大館特集 Part 4
05 元中央裁判士署
中央裁判士署は建築群の重要な建築物のひとつで、1840年に落成。2回の改築後、1914年に現存の中央裁判士署が建てられた。立派な石柱、花崗岩で作られた擁壁、司法を象徵し、厳かな雰囲気をも漂わせる。一番古い2つの法廷の被告席は地下にある拘置所と階段で繋がっている。裁判士署は、警察署、そして刑務所と一体化され、19世紀中期以降、香港の司法組織の発展を描いた。
06 警察総部ビル
中区警察署建築群の中でも最も凛々しい建築が警察総部ビルであり、1919年に落成。最も人々に認知されてている建築で、その外観は多種多様な建築スタイルを取り入れている。北方面の外側がヴィンテージ的スタイルで、南方面外側のデザインはよりシンプルで古典的。ビルは寮、オフィス、ジムとして使われた。ジムは二階建てで屋根裏のスペースはコントロール室として用いられた。
07 警察総部ビル階段の柵
「大館」のプロジェクトでは、「ヴェネツィア憲章」(国際史跡保護と修復憲章)、「ブーラ憲章」(オーストラリア史跡理事会重要文化財憲章)、「中国文物史跡保護準則」などを参考にし、さらに「古物古蹟辦事処」(古蹟辦)の規則に従い、建築群の歴史意義と原型を保った。この階段の柵は、現在に至っても「古物古蹟辦事処」に歴史的な価値が認められており、復元作業では4つの柵が1組で、安全性を保ちつつ工事がなされた。
08 刑務所の壁
ビクトリア刑務所の壁本来の高さはそこまで高くなかったが、囚人の脱獄を防ぐため、壁は益々と高く建てられた。時代により施工の仕方や煉瓦材料も異なっており、「大館」では、高さは10メートルの壁が観客を魅了する。
09 螺旋階段
「賽馬會芸方」には、美術館のシンボルである螺旋階段が個性溢れるギャラリーを形成している。それらもジャック・ヘルツォーク氏とピエール・ド・ムーロン氏の入念に作られた作品である。手作りでの型枠の組み立て、コンクリート造りの階段は、香港の大工職人の技術の高さを表している。コンクリートの表面は時間の流れを表現するのに相応しいヴィンテージ加工がなされ、新旧建築を融合した大館を誇示している。
10 刑務所内の監獄
ビクトリア刑務所は1840年頃に落成し、現存最古の監獄は1862年に建てられた。しかし第二次世界大戦によって、ビルの一部は爆破された。監獄はA~Fの6つに分かれており、その中でも1910年頃からあったB倉は、歴史展示室に活用された。室内には当時同様、エアコンは配置されていない。さらに香港で唯一の水洗便所が付いていない監獄だという。一般的に部屋には3名の囚人が収容され、シングルベッドと二段ベッドが一つずつあり、汚物用のバケツ2つのみが置いてある。狭い部屋では、プロジェクションマッピングで囚人の生活模様を再現し、観るものにリアルな感覚を伝えている。
11 A倉
1928年に建てられたA倉のデザインは、実用性が強調されている。革命家のホー・チ・ミンが1930年頃、香港でベトナム共産党を創設する際に逮捕され、ビクトリア刑務所に2度収容された。彼の日記には、毎日刑務所内で運動をしていても周りは壁に囲まれ、見上げると空が少しだけ見えた。といった記載があり、彼が言及した場所がまさに大館のA倉とB倉の間にある狹い空間である。
12 広場にあるマンゴーの樹
最後に「大館」には一つの伝説があり、広場にあるマンゴーの樹が豊かな果実を実らせると、多くの人が昇進できる。または大不運の前兆という一説もあり、それ以来、伝説が広まり、各世代の警察署員の中でも想い出として生き続けている。プロジェクトが始まった際、警察側はたとえどんな工事があっても、その樹が健康で生き生きとした姿を保つことが重要だと強調した。今では大館の待ち合わせ場所にもなっている。
十数年の復修作業を経て、閉ざされていた「大館」の扉が再び開かれ、活力あふれる芸術と文化施設に生まれ変わった。史跡活用の良い一例と言われる「大館」は修復過程で原型の建築模様と意志を尊重し、貴重な歴史建築と新しい建築の共存、その活用を通じて文化発展にも貢献したことが挙げられる。大館を訪れる人々が内部を隅々まで探索し、香港の時代の変化を感じらえるトリップになるだろう。
Tai Kwun
住所:10 Hollywood Rd., Central
時間:10:00~23:00(要予約)
入場料:無料
ウェブ:www.taikwun.hk