香港不動産市場動向 & 日本不動産への投資実情

2023/07/05

右肩上がりマーケット 【香港不動産市場】

26283324_mここ20年余り、天上知らずの香港不動産。主要都市の住宅購入難易度ランキングでは首位を独走しており、世界一マイホームを手に入れにくい場所といわれている。
さて、香港の人が不動産に求めるものは何なのか、またこのような土地で我々外国人でも不動産は購入できるのかーー。豊富な業界知識を駆使し、自身も長年に渡って不動産投資を行ってきたという東和不動産のサラさんに話を伺った。

 

サラ・オー (Sarah Or)さん
IMG_8585業界歴26年。得意の日本語を活かし、今まで数十社の日系企業、延べ1,000人以上の日本人に賃貸物件を紹介。自身も20代の頃から不動産投資を行ってきたという香港不動産のスペシャリスト。

 

富裕層移民によって支えられる市場
Q.香港で不動産はどのような位置づけなのでしょうか?
もちろん時期によって乱高下はするものの、不動産価格は20余年前から上がり続けています。株などは負けることも頻繁にありますが、香港の不動産は資産として安定しているので長期的な投資として運用している人が多いです。

Q.なぜこれほどまでに価格上昇が起きるのでしょうか?
背景には中国からの移住者があります。税金が安いなどの理由で中国の富裕層が移民としてどんどんやってくるので、住宅価格は上がる一方なんです。特に4年前までは投資移民といって、HKD700万以上の物件、もしくはHKD1,000万以上の株を購入すると家族で移住できる制度がありました。現在その制度は撤廃されましたが、弁護士や医師など高い能力を持った富裕層を優先的に居住させる「優才」制度は存在しており、政府は1日150人までの移民を認めています。ここ数年で香港から出ていった人は多いですが、逆に中国から入ってくる人も多いので価格が下がらないんですね。322949_m

 

半値以下に下落した過去も…。それでも市場は右肩上がり
Q.社会情勢によって不動産価格も上下しますよね?
主権移譲のあった1997年は不動産価格が半分以上も下がりました。またSARS問題があった2003年ごろも40%程度、イギリスがEUから離脱すると揉め出した2016年も同様に20%ほど下がりました。でもその度に市場は回復し、さらに上昇し続けてきました。

Q.今回のコロナも不動産業界に大きく影響しましたよね?
確かにここ2~3年は不動産市場も動きが鈍く、一時20%ほど値下がりしたこともありました。しかし現在は10%程度の下落まで回復しましたし、またすぐ元に戻るとみられています。

また売買価格は下がったものの賃貸料はそれほど下がりませんでした。特に今年に入って中国から入境しやすくなったことも影響し、家賃相場は徐々に上がってきています。不動産業界もやっと動き出した感じですね。

 

永住権の有無で変わる外国人の購入価格
Q.日本人でも不動産購入はできるのでしょうか?
中国以外の外国人も物件の購入はできますが、永住権がない場合30%の印紙税(Stamp Duty)がかかります。例えば、香港人であればHKD1,000万で購入できる物件が、永住権のない外国人はHKD1,300万になるわけです。投資目的での購入は難しいかもしれませんね。

Q.永住権のある人であれば購入メリットがあるのですね。
永住権のある人で香港に長期で住む予定の人は、高い家賃を払い続けるより購入したほうがいいでしょう。私が初めて物件を購入した1997年頃、住宅ローンの利息は10.5%でしたが、現在は2.4%ほどです。利息の面から考えると今は買い時と言えます。

Q.購入時期を見極めることも必要ですよね?
そうですね。紅磡(ホンハム)エリアのラグナ・ベルデを例に挙げると、1期ができた1997年には1sqf(スクエアフィート)あたりHKD9,500ほどで売り出されました。しかし5期が完成した2003年はSARSの時期と重なってしまったことでHKD4,000sqfと半分以下になりました。現在はいずれも大体HKD20,000/sqfほどで取り引きされています。このことからもわかる通り、不動産購入にはタイミングが重要です。

