牡蠣特集　Part 5

2020/02/19

カキが美味しい季節です。栄養豊富で海のミルクとも呼ばれるカキですが、その豊富な栄養は牛乳の比ではありません。ヒトが必要とする栄養素をほとんど含むとまで言われるカキは「完全栄養食品」あるいは「天然のサプリメント」とも形容されるほど。これはカキの成分に注目して数多くの健康補助食品が製造販売されていることからもわかります。普段偏食がちな人にとっては、カキを食べて栄養のバランスをある程度改善させることも期待できます。また、その割にはカロリーが低く、肥満を気にしている人には強い味方になってくれるのかもしれません。そんなカキの健康へのメリットを、その具体的な栄養成分から見てみましょう。

タウリン
　コレステロールや中性脂肪を下げるほか血圧も安定化させる働きがあるタウリンが、カキには豊富に含まれています。ヌメっとした感触、ニュルッとした食感が苦手だという人もカキが嫌いな人には多いのではないでしょうか？実はこのカキ独特の滑りの成分にもタウリンが多く含まれます。循環器系にとって、とても良い働きをしてくれるのがタウリンです。

グリコーゲン
　糖質はブドウ糖、果糖、乳糖として吸収され、肝臓や筋肉組織にグリコーゲンとして蓄えられてエネルギーを生み出す出番を待ちます。カキにたっぷりと含まれるグリコーゲンはエネルギーとしてとても利用されやすいものです。これに関連して血糖値の安定化に働き、さらに疲労回復に役立つものでもあります。ちなみに昔「一粒300ｍ」と宣伝されていたお菓子を製造しているメーカーの名前は「グリコーゲン」がその由来だそうです。

亜鉛
　最近増えていると言われる味覚異常。亜鉛が不足すると味覚が分からなくなりますが、これはカキを食べることで簡単に改善できます。亜鉛は普段なじみがない必須ミネラルですが、体内で働く多くの酵素類は亜鉛がなくては機能できません。さらに免疫力を維持するためにも必要となるものです。ちなみに生カキの亜鉛含有量は非常に多く、100gで1日に必要とされる量を摂取することができます。

鉄、ビタミンB12、葉酸
　造血に必要なミネラルやビタミン類が豊富に含まれることもカキの特徴です。貧血の予防には十分な鉄分の摂取が必要ですが、カキに含まれる鉄は体内に吸収されやすい形になっており、さらにビタミンB12や葉酸と合わせて、カキは貧血の予防にとても有効な食品です。

必須アミノ酸
　ヒトの身体の20％はアミノ酸から合成される10万種類にもおよぶたんぱく質で構成されているのです。驚くことにすべてのたんぱく質はたった20種類のアミノ酸によって合成されます。このうち必須アミノ酸と呼ばれる9種類のアミノ酸はヒトの体内で合成することができないので、すべて食物から摂取しなければいけません。カキは必須アミノ酸はもちろんのこと、すべてのアミノ酸を含む珍しい食品です。

生食用と加熱用の違い
　栄養豊富で美味しいカキですが、少しだけリスクもあります。カキは呼吸するために海水を大量に吸入します。その際に海中のノロウイルスやA型肝炎ウイルスといった微生物も一緒に取り込んでしまうのです。これらのウイルスがカキの体内で増殖することはありませんが、排泄されるスピードは遅く、取り込まれたウイルスはその体内で蓄積、濃縮されることになります。生カキを食べた人が感染する可能性があるのはそのためです。
　ところで日本のカキは生食用と加熱用に分けられています。これは養殖されている海域の水質（大腸菌数）によって決められているだけで、鮮度とは一切関係ありません。日本の生食用カキは無菌槽に一定時間おいてから出荷されるため、万一カキがウイルスを持っていたとしてもそこで排泄されてしまうので、安全性がより高くなっています。その一方、無菌槽で絶食状態におかれてしまう分、痩せて味が落ちるとも言われますが、安心して食べるためには仕方がないのかもしれません。カキフライや鍋にするのであれば、もちろん無菌処理がされていない加熱用のカキを使ったほうが良いですね。

カキ殻の利用
　カキを加工する際に発生する大量のカキ殻。この「廃棄物」はカルシウム（炭酸カルシウム）の塊です。カキ殻は漢方薬としても利用されています。制酸作用があることから胸焼けを抑えたり、カルシウム不足を補えるので精神状態の安定化や骨減少を抑えたりすることも期待できるのです。また工業的用途としてオイル吸着剤、塗料、農業園芸用石灰、家畜飼料に利用されたりしており、一部は化粧品にも使われるなど、まさに捨てるところなしのカキといえましょう。

　カキが栄養学的に優れた食品であるだけではなく、意外にも利用価値の大きなものであることをご理解いただけたかと思いますが、そんな小難しいことを考えることはありません。「美味しいカキを、美味しくいただく」これだけで良いのです。さて、今晩は旨いカキを肴に一杯やりますか?

メディポート代表：堀眞
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