Key Woman 旬鮮海宝香港店社長の久和恵子さんにインタビュー
「会社員」から「社長」へ!
持ち前の起業家精神と粘り強さで、香港に美味しい和食を届ける!
会社員生活に終止符を打ち、ここ香港で、飲食店の社長として新たなキャリアをスタートした久和さん。未経験の業界に飛び込み、手探りでかたちにしてきたという、その経緯についてお話を伺った。
久和恵子さん
香港人のご主人との出会いにより、2007年より香港での生活をスタート。2017年にOL生活に終止符を打ち、愛知県東海市に本店を持つ海鮮料理専門店「旬鮮海宝」の2号店である香港店の社長を務めることとなり、現在に至る。
日本ではどのようなお仕事をされていましたか?
約3年間、JALの国際線グランドスタッフとして中部国際空港で働いていました。不規則な生活でしたが、1便1便に全力投球し続ける活気に満ちた職場で、心から楽しんで働いていました。
大学時代に米国で出会った香港人の彼と暮らすため(2009年に結婚)、米国での就職も考えたのですが、この仕事が好きでしたし、彼がいずれ香港に戻る可能性が高いこともあり、そのタイミングまでは日本で働くことにしました。
香港にいらしたきっかけを教えてください。
彼が香港に戻ったのが2007年。「生活基盤が整うまでは待って欲しい」と言われましたが、ちょうどJAL香港支店でスタッフ募集の話があり、「これはチャンスだ」と思い、強引に引っ越してきました(笑)周囲の心配をよそに、未知の世界に飛び込むのが楽しみでしたね。
香港の生活はいかがですか?
慣れるまでに3年はかかりました。当時は、今のように日本のものが簡単に手に入らなかったので、そこでも苦労しました。なので、一時帰国のときは買い物の嵐!家族からは「爆買い」と恐れられました(笑)一番大変だったのは、香港生活のスタートと同時に、彼と彼のお兄さんと3人暮らしを始めたこと。当時、私とお兄さんは反りが合わず、毎日のようにケンカをしていました。今では仲良くしていますけどね(笑)現在は、香港のとにかくエネルギーに満ち溢れていて、出る杭はどこまでも出ていけみたいな自由さが好きです。
どのような流れで、現在のお店を立ち上げることになったのでしょうか?
実の兄が経営している、愛知県東海市の海鮮料理専門店「旬鮮海宝」の2号店をどこでオープンするか模索している中、「どうせ挑戦するならば海外で!」という話になり、私の住む香港でオープンすることになりました。周囲からはいろいろと言われましたが、少しも迷いはありませんでした。
家族や親戚が自営をしている人ばかりなので、以前から「私もいつか起業したい」という、漠然とした思いはありました。何より、若い頃に友人を病気や事故で亡くして以来、「人生は一度きり」と痛感しており、「思いっきり謳歌したい!」といつもエネルギーが有り余っている状態だったので、早く何かに打ち込みたかったんです。
副業的にチャレンジしていたときもあります。ただ、起業までは至らず、どうしたものかと思っていたので、兄から香港店の構想を聞いたときは、「来るべくした来た!」と思い、すぐに行動に移せました。
立ち上げまでに大変だったことはありましたか?
とにかく何もかもが大変で、ハプニングの連続でしたね(笑)実は、雇われ店長として関わると思っていたので、かなり悠長に構えていました。が、蓋を開けてみると、香港店の経営は全て私に一任!香港における社長を務めることになったんです!これまで会社員の経験しかなく、飲食業界の経験はアルバイト程度だったため、何もかもが手探り状態でした。食器を何枚用意したらいいかもわかりませんでしたから。ただ、コストを抑えたかったこともあり、コンサルタントに頼ることなく、全て自分たちだけで進めました。
業者や行政の方々との意思疎通が一番大変でしたね。言葉の壁はもちろん、契約書の解釈の違いなんかもたくさんあり、驚かされることもしばしば。特に、ライセンス取得に至る過程は、ここには書ききれないほどの苦難がありました。プロだからと全てを鵜呑みにするのではなく、違和感を察知する力と、それを見過ごさず検証する力が、物事をスムーズに進める鍵となります。だからこそ、一度信頼を得るととても固い絆になることも知りました。
現在はいかがでしょうか?やりがいを感じる瞬間などがあれば教えてください。
やりがいを感じるのは、シンプルに、お客様が笑顔で帰ってくださったとき、リピートしてくださったときですね!嬉しさが込み上げてきます!
香港に「海宝」がオープンして、丸1年が経ちました。開店当初から通ってくださる常連さんも多く、他店にはない、「海宝」に求められているものを形にできるようになってきたと思います。最初は、1日にご来店くださるお客様が1桁という日が続き、無我夢中でチラシ配りに繰り出す日々でした。今は、お客様の方からいらしてくださり、心から感謝の気持ちでいっぱいです。
普段、どのようにリフレッシュしていますか?
主人と一緒に青空の下でビールを飲むのが至福のときです。お互い経営者なので、同じ悩みを抱えていることも多く、相談し合ったりしています。あとは、漫画が大好きなので、ネットであらゆるジャンルの漫画を流し読みしたりしてます。
今後の目標をお聞かせください。
メニューに載せている目標を真摯に貫いていくことです!至近の目標に関しては、季節ごとのメニューを作ること。現在も仕入れ状況により毎日メニューをアップデートしていますが、今後は、旬のものだけをピックアップしたページを設けて、お客様に日本の季節の移り変わりを感じていただき、メニュー選びを楽しいひと時にしていただきたいです。
香港で仕事をすることについて。
香港には、「出社後に朝ごはんを食べる」「15分以内は遅刻と見なされない」等の暗黙のビジネスルールが存在します。いわゆる勤務態度の良し悪しよりも、結果主義の人が多く、これは文化の違いとして黙認しないといけないと思いました(笑)
また、仕事の役割分担もハッキリしてます。役割を明確に理解させることで、各自の領域は完璧にこなそうと努力しますが、それ以外は、ちょっとした頼みごとであっても、不満の元になり、プライドを傷つけかねません。それを前提として知っているかどうかで、社内での接し方、社員教育の仕方は違ってきます。
そして、社長には社長の役割があるということを実感しました。今になって、前職で行なわれたコーチングやマネジメント講座が役に立っています。当時は、私には無縁だと思ってましたが、こうして活かされるときが来て、人生は本当におもしろいと感じました。
最後に一言どうぞ!
そろそろ春のお酒が入ってきます。「海宝」は、日本酒をグラス提供している、珍しいお店です。いろんなお酒を飲み比べていただけますよ!また、「桜海老のかき揚げ」や「ホタルイカの酢味噌和え」等の、春メニューも登場します。ぜひ美味しい日本酒とともに、日本人料理長が作り出す、美味しい食事を召し上がりにいらしてください!
料理長・鬼淵さんに伺った!
ずばり、久和さんはどんな方?いつも明るく、着物+割烹着姿がよく似合う女将です。広東語もペラペラで、香港人からも絶大な支持を得ています。お客様に提供する大事な食事を、よりよいものにしてくれるのが恵子さん!そんな女将の割烹着姿を見に来ていただけたら嬉しいです(笑)
旬鮮 海宝
住所:8/F., Circle Plaza, 499 Hennessy Rd., CWB
電話:(852)2788-0522
時間:火~土 18:30~LO 24:30、日 18:30~LO 23:30、月休
フェイスブック:旬鮮 海宝 ‒ 香港店