牡蠣特集 Part 1

2020/02/19

P18-19 Oyster 728

「牡蠣が大好き」
「牡蠣には目がない」

こんなふうに、牡蠣を愛してやまない人は多い。
非常に多くの人たちを魅了する、牡蠣。
そんな牡蠣の魅力に迫る、本特集。

「海のミルク」と呼ばれ、美味しいだけでなく、栄養価も高い牡蠣。
今まで何となく苦手意識があったという方にも、
きっと大好きになってしまうこと間違いなし!!!

 


 

香港の牡蠣といえばココ!”流浮山”に行こう

牡蠣は香港で「蠔」(ホー)と呼ばれ、牡蠣の養殖は、
香港漁業において約200年前から重要な位置を占めている。
牡蠣の養殖を行う漁師は「蠔民」と呼ばれ、彼らは新界エリアの元朗区西部に生活し、
昔は住民が20人ほどしかいなかったといわれる「流浮山」で牡蠣の養殖技術を確立し、
流浮山に海外でも有名な漁師町、そして海鮮マーケットを築き上げた。

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 流浮山は、1956年に元朗と繋がる高速道路ができたことで、交通の利便性が高められ、人の往来が急激に増加した。そしてこれを機に、牡蠣養殖が盛んな深圳・沙井の漁師たちが流浮山にやってきて、戦後の流浮山の牡蠣養殖業をもう一度活性化させたのだという。牡蠣の養殖量は最盛期に比べるとかなり減ったようだが、現在も海鮮レストランや乾物店などが軒を連ね、週末はとても賑わっている。
 残念ながら、香港と深圳が急速に発展していくにつれて海洋汚染が引き起こされ、大量の牡蠣が死ぬといった事態も起きており、流浮山の牡蠣養殖業は一時期大きなダメージを受けた。また、中国産の牡蠣が香港に進出し始めると、そのあおりを受けて香港の牡蠣業は低迷期に陥った。しかし彼らは香港の牡蠣養殖業界を再び盛り上げるために、現在も香港の浜辺で日々頑張っている。
 今回PPWは流浮山を訪ね、香港の僅かな「蠔民」の一人、陳氏にお話を伺った。

 

IMG_7035Q:流浮山はなぜ有名な香港の牡蠣の産地となったのですか。
A:牡蠣の養殖はかなり昔から行われていました。香港には、西貢や鯉魚門など海鮮で有名な場所が他にもたくさんありますが、それらと比べると流浮山はそれほど外国人観光客に知られていないので穴場かもしれません。でも多くの香港人にとっては、美味しい牡蠣の養殖地として知られています。なぜ牡蠣の養殖で成功したかというと流浮山の地理が関係しています。后海湾にあるので珠江口にも近く、半海水の交差点にあり、牡蠣の養殖には最適なんですよ。

Q:なるほど。それでは香港の牡蠣にはどんな種類がありますか。
A:香港の牡蠣には「赤蠔」と「白蠔」の2種類あって、「白蠔」の方が風味豊かで人気があります。

IMG_7045Q:牡蠣の養殖業はどのように行われるのですか。
A:私たちは今でも伝統的な方法で養殖を行っています。「海底養殖法」という方法で、私たちは5月から6月頃、養殖場に石塊と瓦などを置いて牡蠣を育てるのですが、牡蠣は販売に至るまでに4~5年育てなければなりません。ちなみに、10年以上育てられた牡蠣もあります!

Q:10年はすごいですね。牡蠣はそのまま食べるだけでなく、食材としても人気がありますよね。牡蠣で作る食材を紹介していただけますか?
A:みんなよく知っているのは干し牡蠣(蠔豉)とオイスターソース(蠔油)です。干し牡蠣には「金蠔」という半生のものがあります。

IMG_7043Q:金蠔とオイスターソースについて、詳しく教えていただけますか。
A:「金蠔」は10日間干されて、干し牡蠣より日数が少ないです。「金蠔」を作る牡蠣は必ず5年以上で、季節を見て干さないといけないのです。東風でしたら湿気が重いので、北風が来るは最適な天気。しかしその時期は短くて、金蠔を作るのは簡単なことではないですよ。オイスターソースなら、流浮山でも名物でここにある店ではたくさん売っています。牡蠣の煮干しを作った際の煮汁や、塩ゆでした時の煮汁を濃縮したもので、砂糖やを加えているのも多く、オイスターソースあの甘さを引き出してくれます。日本人に是非おすすめしたいです。ちなみに、流浮山で大きく育てられた牡蠣はおいしそうに見えるかもしれませんが、こちらの牡蠣は加熱用のみです。生で食べることは絶対しないでくださいね。