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日本とは違う「新築」と「中古」の価値
Q.新築物件の抽選会をよく目にします。やはり新しい物件ほど価値が上がるのですか?
確かに人気のある物件は完成前から抽選になることが多いです。ただこれは新築物件に住みたい人が多いというわけではないんです。同じマンションでも販売戸数を小出しにして、売る時期を何回かに分けることが一般的なんですが、初回はマーケットより価格を抑えて出す傾向が強いので、お得な時に買いたいと購入希望者が殺到するわけです。

日本では普通、新築物件は高く、築年数が経つほどその価値は下がっていきますよね。しかし香港の物件は古くなったから下がるということはありません。新築に住みたいと思う人も当然いますが、何よりも重視されるのは「エリア」なんです。ですので20年以上経ったマンションでも内装を綺麗にリフォームすればいいだけだと考える人が多く、場所さえよければ値下がりすることはありません。

 

値下がりしにくいエリアと近年の注目エリア
Q.値下がりしにくいエリアはどの辺りですか?
中環(セントラル)のミッドレベルは不動です。香港の人は居住地域にステータスを感じる傾向が強く、住んでいる場所で相手のレベルをはかる人もいます。従って物件そのものより住む場所にこだわりを持つ人が多い。そういった側面から、香港で不動産投資をするなら場所を重視して選ぶべきでしょう。主要エリアの物件でいうと、太古(タイクー)のタイクーシン、紅磡のロイヤルペニンシュラや前出のラグナ・ベルデなどは投資先としても花形ですし、九龍のザ・アーチやソレントなどは中国人のオーナーに人気ですね。

Q.いま注目のエリアはありますか?
最近注目されているエリアとしては、再開発が進んでいる将軍澳(チョンクワンオウ)があげられます。ただし利益がでやすいのは、やはり香港島か九龍の中心地でしょう。新界など郊外の相場は、上がるのは遅く下がるのは早い傾向があります。3094107_m

 

忘れてはいけない「デベロッパー」
Q.ほかに物件購入で気をつけるべき点はありますか?
物件選択の際、デベロッパー(不動産開発業者)がどこの会社であるかも重視する必要があります。優秀なデベロッパーは資材も質のいいものを使っていますし、何かあった時にも安心です。例えば新鴻基地産(サンフンカイ・プロパティーズ)、太古地産(スワイヤ・プロパティーズ)といった大手は安心できるデベロッパーです。また新世界発展(ニューワールド・デベロップメント)もいいでしょう。富裕層向け高級マンションであってもあまり評判のよくないデベロッパーが建てた物件もあるので注意してください。

なるほど!部屋を借りる場合もデベロッパーは調べたほうがよさそうですね。ありがとうございました!

東和不動産有限公司
UNIT 12, 15/F, Wellborne Commercial Centre, 8 Java Rd., North Point
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注目される日本不動産への投資
中国・香港からの実情はいかに?

日本不動産昨今の円安やコロナ禍による著しいインバウンドの低迷、近年の課題でもある中小企業の後継者不足により、用途を失った日本不動産などへの投資が相次いでいる。諸外国との事情も異なり、外国人による不動産購入の制限が少ないのも拍車を掛けている要因だろう。今回は、中国・香港からの日本不動産への投資について、双方のマーケットに精通する「稲川デベロップメント」の役員・Sally Chan氏にお話を伺った。

 

サリー・チャン (Sally Chan) さんProfile - high resolution 日本語のみならず、日本文化をも熟知した「日本人より日本人らしい香港人」。アパレルや飲食業界での経営ノウハウや人脈を生かし、香港と日本を繋ぐ不動産業に従事。

 

Q.まず、貴社の事業概要を教えてください。
中国・香港を中心に台湾、シンガポールなどからの日本不動産への投資仲介を行っております。自社で所有する大阪のホテルの販売と利回りの運用、自社以外のホテル、アパート・マンション、一戸建て、土地の販売も手掛けています。取り扱い物件は大阪が中心ですが、各地区の不動産仲介会社とも提携して大阪以外の物件販売も可能です。

