尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.48

2021/07/14

仲裁判断が最終的な判断となる労働紛争

 

⑴仲裁判断が最終的な判断となる労働紛争

 労働争議調解仲裁法第47条によれば、次に掲げる労働紛争については、同法に別段の定めがある場合を除き、仲裁判断を最終的な判断とし、当該仲裁判断はこれが下された日から法律上の効力を生じるとされます。

①労働報酬、労災医療費、経済補償金または賠償金を請求するもので、現地の月額最低賃金基準の12か月分の金額を超えない紛争
②国の労働基準の執行により、労働時間、休息休暇、社会保険等の分野において生じた紛争

 労働報酬、労働災害医療費、経済補償金または賠償金の請求事件において、係る請求が数項目に及び、各項の請求金額がいずれも使用者所在地の月額最低賃金基準の12か月分の金額を超えない場合、労働紛争仲裁委員会による仲裁判断を最終的な判断として処理しなければなりません。

 なお、労働紛争仲裁委員会による同一の仲裁判断において、仲裁判断が最終的な判断となる労働紛争とそうでない労働紛争の両方について判断を下し、当事者が当該仲裁判断を不服として人民法院に訴訟を提起した場合、人民法院は「仲裁判断が下された日から法的効力を生じない仲裁判断」(中国語:非終局裁決)として処理しなければならないとされます。

 

⑵最終的な判断となる仲裁判断を不服とする場合

 労働者が、上記の労働争議調解仲裁法第47条により最終的な判断となる仲裁判断を不服とする場合は、仲裁判断書を受領した日から15日以内に、人民法院に訴訟を提起することができます(労働争議調解仲裁法第48条)。

 使用者は、上記の労働争議調解仲裁法第47条により最終的な判断となる仲裁判断が次の各号に掲げる事由のいずれかに該当することを証明する証拠がある場合は、仲裁判断書を受領した日から30日以内に、労働紛争仲裁委員会の所地の中級人民法院に当該仲裁判断の取消しを申し立てることができます(同法第49条第1項)

②労働紛争仲裁委員会が管轄権を有さない場合③法定の手続に違反した場合
④仲裁判断の根拠とされた証拠が偽造されたものである場合
⑤相手方当事者が公正な判断に十分に影響を及ぼす証拠を隠蔽した場合
⑥仲裁人に当該事件の仲裁に際して賄賂の要求もしくは収賄行為、自己の利益を図る不正行為または法を曲げて仲裁判断を下す行為があった場合

 上記の規定により、最終的な判断となる仲裁判断を不服とし、労働者が基層人民法院に訴訟を提起し、使用者も労働紛争仲裁委員会の所在地の中級人民法院に仲裁判断の取消しを申し立てた場合、中級人民法院は使用者による申立を受理してはならず、既に受理した場合は使用者による申立を却下する裁定を下さなければなりません。

  労働者による提訴が人民法院によって却下された場合、または労働者自ら提訴を取り下げた場合、使用者は裁定書を受領した日から30日以内に、労働紛争仲裁委員会の所在地の中級人民法院に仲裁判断の取消しを申し立てることができます。ただし、使用者に、上記の労働争議調解仲裁法第49条第1項に定める仲裁判断の取消事由に該当することを証明する証拠がある場合に限ります。

 


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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