映画「ムーンライト Moonlight」
舞台は1980年代のアメリカ。自分の居場所とアイデンティティを模索する一人の少年の成長を、幼少期、青年期、成人期の3つの時代構成で描いたヒューマンドラマ。今月末に開催される第89回アカデミー賞の作品賞にノミネートされた映画「ムーンライト Moonlight」がついに香港で公開。
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校で「チビ」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄をされていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのホアン夫妻と、唯一の男友達であるケビンだけ。やがてシャロンは、ケビンに対して友情以上の想いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも想いを打ち明けられずにいた。「他の黒人と同じように」「ただ波の中を転がるように」生きることを選んだのだ。自分の心の奥にある感情を表す術を知らないまま大人になり、麻薬ディーラーとして働くが、やがて闇社会の中で身動きがとれなくなっていく。そんな人生を送ってきたシャロンは、いかにして心理的に解放されていくのか。
人種問題に関する議論が高まる今だからこそ、そこに踏み込むこの映画の役割は大きい。弱いとされる立場の人間のアイデンティティを代弁し、従来の固定観念を打ち破る力を持つこの大作を、ぜひ劇場へ観に行こう。
ムーンライト Moonlight
2月23日公開
監督:バリー・ジェンキンス
出演:トレバンテ・ローズ、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