創業(2018年6月)以来、累計でアパート・マンションの販売が50~60部屋、戸建てが10軒強と売上実績も着実に伸ばしており、中には販売価格が200億円を超える案件もあります。

 

Q.Sallyさんの経歴や現在の活動内容を教えてください。
大学も含めて5年の日本への留学経験があり、その後はアパレル業界での会社経営を経て、現在は香港で日本食店を経営しています。稲川デベロップメントは立ち上げから携わっており、市場開拓、マーケティング、投資家らとの協議など、二足の草鞋でCEOをしています。

 

Q.なぜ日本の不動産に興味を持たれたのでしょうか?
数年前から日本の不動産に興味のある友人を手伝うことが多く、日本での留学経験や香港での日本食店経営といったキャリア・適性がちょうどはまった感じです。稲川デベロップメントの事業開始のタイミングで関係者から声を掛けていただきました。

 

Q.中国・香港からの動向はいかがですか?
香港の方は不動産への執着が特に強い人たちです。半面、香港の不動産価格が10年ほど前に高騰したこともあり、若年層にとって香港での不動産購入はとてもハードルが高いです。彼らからすると、家の所有=ステータス、夢、目標でもあり、タイ、マレーシア、シンガポール、日本にも目が向けられています。日本は先進国の中でも物価や生活コストが安い点が注目される要因です。

2019年以降、社会情勢もあり移民が相次いでますが、そういった機運は2015年頃から既に高まっていました。今でこそ香港人の旅行先といったら日本!というイメージが浸透しつつありますが、意外にも訪日ブームの転機は2015年頃と日が浅いです。理由としては「東日本大震災 (2011年) 」による原発事故の影響もあり、以後数年は香港人も日本への渡航に及び腰になっていました。ただ、そこは香港人。切り替えが早いですね。Seminar 3

 

Q.外国人が日本の不動産を購入する際の障壁は?
香港と比較して税金が高く複雑な点です。当社ではそういった部分の事前説明も行い、提携する税理士、行政書士、司法書士にフォローアップを依頼しています。税金面は複雑ですが、諸外国と比較して購入時の制限が少なく、購入物件を永久的に保有できる点は世界でも稀です。ビザもポイントになってきますが、不動産購入との関連性はなく、「高度外国人材」を対象としたポイント制による出入国在留管理上の優遇措置や、「経営・管理」ビザの申請が必要となります。

また、今年4月に導入された「特別高度人材制度(J-Skip)」では、従来のポイント制と異なり、学歴または職歴、年収が一定水準を満たしていれば「特別高度人材」と認められ、現行よりも拡充した優遇措置が受けられるようになりました。

当社では行政書士と司法書士から成るビザサポートチームがあり、不動産購入と合わせて支援をしています。昔と違い外国人への門戸はかなりオープンになっています。

 

Q.不動産を購入して移民された方の反響は?
事前に税金制度や生活環境、文化的背景をしっかり説明しているので、「後悔した」という声は未だに聞きません。万国共通で、遊びに行くのと住むのは別物。「日本はゴミ一つとってもうるさいよ」、「近所の人と挨拶しなきゃだめだよ」、「香港と違ってルーズじゃだめだよ」といった部分からお客様には話をしています。

 

Q.日本の不動産投資の展望や貴社のビジョンを教えてください。
何と言ってもアジア圏で経済的に安定しているのが日本です。香港からの利便性や四季を有する地理的優位性、2025年の日本国際博覧会、2029年の大阪カジノ構想など、土地が高騰する要因が多々あり、外国からの投資はまだまだチャンスが続きます。稲川デベロップメントとしては、香港人の夢である戸建てを日本で実現できるような益々の拡大や、再度需要が伸びそうな民宿の物件確保など、細分化する顧客ニーズにフィットしたサービスに努めたいと思います。

稲川デベロップメント株式会社
26/F., Prosperity Tower,
39 Queen’s Rd. Central, Central
(852)5574-4390
sallychan@inagawa-group.comIN_logo_brown colour

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