がないことも少なくありません。良医(名医ではありません)であるほど診察に時間をかけます。反対にろくに話も聴かずに薬を出す医師に良医はいないと確信します。精神科領域ではあいまいな診断が可能であるだけに、患者を薬漬けにしてしまう医師が現れる余地が大きいのです。そこで力になるのは精神科領域の専門家です。臨床心理士のような国家資格を持つ専門家だけでなく、民間の様々な資格を習得している人が多くいます。つまりメンタルの問題を抱える人々を支える資格者のすそ野は広く、さらに無資格の人であっても他人の痛みを理解できる人、話が聴ける人などは、その助けとなれる可能性がとても大きいのです。たとえ専門知識がなくとも、メンタルの問題の、特に初期段階にある人への対応は十分に可能です。じっと話を聴いてあげてください。あなたに救われる人がいます。「聞く」と「聴く」は違います。傾聴する気持ちがとても大切です。たとえ専門家ではなくても、同じ文化的バックグラウンドを持った人が、共通の言葉で対応する意味は想像する以上に大きなものです。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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