Q:勉強になりました。また、おすすめの牡蠣料理も教えて下さい。
A:先ほどご説明した「金蠔」はソテーしたら絶品です。あと台湾風の
仔煎(牡蠣のオムレツ)、牡蠣のお粥もあります。これらは小さめの牡蠣で作るといいですね。香港の旧正月によく食べる料理として「髪菜蠔豉」(干し牡蠣)もあります。「發財好市」(財を成す、良い市場)と発音が似ているので、縁起物とされているんです。

Q:牡蠣の養殖業に低迷期があったと聞きましたが、それについて教えていただけますか。
A:低迷の原因は、戦争で養殖場が破壊されたことです。あとは香港だけではなく、深圳地区の近代的な発展が深刻な影響をもたらしました。主に海水の汚染です。工場がたくさん建てられ、汚染物質が海に流されてしまったら、どれだけ牡蠣養殖に悪影響があったかは容易に想像できます。あとは、私たち漁師の引退ですね。でも、牡蠣養殖業がどんどん消えていく、人々にも忘れられていく…、でも悲しいエピソードだと思わないで!(笑) もしこの仕事に興味を持つ人がいたら、是非勉強しに来てほしいです!

 

牡蠣養殖業を続けられるよう、新たな養殖方法の開発へ
 上記の通り、香港の牡蠣養殖業は様々な原因で低迷期となった香港の牡蠣養殖業は様々な原因で低迷したものの、現在は香港政府「漁農自然護理署」と牡蠣養殖業者の組織「后海灣蠔業養殖協會」が協力し、若手の「蠔民」とともに、持続可能な養殖法を模索している。過去50年、汚染と気候の変化は香港の牡蠣の大敵であった。また流浮山には、牡蠣養殖を行っている家は現在60軒しかなく、「蠔民」たちが引退や転職してしまうにつれて、その人数はさらに減っていくだろうという推測もある。
 香港の牡蠣養殖業を保存しなければいけない理由のひとつとしてあげられるのが、流浮山の牡蠣が香港の原生物種であるという点だ。しかし香港の牡蠣は世界にその名が知られているわけでもなく、香港人でさえ香港の牡蠣に対して「水質も汚染もひどい」「重金属がすごそう」というイメージをもっているため、そのネガティブな印象を少しずつ変えていきたいというのも彼らの願いだ。
 現在研究されている革新な養殖法は、牡蠣を入れるための循環する海水のプールを作り、その海水は紫外線で殺菌する。そしてその殺菌された海水に牡蠣を一定時間入れることで、殻についた雑菌や体内に含まれている汚物などを排出させるというものだ。また気候変化は海水の温度を不安定にするため、特設した採苗連(牡蠣の苗床)と干潟の様子を常に観察し、牡蠣の生育中に起こる不安定な状態の調整を可能にしたいと考えている。

 

 香港の「蠔民」は様々な困難を乗り越え、「香港の牡蠣」を守ってきた。養殖業を保全するために、現在協会は政府と積極的にやりとりをしている。「昔は后海灣、由沙橋、流浮山、上白泥、下白泥まで,海岸線は牡蠣の養殖場でした。私たちは安心して食べられる高品質の牡蠣を育てたいと考えていますが、同時に香港の原種の牡蠣を守りたいとも考えています。香港には海岸線がたくさんありますが、牡蠣を育てられるのはこの辺りだけ。私たちはそれを大切にしていきたいと思っています。」陳氏はそう述べた。

 

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IMG_7054[番外編]一度訪れたい!流浮山へのアクセス&見どころ

 流浮山へはMTR西鐵線「天水圍」(ティンソイワイ)駅からが便利!B出口を出て、階段下にあるバス停から「K65」のバスに乗り、約10分で「流浮山」に到着。新鮮な魚貝類のレストランや、魚の卸店、干物店などがひしめいている。オイスターソースと干し牡蠣はもちろんお土産の定番だが、香港の懐かしい伝統的なお菓子なども幅広い種類が揃っている。足を伸ばして香港の郊外ののどかな雰囲気を味わいながら、おいしい海鮮料理とショッピングを楽しんでみては?

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