「デザインとマーケティングと香港の話をします」第三回:20年で変わった香港、でも最良の時はこれからだ

2018/01/29

■香港@1997年
7月1日。僕は尖沙阻フェリーターミナルの近くで香港の返還を迎えました。その瞬間。笑顔、涙、ハグ。歓喜と放心。警備にあたっていた警官が一斉にピンバッジを付け替えていたのをよく覚えています。

その頃の香港マーケット。何かを買おうとすれば、高くて贅沢なものか、そうでなければ安くて残念なもの(あるいは偽物)のどちらかしかない。美味しいコーヒーを見つけるのは至難の業で、本も音楽も品揃えが貧弱、ファッションは欲しいものが無い。一時帰国の度に沢山の荷物。日本料理はまだ市民権を得ておらず、一流ホテルにある高級料亭でなければ日式(なんちゃって日本料理=念の為)というオプション。上と下はあるけれど真ん中が充実していない。これが当時の香港です。

■香港ナウ&ゼン
当時、男の子も女の子もファッションや自分磨きには何の興味もなく、みんな少し粗末な格好をしている印象(失礼)。人生の価値観は「お金」「家族」「マンション」が重要事項。趣味などでライフスタイルを充実させる意識は無かったと思います。

では2018年。現在の香港には何でもあると思いますか?僕の答え。“ものすごく幅が広がってきたんじゃないでしょうか”です。いくつかの例を挙げてみますね。(*年代は実感です)

【コーヒー】
1.日本のカフェ文化をフォローしたお店が出てくる。(2000~2003年)
2.スターバックスが出店し、香港各地に支店を出店。(2005年~)
3.バリスタもいて、フードもスイーツも本格的なサードウェイブの店が増殖中。(2012年頃~)
【日本料理】
1.魚や一丁、和民といった大手の居酒屋が進出した事で(2000~2003年頃)、誰もがカジュアルな感覚で日本料理を楽しめるようになる。
2.一蘭や一風堂に始まるラーメン店の快進撃は塩辛いものが苦手だった香港人がいなくなってしまうほどで、今や定番のグルメになります。(2007年位~)
3.日本通の香港人が自分で店を持つように。香港人だけの厨房のお店でも全く遜色のない味を楽しめるようになりました。

【ファッション】
1.ユニクロやH&Mといったファストファッションの広がり。(2007年頃~)
2.ただ安価におしゃれなものをというだけではなく、一気に同時代性が進んでいます。ヘアスタイリングやメイクとも相まって着こなしも良くなってきています。

■ライフスタイル
そして、物質的なことだけではなく特筆すべきはライフスタイルの広がりです。より多くの人たちが自分を主張したり、スポーツ、音楽といった趣味に時間やお金をかけるようになってきました。今や毎週末、香港のどこかでランニングイベントがあります。こうした変化の背景には、
1.繁栄したことによって、生活に余裕が出てきた。
2.ネットのおかげでグローバルな価値観をすぐに知ることができる。
3.外の環境に触れる機会が多くなったことでベンチマークできるようになった。
4.香港人意識の高まり。

1

ということがあるはずです。僕たち日本人にとってと刺激的な空間や、イベントが増えてきました。今後の進化が楽しみですね!

■香港、最良の時はこれからだ
香港のライフスタイルが多様化している理由を、少しだけペシミスティックに見てみます。(全て仮説です)
1.家が高すぎて買えない。それなら、無理に抑制しないでも好きなことをしたいという気持ちが出てきた。
2.雨傘革命で高まった香港人意識がある種の挫折のステージにあること。経済的にも政治的にもどこよりも早く大陸に巻き取られていく悲哀。現在の一国両制はあと30年で無効になる。そんな事を相関関係としてあると理解しています。

一方で、香港はアジアの国際都市であり、世界で一番ビジネスをしやすい場所でもあります。金融、海運、不動産、貿易、教育。多くの分野に利があります。その意味で“The Best Is Yet To Come(最良の時はこれからだ)”というのがキャリー・ラム行政長官のスローガンです。香港に暮らすという縁をいただいた者として、変化、進歩、多様化を楽しみつつ、貢献をしていきたいところです。(続く)

 

5

 

植木 伸彦氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

植木 伸彦氏
1995年、黎明期の上海で日系企業のマーケティング立ち上げを手伝う。1998年にTYA(HK)LTD設立。戦略クリエイティブを核に大手家電、化粧品、食品会社などのブランディング、プロモーション、コミュニケーションプランに携わる。

TYA-Logo-Blue

 

 

 

 

 

住所:Suite 1801, 18/F., Chinachemen Leighton Plaza,29 Leighton Road, Causeway Bay
電話:(852)2810-7023
WEBサイト:www.tya.com.hk
フェイスブック:tyahongkong
インスタグラム:tya_hongkong
ご質問、ご相談や勉強会のお誘いは
フェイスブックueki.nobuhiko
またはEメールueki@tya.com.hkまで

Pocket
LINEで送る